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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第一幕 呪いの旧校舎

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第7話 ギルドと穢

「ご協力の快諾、誠にありがとうございます」


 リーネの前で頭を下げる好々爺。彼はこのタンブルウッド王国の死神ギルドのギルドマスターであるエグバート・ハインリッヒだった。


 長年この国の死神ギルドを率いてきた彼は、死神ギルドの中でも特に高い権力を持つ人物である。

 そんな彼であっても、リーネの前では頭を下げる。それだけ死神の存在は特別なのだ。


「いえ、死神として当然ですので」


 リーネはにっこり笑ってそう答えた。先程までのレイヴンとのやり取りはかけらも見せないほど清々しい笑みだ。

 きっと、リーネの後ろに立っているレイヴンは苦笑いをしていることだろう。


「しっかりしたお嬢さんで安心いたしました」


 そしてその笑みにまんまと騙されたであろうエグバートが微笑みながら顔を上げた。


「いえいえ、とはいえ私もまだ学生の身ですので常駐などはできません」


「そうですな。学生は勉強が第一ですから、無理はなさらないでください」


「はい。とはいえ、できるかぎり協力はさせていただきますので、なにかありましたらレイヴン様にお声がけいただければと思います」


「そうですな。レイヴンは貴方様の先輩と聞いております。彼ならばきっと貴方様の力になってくれるでしょう」


 目を向けられたレイヴンは一瞬で苦いような顔を引っ込めて、真剣な表情でエグバートに頷く。


「はい。お任せください。リーネ嬢は私が騎士として全力でサポートさせていただきます」


 誰もが思う頼もしい姿。しかし、リーネは内心では面白さが込み上げていた。


(そう、私が依頼を受けるかどうかはレイヴン様次第なんですからね。せいぜい期待に応えてくださいよ、レイヴン様)


 レイヴンはギルドからの依頼をリーネに伝えることが役目となる。それはつまり説得役でもあるのだ。

 さて、今後のレイヴンがどうやって自分を説得するのか、リーネはそれが楽しみだった。



 ギルドマスターの挨拶のあと、リーネはレイヴンを連れてノエラの元へと訪れた。

 幸いにもリーネたちが訪れてからすぐに目が覚めたノエラに端的に状況を説明することにした。


「というわけで、私は死神になったから」


「ぬぁんですってぇええええええ!」


 あまりにも端的すぎたリーネの説明に驚いたらしいノエラの声は、ギルドを通り越して街中へと響き渡った。



「なるほど、そういうことでしたのね!」


 さらに詳しい状況を説明されたノエラは、最初は戸惑っていた様子だったけれど、話が進むに連れて目がキラキラと輝き始めた。


「リーネ様が死神に! 凄くめでたいですわね!」


 そして最後には、自分のことのように嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


「めでたい……んですかね? 正直、私自身は実感が湧かないというか……」


 一般的に死神就任はめでたいのか? リーネは首を傾げた。


「もちろん! 死神は神の代理人ですから! それはつまりとっても光栄なことですわ!」


 地上に降りてこられない神の代わりにその仕事を代行する、それが死神の役割だ。


「とはいっても、正直、死神の仕事とかよくわかっていないんですよね。一応死者を天に導くっていう曖昧な理解はあるんですけど」


 死神としての力を得たときに、そういう情報ややりかたは自然と理解できた。


「そうですわ! 死神が死者を天に導かないと地上は穢が満ちて大変なことになってしまいますのよ!」


 穢。それについてもリーネはなんとなく理解をしている。

 穢とは人の身体から発生すると呼ばれる負のエネルギーであり、それが近くにあるだけで良くないことが起きるとされている。

 もっとも死神になった時に、そういうものであるという知識が自然と入ってきただけであるが。


「そうなれば世界は滅びてしまいますわ! ですから死神の仕事というのはとても重要なのですのよ!」


 随分と力説するノエラ。それを聞いて、リーネの後ろに控えていたレイヴンが拍手をした。


「素晴らしい理解です。ノエラさん。さすが学園きっての才女ですね」


「ありがとうございます! ってレイヴン様!? なぜここに!?」


 突然声をかけられたノエラは今更レイヴンに気がついたようだ。


「なぜって……さっきも説明したようにレイヴン様が私たちを見つけて運んでくれたからですよ」


「そんなの……聞いた……気がしますわ!」


 どうやら、それよりもリーネが死神になったことの方が衝撃的だったようだ。


「改めて言っておくと、これから私が死神として活動するにあたって、レイヴン様がギルドとの仲介役をしてくれることになったのです」


「まあ、それは心強いですわね! レイヴン様が騎士としてついてくださるのであれば、私も安心ですわ!」


「……騎士?」


 ノエラの言葉にリーネは首をかしげた。


(そういえば、さっきもそんなことを言っていた気がしますね)


