第四話 決闘
第四話 決闘
教室でお別れ会が始まった。
夕方のフェリーには間に合わないと行けないので、午前中の授業は無しになった。
久美子の母親の康子も来ていて、皆んなで歌を歌ったりしていたが、久美子の表情はすぐれなかった。先生がお別れの言葉を皆んなで言いましょう。と言った時に、
「ちょっと待って」とデカい声を張り上げた。「最期に、吉美ちゃんと、高子ちゃんと、洋子ちゃんと今から決闘ばするけん、出てこんね!!」と言い出した。
母親の康子は、「もう、良かけん、あんた」と言い出したら、「わかった」と、吉美ちゃん達三人が前へ出て来た。
そして、久美子が、ファイティングスタイルを取って、皆んなが止めに入ろうとした瞬間、「ごめんなさい!!」と三人が頭を下げて泣き出した。
彼女達は、都会から来た久美子に嫉妬していたのであった。時々、芦屋のおじいちゃんや、おばあちゃんから送ってくる服を着て、学校に来る姿が妬ましかったのだ。
三人は、そんな久美子ちゃんが羨ましかった事を正直にちゃんと話した。
そして、地元の砂浜や、海岸に三人で行って、久美子ちゃんの為に、ブレスレットとネックレスを作ってくれたのだった。
「ごめんね、羨ましかったと」と三人は泣いていた。本当は仲良くしたかったのかも知れない。先生も、吉美ちゃん達の親も、康子も久美子も皆んな泣いていた。
久美子はしっかり「ありがとう」と言って、一番いじめていたボスの吉美ちゃんからは、ネックレスをかけて貰い、高子ちゃんは、ブレスレットをつけてくれて、洋子ちゃんは、目の前で作文を読んでくれた。
(今までいじめてごめんなさい。最果ての島と私たちを忘れないでね。大人になったらまた会いましょう)という内容だった。
とても良いお別れ会になってしまった。
窓のずっと先には、良雄の父親が制服姿で立っていてくれていた。
良雄は、最期泣かずに、「大学生になったら、必ず逢いに行くけんね」と約束をした。
「うん、待ってるけん、逢いに来てね」
と、言って笑って握手をした。
夕方になって、皆んな港に集まって来た。明日の朝には博多に着くらしい。
それから、新幹線で大阪まで行って、阪急電車で芦屋まで行くらしいが、九州人あるあるで、兵庫県と大阪の区別がつかないのである。
なので、「大阪んどこに芦屋はあると?!」とか、皆んなに聞かれるのである。久美子は夏休みに母親と良く帰っていたので、兵庫と大阪の区別はつくが、小学生やええ大人でも「兵庫県て何処にあるとですか」と言う人がいたりする。
久美子と母親の康子は、首に花の首飾りを、さらにいっぱいかけて貰って、皆んなと最後の、わいわい、わちゃわちゃを始めた。
全然知らないひとも、「今から行くとね〜頑張ってきんしゃいね〜」とか言ってくれるのである。最果て島あるあるだった。
それから船に乗り、甲板から紙テープ、神テープの嵐が吹き荒れるのである。
「元気でねぇ〜」これが、二月、三月とかだと、ブラスバンド部演奏で見送り、最期の最期、汽笛の『ボーッ』っと、言うAの音が鳴り響くのであった。
良雄は最後力を振り絞って、
「久美ちゃ〜ん、好いとるけ〜ん!!」と言うと、泣いてた皆んなも大爆笑した。
「良雄く〜ん、私も好いちょっよ〜、迎えに来て〜」と久美子は答えて、お見送り会は終わった。
良雄は家に帰って、ぼーっとしていると、「キャッチボールばすっか?!」と父親が言い出して、二人は、駐在所の前の駐車場で、真っ赤な夕日が沈む潮風の中、キャッチボールを始めた。
そして、母親に
「ご飯の出来たけ〜ん、はよ来んね〜」と呼ばれて、晩御飯になった。
ご飯の夕げの中、良雄は、「大学は、大阪に行くけんね〜」と母親と父親に言った。
「良かよ」と二人は言ってくれた。
続く〜