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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第二幕 ミゼリオール邸集団死亡事件

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第28話 過去と未来

「だから兄上、お金を貸してくれよ。もうちょっとで新型の人工魔石開発に成功するんだ」


 今から十年ほど前のこと、ヴェルディオが実家であるミゼリオール家の邸宅へ訪れていた。


「うーん……」


 目の前には、現在のミゼリオール家の当主にして、兄であるアルベリオがヴェルディオから渡された紙を見て唸っていた。


「ヴェルディオ、これを本当に事業にするつもりなのかい?」


「もちろんだ。これが成功すれば、我が家の名声はさらに高まる。兄上も協力してくれるだろう?」


 家のためにといえば、兄は毎回お金を出してくれる。これまでもそうだったし、今回もそうだと、思っていた。


「私が甘やかしすぎたかな……」


 しかし、今回は違っていた。


「お金を出すことはできない。この理論には怪しい部分が多い」


 つらつらと紙に書かれた理論を説明してくるアルベリオ。それはまるでわがままな子供をあやすかのようだ。


「そんな……」


 しかし、ヴェルディオはその内容をひとつも理解できていなかった。

 もともと、彼自身に人工魔石に対する知見がほとんどないのと、断られたということで頭が空っぽになっていたのだ。


「ということで、この理論で作られた人工魔石は市場の価値がないわけだ……」


 わかるかい? と微笑んだアルベリオ。それは、純粋な微笑みだったのだが、ヴェルディオはそれを嘲笑だと考えた。


(バカにしやがって)


 ヴェルディオは今回の件には絶大な自信を持っていた。だからこそ、それが否定されて、彼自身が否定されるようなそんな感覚を味わった。


「それに十年前くらいだったか、王都で大爆発が起きて今それの原因を調査しているんだけど……」


(もういいや)


 スイッチが入ってしまったのはこの時だった。

 長いあいだ時間をかけて、育てられた憎悪はもはや浄化できないほどの闇となって、彼を支配した。


 自分の家にどう帰ったかは覚えていない。しかし、彼はすぐに行動に出た。


「おい、お前、本家の空調設備に細工をしてこい」


 ヴェルディオは呼び出した男、クレインにそう命じた。


「えっ? さ、細工ですか!? な、なんでですか? そんなことをしたら……」


 どうなるか、人工魔石の研究者であるクレインはわかっていた。

 彼の言った細工を施すと家の中の人がどうなるか、ということをこの時から認識していた。

 まさに彼は天才だったのだ。


「いいからやれ!」


 それでも、ヴェルディオは命じた。

 クレインには拒否権はない。ヴェルディオは彼の秘密を握っていたのだから。


 あの日、放課後で初めてクレインと出会った時、彼はとある生徒を事故で殺してしまったと認識した直後だった。

 追求してきたヴェルディオにまるで言い訳するようにすべてを話してしまったクレインは、その後、彼の奴隷のように扱わることになった。


 そうして今、ヴェルディオはクレインを使って兄を暗殺することに決めた。最近出会ったある人物から、聞かされたその方法を使えば、きっとただの事件として収まる。


(そうすれば、私がミゼリオール家の当主になる)



 そうして、計画は実行された。

 彼の思惑どおり、ヴェルディオはミゼリオール家の当主となり、クレインを使った人工魔石事業で一旗上げることになる。


(しかし、なぜあの娘だけは生き残ったのか)


 兄の娘であるリーネが生き残ったのは、彼にとって予想外の出来事だった。

 ミゼリオール家としては、直系の子となるため、当主の座を争うこともありえたが、リーネは狂気の令嬢として噂されることになり、それもなく当主になることができた。


 そのリーネも父である前当主が面倒を見るということで片付いた。

 これで、誰にも邪魔をされることなく、自分の力を発揮することができる。

 まさに薔薇色の未来がそこまで見えていた。



 しかし……


「旧校舎で遺体が発見された」

 事業は思っていたよりもうまくいかず、同業者からの追い上げもあり、ヴェルディオは焦りを感じていた。

 それに追い打ちをかけるように飛び込んできたのが、その噂だった。


「はい、どうやら、ヴェルディオ様が通っていたくらいの時期に亡くなった遺体らしく」


 それを聞いて、ヴェルディオはピンときた。


(あの時のあれに違いない!)


 空間魔法の魔道具の中に閉じ込められてそのまま死んだ男だ。


(まずい、あれば見つかったら私は……)


 事故とはいえ、殺したということになっているクレインは追求されるだろう。そして、そのクレインが所属している会社にも当然目は向けられる。

 そこから、ヴェルディオの罪にも目が向く可能性だってある。


(くそっ、こんな時まで手間をかけさせやがって)


 散々世話してやったのに、こんな恩を仇で返すような真似をされて、彼はひどく苛立った。


(そうだ、あいつが今いなくなれば、私までたどり着くことはできないだろう)


 あの方なら暗殺者ギルドへのつながりもあるだろう。

 ヴェルディオがクレインの暗殺を決めるまで、そう時間はかからなかった。



 そうして今。


(なぜだ! なぜ今になってなんだ!)


 すべてが悪い方向に向かっていた。

 クレインを殺してしまったことで、事業は大きなダメージを受けた。回復するのには奇跡の一手を待つしかない。

 さらにだ……


「ヴェルディオ様、お客様がお見えです」


「客だと? この時間に誰だ?」


「学園の生徒会長のレイヴン・ガレンティ様と……リーネ・ミゼリオールを名乗る女性です」


 あの時、殺しそこねた子供が成長して、自分の元へとやってきた。

 彼はリーネが死神であることを知らないが、とんでもなく悪いことが起こるという予感を感じていた。



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