第14話 生徒会長と謝罪
レイヴンを伴ったリーネはオカルト研の部室へとやってきた。
「ここに来る人はほとんどいないので、話をするのにはいい場所だと思いますよ」
普段はノエラがいるけれど、今日は休んでいるので二人きりだ。
「確かに、校内でこんなに静かな場所は他にないかもしれないね」
レイヴンはそう言いながら、オカルト研の中を物珍しげに見ている。
「その辺りの物に触れて何かあっても責任は取れませんからね」
リーネの言葉に何やら置いてあった水晶玉のようなものを手に取ろうとしていたレイヴンがビクリとなって手を引っ込めた。
「冗談です。おそらく危険なものはありませんよ……多分」
リーネとしても、オカルト研の部室にあるものが本当に安全かどうかはわからない。ノエラが管理している魔道具はかなり怪しいものも多いのだ。
「適当に座ってください。お茶などは出ませんが」
「……うん」
リーネは普段通りの位置に座り、レイヴンはその真正面に座った。
「それで、話したいことがあるのですよね? 先日の件の進捗でもありましたか?」
十中八九死神絡みだと思ったから、わざわざこんなところまで連れてきたのだが……
「いや、申し訳ないけれど、あの件はまだ特に進捗がないんだ」
予想外の答えが返ってきた。
(隠している……わけではないですよね? 本当に何もわかっていない?)
レイヴンの表情を見ても、嘘をついている様子はない。
(ヒントでも欲しいのでしょうか?)
生徒会長ともなれば自力で答えまでたどり着けると思っていたので、少し期待外れではあったが、仕方がない。
「ふむ、ではその件で私に聞きたいことでもあるんですか?」
リーネは当事者だ。質問があれば答えるつもりでいる。
「いや、それも特になくて……というか、旧校舎やギルドの件は関係ないんだ」
「ほう?」
まさか、全く関係のないことだとは思ってもいなかったリーネは眉をひそめた。
「実は、風紀委員が君のことを糾弾しようとしているのを聞いていてね……」
「はい?」
それがどうかしたのだろうか?
「一応私の方で止めようと思ったのだが、押し切られてしまって……申し訳ない」
レイヴンは申し訳なさそうに頭を下げた。
「わざわざそんな謝るために私のところまで来たんですか? 随分と律儀なんですね」
リーネとしては、そんなこといっさい気にしていなかった。
そもそも、今回の件は風紀委員という組織よりも、風紀委員長であるエガードの独断みたいなものだ。
止められなかったとしても、生徒会長のレイヴンの責任ではない。
「噂についても、生徒会の方でもう少しなんとかできるはずだったんだが、止めることはできなかった」
「それは仕方ないでしょう。人の口に戸はたてられませんよ」
リーネとしてはむしろ、珍しい経験をしたので楽しかったくらいだ。こうやって謝れれるのはちょっと違う。
「そうか、そう言ってもらえると助かる」
レイヴンは少し安心したように微笑んだ。
どうやら本当に気にしていたようだ。随分と律儀な人だ。
「ええ、むしろ、私としてはもっと面白い噂が広まってほしかったくらいですよ」
呪いの次はどんなことに発展していくのか、それはそれで面白そうだ。
「君は本当に変わった子だな。変な噂が広まっても全然怒ったりしないんだな」
レイヴンは感心したように言った。レイヴンとしては、寛容なんだと褒めたつもりなんだろう。しかし、それは間違っている。
「それは当然ですよ。なにせ、私には怒りという感情はありませんからね」
「それは……すごいことだな」
まるで女神のような存在だとでも思ったのか、感心するようにリーネを見てきた。
だけど、それはまるっきり勘違いだ。
「ええ、どうやらお腹の中にいる時に感情の一部を置いてきてしまったみたいでしてね」
はははと笑うリーネに対して、レイヴンの顔が固まった。




