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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第二幕 ミゼリオール邸集団死亡事件

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第33話 リーネと涙

 叔父ヴェルディオを断罪した次の日、リーネは祖父の病室を訪れた。


「ということで、流れでした」


「まさか、あやつがそんなことをしておったとは……」


 淡々とことの顛末を話し終えたリーネに対して、祖父は頭を抱えてしまった。


「アルベリオに劣等感まで持っていたのは知ってはいたが、まさかそこまでとは……」


「知ってはいても理解していなかったというやつですね」


 ふふっと笑うリーネ。


(まあ、人の心なんて理解しようとするのは無理です)


 リーネのように観察・考察で推測するしかないのだ。


「そんなわけで、お祖父様が長年調べてもわからなかった真相を私はつい一ヶ月以内に解明したということになったわけですが、どんなお気持ちですか?」


 リーネはニッコリと笑って尋ねた。普通に煽りである。


「そうじゃなぁ……素直に言うのであれば……ありがとう……かの」


 祖父は目をつぶってリーネに頭を下げた。


「不甲斐ない儂の代わりに真相を見つけてくれて、感謝しかない」


 どうやら祖父は本気でリーネに感謝をしているようだ。


「おやおや、そんなことを言われるとは照れてしまいますね」


 リーネとしては、煽りたい心八割程度で始めた調査だったのに、そんなこと言われるとは、多少は予測していたけれど、思っていた以上に素直な感謝が飛んできてしまった次第だ。


「ふん、お前はこのくらい素直に言葉を伝えられる方が弱いじゃろ」


「そんなことないですよ?」


 実際はそんなことある。実際、リーネは他人に感謝される経験はあまりなく、弱点と言ってもいいくらい苦手ではあった。


 もちろん、そんなことは表には出さないが。


「それでお主が調べ上げた事実はどうするつもりなんじゃ?」


 空気を読んだのか、祖父はニヤニヤと笑いながら話題を変えた。


「ええ、証拠は揃っていますので、私が罪に問われたりなどはありませんね。まあ、そもそも私は死神なので罪なんてありませんけど」


 あるのはただの断罪だけだ。


「お前が死神になったもびっくりしたがの……それはさておき、ミゼリオール家はどうなるんじゃ?」


「さあ? レイヴン様いわく、降爵は間違いないだろうという話ですよ。同時にさすがに侯爵がいきなり廃止になることはないんじゃないか? とも言っていましたが」


「なるほどの……それで、お前はどうするつもりなんじゃ?」


「どうするとは……?」


「わかっておるじゃろ?」


 祖父は相変わらずニヤニヤしたままリーネに尋ねてきた。

 もちろん、リーネはわかっていた。しかし、それはリーネにとって目を逸らしたい問題でもあった。


「今回の一件で、ヴェルディオにはケチがついた。その息子であるエガードは当主にはなれんじゃろ」


「……ええ、退学になって縁戚に引き取られるらしいですよ」


 エガードはヴェルディオとは別の母方の貴族の家へと引き取られることになった。

 その貴族の家は、王都からは遠く離れたど田舎にあるということで、王都にはもういない。


(まさか私のことを退学にしようとしていたのに、自分が退学になるとは思わなかったでしょうね)


 自業自得といえばそれまでだが、生きていただけマシというものだろう。


「そうすると……おや、ミゼリオール家には空きが出るのお?」


 祖父が痛いところをついてきた。

 そうミゼリオール家には他に近しい親戚はいない。誰が次期当主になるのか。

 ちょうどいいのが一人だけいる。


「今回の件で、お前は親を殺した犯人を自分の手で突き止めた。汚名を晴らすことになったというわけじゃ」


「そんなつもりはなかったんですがね」


 これについては失敗した。

 国への報告をレイヴンに任せたら、自分が主体となって動いたと認識されてしまったのだ。

 幸いにも死神であることなどは伏せたようだが、ともかく、リーネは親の無念を晴らした立派な人間だと認識されてしまったわけだ。


(実体を見れば変わるとは思うんですが……)


 次期当主候補になってしまったわけだが、もちろん、リーネはそんな地位に興味がない。


「貴族って本当にめんどくさいですからね……」


 今のように自由にやっておくことなどできないだろう。


「かかっ、儂はお前が当主になった姿を見てみたかったからちょうどいいがの」


 そんなリーネを見て祖父はさも楽しそうに笑う。


「随分とごきげんですね。趣味が悪いですよ」


 恨みがましい顔で祖父を見るリーネ。それに対しても祖父は大笑いする。


「お前ほどではないわ。まあ、安心せい。儂が生きている間は一旦儂のほうで引き取れるからの」


「それはありがたいですね。そのまま百年くらい生きてください」


「はは、百年は無理でも、せいぜい長生きはしてやるわい」


「ええ、約束ですよ。約束を破ったら死神の力でお祖父様を復活でもさせてみせますから」


「はは、頼もしいものじゃ!」


 そう言って二人は笑った。



 その一週間後だった。


「ヴァルド・ミゼリオールさんが亡くなりました」


 祖父はあっさりと死んだ。


「あなたのお祖父様は最後まで笑顔でしたよ。死に顔もほら、こんなに晴れやかです」


 最後を看取ってくれた看護師さんが示してくれたのは安心しきったような表情。


 それを見てリーネは笑った。


「ははっ……復活なんてできるわけがないじゃないですか」


 死神に人を生き返らせることはできない。人の死の運命を死神は覆すことはできない。


「おやっ?」


 笑いながら祖父の顔を見るリーネ。そんな祖父の顔に雫がこぼれ落ちた。

 それはリーネの瞳から流れ落ちていた。


(ああ、そうか。これが……)


 両親の葬式でも涙一つ流さなかった少女は、そのすべてが終わった今、やっと悲しみという感情を持つことができたのだった。



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