「死神には護衛騎士がつくことになっているのです。レイヴン様がそれになったということですわよね?」


「あー、なるほど……」


 リーネはちらりとレイヴンを見る。


(ふむ、外見だけ考えればそれらしくはある。中身はまあ若干怪しそうですが)


 レイヴンは少し困ったような表情を浮かべていた。


「うん、まあ、対外的にはそういうことでいいでしょう。どうせやることはそう変わらないでしょうし」


 実際には下僕であるが、騎士も下僕も似たようなものだとリーネとしては納得した。


「今後はそう名乗ることにするよ……」


 レイヴンは半分あきらめたように呟いた。どうやら彼も自分自身の立場を理解しているようだ。


(この人をそばに控えさせている様子を見たら、この人のファンは一体どういう反応をするのでしょうね)


 簡単に想像できる阿鼻叫喚を思い浮かべて、リーネはワクワクを隠せなかった。



「そういえば、レイヴン様はなぜあそこにいたのですか?」


 そうして3人でしばらく会話していたときに、ノエラがふと思い出したように尋ねた。


「え? ああ、僕は……そっか別にもう秘密にしなくてもいいのか」


 レイヴンは少し考え込んだ後、素直に答えた。


「実は死神ギルドの仕事で、あのあたりに未発見の遺体があるかもしれないということで調査をしていたんだよ」


「未発見の遺体?」


 その言葉にリーネとノエラは顔を見合わせた。


「うん、多分二人はもう知っていると思うけれど、学内で噂になっている意識不明事件の原因が穢である可能性をギルドは考えていてね」


「なるほど! 確かに! 言われてみれば状況としてはしっくりきますわね!」


 生物に害をもたらすと言われる穢。確かに人を混沌させるくらいは十分だろう。


「そういうわけで、意識不明者が出たあたりを調査していたんだ。君たちも……同じだよね?」


「ええ、私としても噂が気になりまして、調査をしていたのですわ。もっとも私はやられてしまいましたが……」


「そうですね。あのときに、レイヴン様がしっかりと止めてくださればノエラも危険な目に合わなかったのかもしれないのに」


 リーネはからかうようにレイヴンに言うと、レイヴンはうなだれてしまった。


「それについては申し訳ない。僕としてはほんの噂程度だと思っていたんだ。しかし、二人がやられたところを見ると、どうやら穢は本当に発生しているようだね」


「……うん? 二人?」


 何か引っかかるものを感じたリーネは少し首をかしげた。


「噂などと切り捨てずあのときに二人を止めていれば……」


 レイヴンは悔しそうに呟いている。

 早く対処をしなければと彼は唸っている。


(ふむ、この感じだと、なにやら思い違いをしているみたいですね。それに気になる点もありますね)


「確認ですが、穢というのは、真黒な煙みたいなやつですか?」


 首を傾げながらリーネが尋ねた。


「煙というよりは霧というのが近いかな? でも極稀にそれが煙みたいになって形を持つこともあるらしいよ。酷い時は人の形になって襲いかかってきたということもあるって話だよ」


 そんなのはめったにないけど、とレイヴンは付け加えた。


「ふむ……」


 リーネは腕を組んで思い出す。間違いなくあれのことだ。

 そしてさっき引っかかったこと。


 レイヴンはリーネも同じように穢にやられたと言っていた。

 もちろん、事実はそうではなく、てっきり伝わっているのかと思っていたのだが……


「その人型っぽい黒い煙なら私がもう浄化しましたけど?」


「……はい?」


 リーネのあっさりとした言葉に、レイヴンは目を丸くした。




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