第14話 検査と確信
「さて、空調システムの大元は確かここですね」
廊下を進んでいき、リーネは一つの部屋の前で立ち止まった。
その部屋は他の部屋と違い、木造ではなく金属でできた硬い扉が取り付けられている。
「セキュリティがしっかりしてますわね」
「私たちには関係ないですけどね」
方や幽霊、方や死神の力には硬い扉など関係ない。すり抜けるようにして二人は部屋の中へ入った。
「どうやら随分と人が入っていない様子で」
空気はなんだか淀んでおり、乱雑に置かれている機器類にも埃が積もっている。
ノエラなんか口にハンカチをしているほどだ。
ちなみにリーネは何もしていない。死神にはそこらの埃など関係ないのだ。
さらに言えば、ノエラも幽霊だから埃など関係ないはずなのだが、気分的な問題だろう。
「随分とメンテナンスが入っていないようですわね。これでは可哀想ですわ」
ノエラも機器類を見回しながら、少し怒ったように呟いた。
「うん、でもちょうど良かったです。ノエラには空調用の魔道具を調べてほしいんですよ」
「多分、これですわね。随分と古い機種みたいですわ」
さすがノエラ、どれが空調用の魔道具かすぐにわかったのか、大きな機器の前に立った。
「リーネ様はどういう情報が知りたいんですの?」
ノエラが手袋とマスクを付けて空調用の魔道具の埃を払いながら尋ねてきた。
「これを修理した形跡があるかどうかを調べてほしいんですよ」
「修理の形跡ですの?」
意味わからないという様子でノエラが首をかしげた。
「はい、特に魔力……人工魔石部分が交換された形跡があるかどうかを」
「それくらいなら簡単に調べられると思いますが……どうしてですの?」
ノエラは不思議そうな顔をしながらも、機器を調べ始めてくれた。
「私はあの夜、空調が止まっていたんじゃないか? そう思っているんですよ」
「あの夜、リーネ様のご両親がなくなった日のことですか?」
「そう、おそらく、その当時から、この空調システムはあったはずなんですが、それでも私は暑苦しくて夜中に目が覚めたんですよ」
当時は夏。外はあまり出ないリーネは家に引きこもってはいたが、それでも暑い夏だったのは覚えている。
「確かに、動いていなかった可能性はありますわね。でも、単に故障とかはあるのではありませんか?」
「はい、その可能性もあります。でも、もしも……例えば空調機器に細工がされていて、マナが漏れ出すようになっていたとしたら?」
「えっ、そんなことになっていたとしたら……この空調システムを経由して家中にマナが広がって……」
ノエラが振り返って、驚き目を見開いた顔でリーネのことを見てきた。
「そういうことですの!?」
「はい。可能性としてはというところですが、それだとしたら私以外が全滅した理由も説明がつきますからね」
例えばどこかの部屋だけにマナが充満したのではなくて、発生源が空調システムだとしたら家中にマナが充満するのも頷ける。
そして強烈に充満したマナは時間をかけて外へ漏れ出していく。結果的には家の中にはマナは残っていない。
「そんな! 便利な魔道具をそんな、人殺しの手段に使うなんて!」
ノエラは怒りに震えたようにそう叫んだ。
「便利な道具も結局は使い手次第ですからね。それで……どうでした?」
リーネが尋ねると、ノエラは再び機器の方を調べ始めた。
「……えっと、この部分が人工魔石に繋がる線……これがこう繋がっていて……あれ? これは……」
淀みなく機器を調べていたノエラが、急に手を止めて不思議そうな顔をした。
「何かありました?」
「ええ、なにやら少しいじったような後が……これをいじると……出力が……上がって……」
「出力が……?」
それはつまり……
「周囲から過剰にマナが吸い取られるように細工されていますわ! 先程のリーネ様の推測のことが起こる可能性は高いですわ!」
ノエラがついに確信を持ったように叫んだ。




