第29話 叔父と追求
以前に調査のために屋敷にやってきたけれどこうやって堂々と来るのは初めてだ。
最悪、会うのも拒否される可能性もあったけれど、流石にレイヴンがいたことによって拒否はできなかったのだろう。権力は偉大である。
「……お久しぶりです。ヴェルディオ・ミゼリオールです」
やってきたリーネたちを叔父は笑顔で迎えてくれた。
(おや、ほぼ初対面なのに随分と嫌われたものですね)
リーネの顔を見て一瞬顔を歪めたのを見逃すことがなかった。
「お時間いただきありがとうございます。至急確認したいことがありましてご訪問させていただきました」
「ほう? なんですかな?」
「実は今回の訪問は私ではなく、彼女の方が主な目的でして」
レイヴンがそう言うと、リーネは一歩前に出た。
「どうも初めまして。リーネ・ミゼリオールです。奇遇ですね。実は私もミゼリオールなんですよ」
軽くパンチをかましたリーネに対して、ヴェルディオは一瞬顔を強ばらせたが、すぐに笑顔を取り戻した。
「随分と久しい顔だな。父は……祖父は元気にしているか?」
「ええ、今も病床で一人で頑張っていますよ」
遠回しに見舞いも来ないですねという皮肉だ。もっとも、祖父は来てほしくないだろうが。
「私も時間がなくてな……父には悪いと思うが」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ミゼリオール家が昔と違って今は大変だというのは伝え聞いていますからね」
「あ、ああ。頑張らせてもらっているよ」
リーネのラッシュはどうやらヴェルディオも動揺が隠せない様子だ。額から汗が滲んでいる。
(おやおや、貴族に向いてませんねぇ)
対してリーネはずっと楽しげだ。それはまるで獲物を追い詰めるサイコパスかのようだ。まるで間違っていないが。
「そうそう、ところで実は最近調べていることがありましてね」
「なにかね?」
「どうしてもわからないので教えてほしいのですが。祖父に聞いてもわからなかったもので」
「ほう、私にわかることであれば答えてあげよう」
祖父でもわからないと聞いて、ヴェルディオは少し興味を持ったようだ。
「ええ、では……」
リーネは少し間を置いてから、にやりと笑って口を開いた。
「なぜあなたは私の両親を殺したのですか?」
その瞬間、空気が完全に凍った。
「な、何を言い出すのかね! 冗談ではすまないぞ!」
固まっていたヴェルディオが怒りをあらわにした。青筋を立てているが、同時に目が泳いでいるのをリーネは見逃さなかった。
「ははは、冗談だと思っていらっしゃるのですか? わざわざ? ここまで来て、こんな冗談を言いに来たと? そんなことを思ってらっしゃるのですか?」
リーネはわざとらしく高笑いをする。
「馬鹿にしているのか!」
それに対して、ヴェルディオはますます怒りを募らせた。しかし、同時に焦っているのも見て取れた。
額からの汗がさらに増えている。
(汗っかきなんですかね?)
それを見てリーネはさらに楽しげに笑った。
「これ以上はいくら姪とはいえ、冗談ではすまさんぞ!」
「だから、冗談ではないと何回言えばわかるのです? きちんと調べてからやってきたんですから」
「調べ……だと?」
ヴェルディオは少し考えた後、首を振った。
「そんなものがあるわけがなかろう!」
もう言葉尻からして自分がやったと言っているようなものだが、どうやら証拠がないと踏んだらしい。
だが、残念。
「きちんと証拠も持ってきましたよ。いやぁ、大変でしたよ。ちゃんとした証拠らしい証拠を見つけるのは」
本当に大変だった。リーネだったら単に死神として断罪すれば終わるだけの話だったのだが、きちんと物的証拠を揃えてきたのは今このときのためだった。
さあ、答え合わせといきましょうか。




