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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第三幕 スラム調査編

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第27話 ミスと匂い

「レイヴン様!」


 その犬の魔物を見た時、リーネは思わず室内にいるレイヴンを呼び寄せた。

 こうして、リーネが大きな声を出すことなど滅多にない。

 その事実にリーネは自分でも驚きを隠せない。


(そうか、私は混乱しているんですね)


 自己分析をして、冷静になろうとしても、誤魔化せない。

 心臓の鼓動が早くなり、手に汗をかいているのがわかった。


「どうかした……この子は!」


 そうしているうちに、レイヴンが走って教会の中から出てきた。

 滅多にないリーネからの呼び寄せに、レイヴンも驚いている様子だったが、犬の魔物を見てすぐに状況を理解したようだった。

 駆け寄って犬の魔物の前にしゃがみ込む。


「酷い怪我だ……他の魔物にやられたのかもしれない」


 レイヴンが犬の魔物の状態を確認して、顔を歪めた。


「リーネ嬢! 治療は!」


「……!」


 レイヴンの呼びかけに、即座にリーネも反応して、犬の魔物に手を伸ばした。

 リーネの死神の力は、生きている限り、回復させることができる。


 しかし、


「これは……」


「リーネ嬢……?」


 リーネが思わず顔を歪め、犬の魔物から手を引いた。そのことを不思議に思ったのか、レイヴンが声をかけてきた。


「……ちょうど今、この子の命が尽きました」


「なっ!?」


 レイヴンが即座に犬の魔物の体に手を伸ばし、揺すったり、目を開けたりしたが、反応はいっさい返ってこない。


(迂闊でした……すぐに治療していれば……)


 自分の失態にリーネは自分の手を見つめて呆然としてしまった。

 心臓の鼓動がますます早くなっていく。冷静な判断ができない。

 思い浮かぶのは、アリアの心配。そのために、今、自分は何をすればいいのか。


(今、私にできることは……)


 リーネは考えた、冷静ではない頭で。そしてできることを一つだけ思いついた。


「レイヴン様、この子を……魂石にしましょう」


「……そうか、魂石にすれば、この子の感情が伝わってきて、アリア嬢の場所がわかるかもしれない」


「ええ、十中八九、アリアと子どもたちは何者かに連れ去られたのでしょう」


「ああ、そして、この子はそこから抜け出してきた」


 リーネとレイヴンは同じ結論に達していた。


「きっとアリアはこの子に自分の場所に案内させたかったのでしょう」


 しかし、誤算があった。


「他の魔物にやられたんだろうね……ここまで戻ってこれただけでも奇跡的だよ」


「忠誠心の高い、犬ならではですね」


 リーネは犬の魔物の体を見つめながら、呟いた。


「ああ、でも……大丈夫かい? この子を魂石にするとその身体は消えてなくなる」


「……子どもたちに恨まれそうですね」


 リーネは苦笑した。

 本音を言えば、リーネだってやりたくない。

 もう一匹の犬の子どもを埋葬している子ども達の姿がどうしても頭をよぎる。


(それでも、それをやるのが私でしょう。変な感情に左右されずに私らしくやるべきです)


 リーネは首を振って、リーネは犬の魔物に手を伸ばし、その身体を撫でた。


(まだ温かい……ご苦労様……)


 リーネは目をつぶり、心の中で犬に語りかけ、覚悟を決めて目を開いた。


「あなたに……死神の……」


 祝福を与えようとした、その時だった。


「リーネ嬢、ちょっと待ってくれ、何か……匂わないか?」


「……えっ?」


 レイヴンの言葉に、リーネは顔を上げて、鼻を吸ってみた。


(確かに……何か……匂いが……この匂いに覚えが……)


 もう一度、深く鼻を吸い込んでみる。

 その瞬間だった、リーネの頭に記憶がフラッシュバックした。


「この香り……アリアの香水ですね」


 一緒に王都で買い物に行った時に、アリアにプレゼントしたあの香水の匂いだった。

 はっと気がついたリーネは、犬の魔物の身体の匂いをすんすんと嗅ぐ。


「獣の匂い……でも、それ以上に強い香水の匂いがします」


 偶然につけられた香水の匂いではない。明らかに、意図的に多量の香水が犬の魔物の身体に付けられている。

 それはなぜか……


「そうか……アリアが助けを求めているんですね……」


 これはリーネに向けたアリアからのメッセージだ。



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