第26話 悪行と証拠
しばらくして、レイヴンは顔を出したので、リーネもはしごを降りた。
よくよく考えれば、わざわざはしごなど使わなくても壁はすり抜けられるし、空中にも浮けるリーネにははしごなど必要なかったのだが、それはそれである。
ちょっと珍しい体験に少しテンションが上っていたのだ。
「こっちに部屋があってね」
地下は狭い通路が続いていた。
「あ、そこ気をつけてね」
レイヴンが指さした先には、暗がりに人らしきものが二つ転がっていた。
どちらも、息はもうないようだ。
「レイヴン様はゴミ掃除がお得意なのですね」
「これでも、騎士の端くれだからね。一応こういうときのために訓練は欠かしていないからね」
見たところレイヴンにはかすり傷一つない。どうやらレイヴンはリーネが思っていたよりも強いらしい。
「ここが一番奥の部屋みたいだよ」
「ふむ、事務スペースみたいですね」
通路を抜けると、一つの部屋へたどり着いた。
電灯の魔道具によって明かりが確保されていて、机や椅子、本棚などが置かれている。
窓が一つもないことを除けば、普通の事務所みたいに見える。
「さあ、探していきましょうか」
「僕はこっちの本棚を見ていくよ」
手分けをして部屋を物色していく。探しているのは、叔父ヴェルディオがこの暗殺者ギルドと繋がっている証拠だ。
普通だったらそんな証拠など残しておくわけがないのだが……
「おっと、スマートフォンですね」
リーネは机の上に置かれたスマートフォンに目をつけた。
試しに画面を触ると、パスワードがかかっていて開けない。
「ふむ」
少しいじって、パスワードがわからなかったリーネは、おもむろに部屋を出た。
「どうかしたのかい?」
「いえ、指紋認証がいけるなぁと」
リーネは転がっていた遺体の少し豪華な服を来ている方の男の手を取ると、スマートフォンの指紋認証部分に押し付けた。
「おっと、開きましたね」
「……便利なシステムだね」
(技術の進歩はありがたいものです)
パスワードだけだったらもっと時間がかかったかもしれないけれど、技術の進歩に助けられた。なお、世間的にはこれを悪用という。
「さて、どれどれ……」
リーネはスマートフォンの中を調べていく。
そして、あっさりと目的のものを見つけた。
「ふむ、依頼内容まで、会話が全部残ってますね」
(データで残しているからこういうことになるんですよね)
暗殺者であれば、依頼者の証拠なども握っていても不思議ではない。そう考えていたリーネの大当たりだ。
叔父ヴェルディオが暗殺者ギルドにクレインを始末するように依頼している内容が残っていた。
その報酬まで詳細に記されている。
さらにその後には……
「レイヴン様見てくださいよ」
「これは……君の依頼までしていたのか……」
リーネが見つけたのは、クレインの後にはリーネまでも始末するように依頼していた記録だった。
「ふむ、これは……反撃してもバチは当たらないですよね」
自分の暗殺依頼を楽しそうに読むリーネ。
「さすがにこれは……手加減しろとは言えないかな」
ここまで悪行の証拠が残っている以上、レイヴンも止める気はないようだ。
今見つけたこの証拠、さらに先程クレインの家で見つけたとある物。これを使えば、叔父がひた隠しにしていた真実を暴くことができる。
どんなふうに叔父を断罪してやろうか、リーネは今から楽しみで仕方がなかった。




