第35話 真相と謎
ボロボロの方の本にはついていなかったから間違えた。普通に一人が手で持って、もう一人が入るものだと勘違いをしていた。
(よく考えたらありえない設計ですけどね)
しかし、まだ開発途中だからそのくらいのものだろうと思っていたのだ。
「おそらく、ライナー氏もこうして人工魔石を付与して使っていたのでしょう」
「つまり、ライナー氏が空間に入った状態で誰かが人工魔石を抜いたと言いたいのかい?」
「ええ、そうかもしれませんね。でも、私は人工魔石を抜いたのは別の人物だと考えています」
「なんだって……!?」
リーネの言葉にレイヴンは目を見開き、ノエラが口を抑えた。
どうやら二人とも悪い予感がよぎっているようだ。
「それは誰か……そうそう、以前退学になったエガード風紀委員長と対面する前に軽く調べたことがあったんですよ」
ノエラといっしょに調べた内容を思い出す。
「どうやら、叔父はどうやら学園の近くに出た魔物を討伐した功績から風紀委員長になったらしいんですよ」
「学園の近くに……魔物?」
レイヴンが首をかしげた。
「ええ、どうやら学園の近くに突然魔物が現れたらしいんですよ。それで叔父はその魔物を討伐したと。しかし、今聞けばこれはおかしいとすぐにわかりますよね」
ノエラも思い出したのか、確かにという表情で口を開いた。
「……学園には多くの人がいますわ。その分、人がマナを使うことも多い。だから魔物が現れることは通常ありえませんわ」
これはここ二十年ほどの間の研究で知られたことだ。当然今では学校の授業で習うくらいの常識になっている。
「そうです。では、叔父は何を討伐したのか? 実際に討伐の証拠として魔石が提出されたらしいですが」
「……まさか!?」
「ありえませんわ!?」
二人が同時に声を上げた。そう、これこそが叔父の隠したかった秘密。
「叔父はライナーが中に入っている状態の白い本から人工魔石を抜いた。それを納品したんですよ」
わざわざ自分が魔物を討伐したと言ってた。きっと兄に対する見栄だったのだろう。
しかし、事件はとんでもない方向に行くのだ。
「人工魔石と天然の魔石が混ざって使われると大爆発が起こります。そうですね。二十年ほど前に魔石の保管庫が大爆発を起こしたように。あれ? 奇遇ですね。ちょうど二十年前ですよ」
ピースがピタリとハマっていく。
ノエラとレイヴンは二人揃って絶句をしていた。きっと二人とも同じことを考えているのだろう。
「もちろん、これは私の推測も混じっていますけどね。しかし、叔父にこれを見せたら酷い顔をしていましたからね」
(あの顔は見事だったなぁ……目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものです)
「いやあ、まさか……だったなぁ」
「ええ、私もそんなこと欠片も予想していませんでしたわ」
むしろよくわかったものだと二人はリーネを称賛してくる。
「私としては嫉妬なんて感情だけで人を殺すのか? と思ってましたからね。素直に納得のいく理由ができてよかったですよ」
リーネは満足げだ。しかし、すぐにちょっと不満そうな顔をした。
「しかし、私でもわからなかった……いえ、正確には叔父に聞きそびれたことがあったんですよ」
「この上でまだあるのかい?」
ノエラやレイヴンはどこか呆れ顔だが、リーネは残念そうだ。
「叔父はどこでマナ中毒で人が死ぬということを知ったのでしょう?」
「「えっ?」」
リーネの言葉に二人はきょとんとした。
「だって十年前にマナ中毒で人が死ぬと理解していた上で、私の両親を殺したんですよ?」
「確かに……言われてみれば少し不思議ですわね……?」
「クレイン氏からとかじゃないかい? ほらクレイン氏は人工魔石の専門家だし」
「その可能性はあるかもしれませんね。いえ、しかし、クレイン氏が叔父にそんなこと話しますか? 人を死なせる手段を? あの叔父に?」
クレイン氏は叔父がどういう人物かわかっていたはずだ。叔父にそんなことを教えた時の危険性を考えられない人じゃないだろう。
「それに後出しになりますが、クレイン氏は叔父に私の両親の殺害工作を指示されたことを後悔してましたからね。そんなことしてしまう自分にです」
つまりクレイン氏が教えたわけではない。
「では誰が……? 私の両親を殺す術を叔父に教えた。もっと言えばそそのかした可能性すらあるかもしれません」
その人物とはいったい……
これにて2幕完了です!
ここまで続きが気になると思っていただいたら、評価はお任せしますので、引き続きよろしくお願いいたします。




