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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第二幕 ミゼリオール邸集団死亡事件

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第3話 死神と依頼

(やはり、ここは落ち着きますね)


 とある日の放課後、リーネはオカルト研究会の部室で優雅に本を読んでいた。


 リーネが死神になってから早いもので一週間ほどの時間が経過していた。

 その間、リーネは特に何事もなく、これまでと同じ学園生活を送っていた。


 いや、一つだけ変わったところがあるとすれば、


「ふぅ……やれやれ……」


 ガラガラと部室の扉が開く音とともに、重々しい溜息が聞こえた。

 それは、リーネの先輩でもあり、生徒会長のレイヴン・ガレンティだった。


「ようこそ、わざわざいらっしゃったんですね」


 ちらりと顔を上げて、リーネはレイヴンに声をかけたあと楽しげに頬を緩ませた。


「今日も随分とお楽しみだったみたいですね」


 レイヴンはここ数日、例の遺体を発見した件でその対応に追われているようで、表面上はいつもの笑顔ではあったものの、よく観察していればどこか顔はひきつって、疲れているのがわかる。


「それもこれも、僕が発見者ってことになったからね。リーネ嬢が名乗り出てくれれば少しは分散したのに」


 リーネの皮肉に、レイヴンは苦い顔をした。

 例の遺体が発見された件は、学園内でも大きな話題となった。しかし、リーネは発見したことには全く興味がなく、レイヴンにすべて押し付けた形になったのだ。


「そういう約束でしょう? 私の好きにさせるという」


「それはそうだが……」


 リーネの笑顔にレイヴンはため息をついた。使徒という奴隷同然の立場上、主の命令には逆らえないのだ。


「それで、今日はどうしたんですか? わざわざそんな愚痴でも言いに来たんでしょうか? いい度胸ですね」


 奴隷ともあろうものが、主人に愚痴を言いに来るとはと、リーネはからかうように言った。


「違うよ。今日は君にお願いがあって来たんだ」


「お願い?」


「うん、とは言っても、僕個人からじゃなくて、死神ギルドからなんだけど」


「なるほど、仕事の依頼というわけですか」


「そういうこと。魂石が溜まってきているから、そろそろ奉納をしないとっていう話になっているんだ」


 魂石の奉納。それは、死神の基本的な役目の一つであり、人の魂が宿っていると呼ばれる魂石を神に返すというものだ。


「それは大切な役目ですね」


 もちろん、死神であるリーネにもその知識はある。それが役目であることも。

 しかし……


「なるほど……しかし、私が受けるかどうかは私の気分次第でいいという約束になっていますよね?」


 死神ギルドに協力するという約束をしたときに、そういう話になっている。

 所属ではなく、あくまでも協力者という外部の人間であるため、強制することはできない。

 つまり……


「僕は何をすればいい?」


 レイヴンは困ったような表情を浮かべて、リーネにそう尋ねてきた。


「そうですね……」


 正直、リーネはレイヴンにしてほしいことなどはない。ないが……


「実は少々気になっていることがありました」


 というのも、先日、祖父と話した叔父の件だ。

 今のリーネには貴族周りの付き合いはない、その点、レイヴンはそのあたりも明るいはず。


(レイヴン様はスパイでもありますし)


 それに……


「いえ、なんでもありません。詳しい事情は後で話すことにします」


「できれば法に触れないことで頼むよ……」


 不安そうにしているレイヴンに、リーネはにっこりと笑って答えた。


「大丈夫です。法を犯してもばれなきゃいいんです」


 それに、これはきっとレイヴンの仕事にも関わってくるはずだ。



 話がまとまった二人は、そのまま学校を出て死神ギルドへと向かった。


「相変わらず、あなたといるとやけに視線が集まりますね」


 周りの人たちの熱い視線はまずレイヴンに集まり、次にその前を悠然と歩くリーネに向けられた後に首をかしげる。


「相変わらずおモテになるようで」


「これについては生まれ持ったものだからね」


 からかうようなリーネにレイヴンも苦笑した。


「しかし、歩いているだけでこれなら、話しかけられでもしたら卒倒するんじゃないですか? 随分と罪づくりですね」


「……こっちからしたら、普通に道を尋ねただけなんだけどね」


 リーネとしては冗談のつもりだったのに、どうやら実際にあったらしい。


「そんな人たちから見たら私たちの関係はどう映るんでしょうね」


 先程からレイヴンを連れて歩くリーネに向けられる視線は決していいものではない、しかし、リーネはそれすらもどこか楽しんでいる。


「……すまない。もっと離れて歩こう」


「別に悪いことはしていないのです、もっと堂々とすればよいのです」


 事実言った通り、リーネは堂々とむしろ見せつけるように歩いている。


(この感情の向けられ方は初めてですね。ありがたいです)


「……リーネ嬢は強いんだな」


 思わずという感じで、レイヴンはそう呟いた。


「ええ、強いですよ。なんたって、私は死神ですから」


 この世で最強です、なんて冗談めかして言うリーネにレイヴンは苦笑いを返してきた。

 もちろん、精神的な強さの話をしていたのはわかっている。もっとも、そっちでもリーネは強いが。


「以前にも言った気がしますが、あなたが他人の目を気にしすぎなんです」


 彼の立場としては正しいかもしれないけれど、彼の場合は少々行き過ぎているようにも思える。


「まあ、私としてはそれはそれで面白いですけどね。あまりにも滑稽で」


 彼の本性を知ってからは、レイヴンのそういうところも楽しめるようになってきた。


「……精進するよ」


 レイヴンはどこか諦めたようにそう呟いた。



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