第六話 焼肉
第六話 焼肉
局に帰って、「だーっ」とかやって喜んでいると管理者の人が、
「平野くんなんか良い事あった?!」と聞かれたので、
「幼馴染と偶然会ったんですよ」と言うと「女子寮の子?!、へーそんな偶然あるんや〜」と皆んなでわいわいになった。
この頃の局員は、優しい人やオモロイ人、警察に捕まる人がいて、バラエティーに飛んでいたのだ。
もちろん犯罪はあかんけど、喧嘩くらいの可愛いのは、しょっちゅう局内で、作業中に起きていたりしていたのだ。
区分していたり、道順組んでいたりしていると、人間が時々どつきあいで、背中に飛んで来る事など、しばしばで、色濃い職場だったのだ。
組合活動も激しくて、良雄も公安の知り合いとか出来たり、チクる事はしないが、大学生や専門学校生などが沢山いて、学校の課題とか、文系の奴の経済学の数学は工大の奴に聞いて、工大の奴は、英語を文系の奴に聞いたりしていたのだ。
ホンマに楽しい時代だった。
後は、もちろん女の子の話で、「次の合コンは何処の女子大や?」とか、馬鹿話ばっかりしていたのである。
「え〜合コン取って来てよ〜」と、職員までもが参加するのである。もちろん妻帯者は、独身やと言って来るのである。
そんな中、幼馴染の話が出ると、
「それは運命やな、合コンするしかないわ」と他の職員まで集まって来たのだ。
「わかりました、やりましょう、セッティングします」と、言って帰った。
夏休みなので、学校の近くはガラガラだった。銭湯に行くと、店主の息子は社会人で少し上だったが、良雄は三浪もしているので良く話が合った。
そこでも馬鹿話で色々盛り上がったが、
「今日は、速く家に帰って、合コン伝えなきゃ、えっほ、えっほ」笑笑で、アパートに帰って来た。
早速電話すると、ご飯まだ食べていないと言う。
「ならば、奢ろうか」と久美ちゃんを焼肉屋に誘った。
行きつけの焼肉屋があって、引っ越して来たばかりの時に、酔っ払って文無しで店に入った時に、「今度で良いよ」と言ってくれたし、後で書くが、トラックの運転手と喧嘩した時も、正論で、味方をしてくれたのだ。
とても義理人情のある人で、優しくて強い女番長みたいな人だった。
久美ちゃんも気にいってくれたみたいで、
「良雄くん、あんたまさか学生の分際で、ツケで食べてんの?!、駄目ぢゃんママに甘えてばかりぢゃ」
「収入が多いから良いんだよ」と言うと
「今日は払ってあげるわ、借金地獄にならないでね」と言ってくれた。
ママは「良いよ、良雄くんはお金ちゃんと払ってくれるから」と言ってくれた。
「良雄くん、雰囲気変わったね」と久美ちゃんに言われた。
「まーね〜、こっちに出て来て変わったよ」
「最果て島には帰ってるん?!」
「空家になってる、誰も住んでないよ、佐世保に家もあるし、ばーちゃんも亡くなったからさ」
「そうなんや」
「自分は?!、帰ってるん?!」
「とうちゃんの七回忌に帰っただけ」
「お母さんも再婚したし、もう帰らないかなぁ〜、あっ、新しいお父さん、芦屋郵便局のひと」
「へ〜郵便局繋がり、それで出口久美子になっていたんや」と笑っていると、
おっさんらが、
「お〜良雄くん、彼女かいな」と話に割り込んで来た。
「世界チャンピオンの里村勝男の娘さんですわ〜」と言うと、一斉に他の席からも
「お〜、すんげぇ〜」って何が凄いかわからんが、笑笑、声が上がった。
伝説のボクサーは、いつまでも愛されるのだ。久美ちゃんは、おっさんらに
「父の後を追って、世界チャンピオンを目指してます。オリンピックも」と言うと、おっさんらが、
「すんげえ、飲んで〜 ママ俺にツケといて〜」と言うと、
「ダメ!!あんた金払い悪いから!!」と言われて、
「鷹さん、良いよ、また今度奢って貰うわ」と言うと、皆んな
「あっはっはっは」で、夜は更けて言った。
帰り道に、
「楽しかったわね〜 、ねえ、まだ私の事好き?!」と聞かれたので、
「もう一回逢ってくれたら、また好きになる」と言うと、
「腕上げたなぁ〜と」と久美ちゃんは言って二人で笑った。
続く〜