第19話 茶番と関係者
「さて、ひとまずの方針は決まりましたね」
「ええ、機器に細工をした人物を探していきましょう」
「それはそうだが……何か手がかりはあるのかい?」
レイヴンがリーネのことを見てきた。
「あると思いますか?」
「ないのか……」
「ありますが?」
「あるのか!?」
リーネの言葉にレイヴンは意表を突かれたように大げさに驚く。
「なんですの今の無駄な会話は……」
ノエラが首を傾げているが、もちろんそんな意味はない。
(やはりレイヴン様はツッコミでこそ輝きますね)
今後もからかっていくことを決めたリーネだった。
それはともかく、
「何の関与もない可能性がありますが、昨夜、叔父の部屋で会話をしていた時に一人の人物の名前が出てきました」
侵入して、叔父が執事と会話をしていた時の話だ。
「その彼と叔父は長い付き合いのように聞こえました。そして、現在は人工魔石部門の技術者として働いているようです」
「そういえば、そんな方の名前出ていましたわね。潮時だの首を切るだの言っていましたわね」
「そうです」
どうやらノエラも覚えていたようだ。
ちょっとした会話だったけれど、叔父の理不尽な性格が垣間見えた良い会話だった。
「その人物が細工をした可能性があると? 聞いた限りだと薄そうに思えるけど」
「もちろん、根拠はありませんよ。単にそういう人の名前が出たというだけです」
ただ、直接その人物が細工をしたのではなくても、叔父の関係者であることは間違いないだろう。
「叔父の長い付き合いで、技術者というだけで調べる価値はあるのではないでしょうか? えっと、その人物の名前は……」
リーネは腕を組んで考える、会話の内容は覚えているが、一部にモヤがかかっている。
「えっと、確か……あら? 忘れました」
リーネがそんな人の名前を覚えているわけがなかった。そういう人物が会話に出たということを覚えていただけ偉い。
「えっと……確かクレインという名前でしたわね。平民出身とおっしゃっていましたわ」
すぐさまノエラが助け舟を出した。持つべきものは優秀な友人だ。
「クレインという平民……」
レイヴンはその名前を聞いて、なにやら腕を組んで考え始めた。
「何か聞き覚えでもあるんですか?」
「ああ、名前に聞き覚えがあるな……どこで……そうか、思い出したぞ。先日の事件の件だ」
「先日の事件とはなんですの?」
「ほら、君たちが旧校舎で見つけた遺体の……」
言われてリーネとノエラは顔を見合わせた。
「ふむ、察すると、ひょっとしてもう死んでいたりしますか?」
「いやいや! 普通に生きているよ! そもそも君の叔父が名前を出したんだろう!?」
「冗談です」
「冗談……か……」
レイヴンががっくりと肩を落とした。
どうやらなぜか力が抜けてしまったようだ。
「それで、先日の事件がどうかしたんですか?」
そのままにしておくわけにはいかないので促した。
「……なんだっけ……えっと先日に君が旧校舎で遺体を発見した件あるだろう? その時に見つけた遺体に関連する人物としてクレイン氏の名前が上がったんだ」
「ほう、それはまた奇妙なことですね」
(なんとなく繋がりそうな予感はしていましたが、そう繋がってきましたか)
マナ中毒という点で何かしら収穫はあると思っていたが、まさか直接関係者が関与している可能性が出てくるとは思ってもいなかった。
(これは面白くなってきましたよ)
「とりあえず、詳細の解説をお願いします」
リーネは今までまったく興味を抱かなかった事件の詳細について、今は興味津津だった。




