第9話 安定性と呪い
「申し訳ありません。ついつい、夢中になってしまいましたわ」
しばらく顔を赤くしていたノエラだったが、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「話を戻しますが、それで、叔父もその人工魔石とやらで失敗していると?」
「どうやらそうらしい。最近ちょっと別の事情があって彼らの会社に行く機会があったんだが、なかなか暗い雰囲気だったよ」
「へぇ、お先真っ暗という感じですか?」
いったいどんな雰囲気なんだろうと、リーネは興味を持って聞いていた。
「聞いたところ、彼らの作る人工魔石は他のよりも多くの魔力を保存することができるとの謳い文句だったんだけど、しかし、その分、出力が安定しないらしい」
「それは厳しいですわね。安定性がないと魔道具制作としては、使いづらいですもの」
どうやらそうらしい。
(出力が大きければ大きいほど良さそうなものですが)
しかし、ノエラがそういうならそうなんだと、リーネも納得した。
「それで叔父はどうなったんですか?」
「どうやら、失敗したことによって、他の貴族からの信頼を失って、今孤立状態らしいよ」
「なるほど……それは大変ですね」
「他人事ですわね」
「実際他人事ですしね。私は別に叔父とつながりはありませんから」
実際、幼いリーネを祖父が引き取ると決めた時も叔父からの異論は特になかった。
それ以前もリーネとしては、そういう存在がいるとは知っていたものの、会ったことはほとんどなかったはずだ。
「ふむ、とりあえず、今のミゼリオール家についてはわかりました。それで?」
ここからが本番である。
「私の両親の事故について叔父が何か関連してそうな噂はありましたか?」
「いくつか君の両親の死についての噂があったが……その……」
リーネの言葉に、レイヴンは少し躊躇したようだったが、口を開いた。
「なんですか?」
「そのほとんどが君の呪いによるものだっていう噂だった……」
リーネはその言葉を聞いて、一瞬ぽかんとしたが……
「あははは、そうですか! それは、まあそうでしょうね」
大笑いしてしまった。
(忘れてましたが、そういう噂はあるでしょうね。なにせ私は狂った令嬢ですし)
「そんな! リーネ様がそんなことするなんてありえませんわ!」
大笑いするリーネの傍ら、ノエラが自分のことのように怒っている。
「そんなことができるならもっと早く教えてもらってますもの!」
怒っているのではなかった。
(さすがノエラは私のことをよくわかってますね。そんなことできるならもっと楽しかったですよね)
まあ、ともかくノエラはリーネがやったとは思っていないらしい。
「もちろん! 僕だってそんな根も葉もない噂は信じちゃいないよ! ただ、この噂の根本を探ったら面白いことがわかってね」
リーネに目を向けられたレイヴンも少し慌てた様子で言った。
「ははぁ、どうせ叔父にたどり着いたんじゃないですか? だから自分が継いだみたいなことを堂々と語っていたとか?」
「そのとおりだ。どうやら、リーネ嬢の悪評をばらまくことで自分がミゼリオール家の正義だと、そういう主張みたいだね」
「それはなんともまあ……」
「おそらく彼は君のことを相当恐れているんだろうね。リーネ嬢が力を持ったら自分の座が怪しくなると本気で考えているみたいだ」
「私は正直、そんな地位には興味ないんですが」
(まあ、会ったこともほとんどない人ですしね。そんなもんでしょう)
「あ、そういえば、今の風紀委員長が叔父の息子なんでしたっけ?」
(彼も同じように噂を流してましたっけ。親子は似るということですかね)
「ああ、そうだね。エガードは少し融通は効かないが優秀な子だよ」
(レイヴン様は生徒会長として付き合いがあるんでしたっけ)
ちなみに、リーネは例の件以降はエガードとは会っていない。
会う必要は特に感じないが。
「それ以外に噂はなかったんですか?」
「うーん、あるにはあったけど、あんまり信憑性のありそうな噂はなかったかな? あ、ただ、事件の数日前にその叔父が君の家に訪れたって話はあったけど。これは本当かい?」
「どうだったでしょうか? 少し思い出してみましょうか」
リーネはしばし、過去に思いをはせた。




