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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第三幕 スラム調査編

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第9話 求婚と牽制

 昨日の記憶を頼りにスラムの中を歩くと、やがて教会の前にたどり着いた。


「さて、アリアに……おや?」


 教会の前には、昨日も見かけた子どもたちの姿があった。


「何をしているのかな?」


 数人の子どもたちが教会の中を覗き込んでいる。

 その中には昨日案内してくれた少年の姿もあった。


(ここは彼らの家のはずですが)


 リーネは不思議に思いながらも彼らに近づく。


「どうも、こんにちは」


 リーネが声をかけると、子どもたちがビクッとして一斉に振り返った。


「あ、き、昨日の……」


「良かった忘れてませんでしたか」


 子どもたちもほっとした様子で息をついた。よほどびっくりしたようだ。


「えっと、カイルくんでしたっけ? こんなところで何をしているんですか? 中を覗き込んでいるみたいでしたが」


 尋ねてみると、カイルは気がついたように教会の中を確認した。


「あ、あの、ちょっとこちらに来てください」


 カイルはリーネとレイヴンを手招きすると、教会の中を覗き込むように促してきた。


「なんでしょう?」


 リーネとレイヴンが教会の中を覗き込むと、一人の身なりのいい若者がアリアを囲んで話をしているのが見えた。


「どなたでしょうか?」


 とてもではないけれど、スラムの住人には見えない。


「あの人たちはこの教会を支援してくださっている方々なんですけど……」


「あー、そういう人たちもいるんですか」


 金持ちが道楽や慈善事業で支援でもしているのだろうか。それとも……


「お菓子とかおもちゃとか持ってきてくれるんだよ」


 子どもたちの一人が教えてくれた。


「なるほど。いいじゃないですか」


 しかし、その割には子どもたちの表情は暗い。


「どうしたんですか?」


「あの人、お姉ちゃんのことが好きみたいで……」


「……あら」


 言われてから、もう一度教会を覗き込むと、若者はアリアに熱心に話しかけている。


「でも、お姉ちゃんは困っているみたいで……」


 確かに、アリアは困ったような愛想笑いを浮かべるばかりだ。


(支援者としてはありがたいけれど、求婚されても困るという感じですね)


 無下にも扱えないし、かといって受け入れるつもりもないと。


「そうですか。それは大変ですね」


「うん、お姉ちゃんには幸せになったほしいから」


 どうやら子どもたちもアリアの幸せを願っているらしい。


「神父様がいたときは、ああいうのは止めてくれたんですけど……」


 いなくなってからは抑える人がいなくなって押され気味ということらしい。


「そうですか。まあ、アリアにだって選ぶ自由がありますからね」


 リーネはそう言うと、覗き込むのをやめてレイヴンに振り返った。


「さあ、行きましょうか」


 リーネは返事を聞かずに堂々と教会の中へと入っていく。

 カツンカツンという足音にすぐに気がついたアリアは、驚いた表情を浮かべた後に、すぐに笑顔になった。


「リーネ様、レイヴン様! 昨日ぶりでございます」


 話していた若者に礼をした後、リーネたちに駆け寄ってきた。


「ええ、早速使わせてもらいますよ」


 リーネはそんなアリアに微笑んで返す。


「どうぞ、どうぞ。ご自由にお過ごしください」


 アリアもにこにこと微笑んでリーネたちを迎え入れた。


「アリア、そちらの方々は……」


 話をしていると、後ろから先程の若者が話しかけてきた。


「あ、ヘイクさん。こちらの方々は……」


「どうも、アリアの友人です」


 アリアの言葉を遮ってリーネが答えた。


「ご友人……なるほど……」


 ヘイクという若者はリーネとその後ろにいるレイヴンを値踏みするように見つめてきた。

 二人の姿は、貴族学校の制服姿だ。それだけでもうどういう立場かわかったのだろう。


「失礼、私はカノーネ伯爵家の傘下である……」


「アリア、子どもたちが呼んでいましたよ」


 リーネはヘイクの話を遮ってアリアに話しかけた。


「えっ? 子どもたちが?」


「ええ、何やら相談したいことがあるとか」


 もちろん、子どもたちはそんなこと言っていない。これはただの牽制だ。

 ヘイクに対して、お前の相手をするつもりはないと暗に伝えるためのものだ。

 どうやらそれに気がついたようで、ヘイクも黙ってしまった。


「そうですか、なんでしょう?」


「一緒に聞きに行きましょう」


 リーネはアリアを促して、一緒に教会の外へと歩き出す。

 一瞬ちらりとヘイクに視線を向けると、ヘイクはリーネやアリアではなく、レイヴンのことをじっと見つめていた。

 その視線には嫉妬のようなものが混じっていることにリーネは気がついていた。



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