第18話 魔物とマナ
「ありがとうございます。これで私の仮説がさらに強化されましたね」
レイヴンが見つけてくれた資料によって、リーネの両親がマナ中毒で亡くなった可能性は非常に高まった。
しかし、高まったというだけ、これでは確定にはまだ足りない。
「マナ中毒で死亡の可能性は高まりましたが、これでもまだ確定にはできませんね」
「ああ、そう思ってね。今度は死神ギルドの方で情報を調べてみたんだ」
「ほう? 何か新しい発見がありましたか?」
「ああ、実はそんな冒険者が死亡したような場所には、強力な魔物が出現するケースが多いことがわかった」
「強力な魔物?」
「ちなみにリーネ嬢、魔物の存在についてどの程度知っている?」
「知っていると思いますか?」
もちろん、知るわけがない。人を襲う可能性がある生物というくらいだ。
「リーネ様はそういう分野は疎いですものね。私から説明しますわ」
ノエラが苦笑いをしながらも説明役を買って出てくれた。
「魔物には大きく分けて二つのパターンがありますの。一つは生物がマナを取り込んで変異したもの。こちらはあくまでも生物がベースですから、さほど強くはありませんわ」
「あー、角の生えた兎みたいなのは聞いたことがありますね」
(学校にも大きな魔物の剥製みたいなやつがあったはず)
もちろん、本物かどうかの判断はリーネにはできていない。
「ええ、そうですわ。そして問題はもう一つの方……強いマナが集まったことで、そのマナから自然発生するものですわ」
「マナから自然発生……霊体のようなものですかね?」
「ああ、冒険者ギルドではこれらの魔物を特に危険視している。なぜなら、この手の魔物は実体を持たない上に、周囲に害を及ぼすことが多いからだ」
レイヴンが補足してきた。
「まるで穢のような感じですね」
周囲に害という特徴はまさに穢そのものだ。
「ああ、似ているかもしれないな。で、それらを倒すためには通常死神が派遣されるんだが……」
(死神以外は対処できないほど強力な魔物ということですか。まあ私はやりませんが)
しかし、なんとなく話の流れが見えてきた。
「冒険者が死亡した段階では外傷がないため、魔物にやられたとは考えづらい。しかし、強力な魔物が発生する前には、マナが周囲に充満し結果的にマナ中毒で死亡している可能性が大いにあると」
「そういうことだね。関係性を調べていくと両者には明らかな相関関係があることがわかったよ」
「つまり、マナが充満する環境では人が死亡するという証明になりますわね」
ノエラが結論をつけてくれた。
「なるほど……よく調べてくれましたね。褒めてあげますよ」
リーネは改めて、書類を確認する。結構な枚数だ。これを数日で仕上げたのはさすがレイヴンだ。
スパイの本領発揮といったところだろう。
(いい拾い物でしたね)
「ちなみにあなたの主観では、これでマナ中毒で死者が出るという証明にはなると思いますか?」
「ああ、そのための資料だ。これを国や冒険者ギルドに提出すれば間違いなく動いてくれるだろう」
アフターケアまでバッチリ。やはり有能だ。
「これにて、私の両親がマナ中毒が亡くなったというのはほぼ確定情報となりましたね」
「うん、ここまで集まればもう放置していても国がなんとかしてくれるはずだよ」
レイヴンのお墨付きも得られた。これで解決……とはならない。
「できれば自分の手で見つけたいですよね」
国になんて任せていたらいつになるかわからない。
(それにここまで来て放り投げるのは、面白くないですし)
それに元々は祖父とのゲームのようなものだったのだ。ここで終わらせるわけにはいかない。
「次は実際に空調設備に細工をした犯人を探すべきでしょうね」
そして、その人物が叔父と関係のある人物であることの証明をする。
「ふふっ、面白くなってきましたよ」
リーネが叔父を追求する日は近い。




