第八話 久美子の十二年後
第八話 久美子の十二年後
〜あれから久美子の十二年後〜
博多から新幹線を乗り換え、久美子と母親康子は、阪急電車の芦屋の駅に着くと、 おじいちゃんとおばあちゃんが待っていてくれた。
「良く来てくれたね〜」と、歓迎してくれて、地元の小学校に通う事になった。
芦屋の人と言うか、関西の人は基本的に皆んな優しいのだ。
特に芦屋の人は本当に上品で、おおらかで、優しい人が多い。ほんの少しだけ、一部変な奴もいるが、大抵は他所から来た嫌な成金だ。
久美子は、芦屋には、海も山も川もあるし、小学校で、最果て島から来たというと、釣りの話とかで盛り上がって、歓迎して貰えたのだ。
普通、九州の田舎の人は、関西の人は怖いと思っている人は多いが、それは単に噂で、都会に出て、環境適応能力のなかった奴が、田舎に帰って来て悪い噂を流すのである。
良雄も最初、大阪に来た時は、身構えていたが、はっきり言って、九州人より全然優しくて、住み始めた瞬間から、関西人の仲間として受け入れてくれるので、心地よい日々を送っているのである。
なので、田舎がどんどん過疎化するのだ。良いか悪いかわからないが、これは事実だ。
久美子も楽しい日々を送っていた。
『頑張って元気』笑笑 のおじいちゃん、おばあちゃん達と違って、義理の息子の勝男の悪口など一切言わなくて、むしろ誇りに思っていて、近所でも自慢していたのだ。
久美子は、すぐに小学生から神戸のボクシングジムに通い始めて、父親の遺伝で、才能がずば抜けていたのである。むしろ父親以上かも知れなかった。高校も大学も全て無料の特待生だった。
大学は、一番条件を呑んでくれる、関西女子政治経済大学 通称、政経大に入学したのだ。
良雄の行ってる東淀川大学とは割と近い距離にあった。なので偶然再会する事が出来たのだ。
久美子には高校生の頃から付き合っているボクサーがいたが、試合に負けて怪我して以来、素行が悪くなり、久美子に付き纏ったり、面倒な奴に成り下がってしまったのだ。
なので、久美子は「別れます」とはっきり言ったのだが、ウジウジとまだ言い寄って来ていたのだ。それだけが最近の悩みの種で、後は伸び伸びと暮らしていた。
そして、母親の康子も再婚し、郵便局員の夫と、美味しいケーキ屋も営んでいたのだ。
そして、良雄にも、再会出来たし、これがきっかけで、また楽しい事が起こりそうな予感がしたのであった。
続く〜