【ep25】夜に沈む影の宴
魔界の魔法生物ラオラスによって
リリルが大怪我をおったが
エミーとその師匠であるボルゼイルさんが
なんと魔法使いでも希有な「聖職者」だった
そのおかげでリリルの怪我も瞬時に治った
「しかしエミーが聖職者だったなんて驚いたわ」
「まぁ特にアピってないからねぇ~」
ひとまず私達は女神を信仰する村である
ニターナで少しの間、停泊することにした
エミーが仕える「エルゴ教会」で泊めてもらえることに
「じゃ、この部屋好きにつかっていーよー」
「わぁ!広いね!」
白を基調とした部屋に木造の家具がいくつか並ぶ
部屋も多人数用に大分ひろめだ
窓はステンドグラスでできており日の光が照らし
木目の床に神秘的な絵柄が浮かんでいた
「ふぅ~」
一息ついて、みなそれぞれ寝場所などを確認
荷物などを置いてミシェルとリリルは服を着替える
私たちはカームコートのおかげで濡れなかったので
カームコートだけ脱いで格納する
「しっかしカームコート、って便利だね
まったく濡れなかったしー」
「でしょ!私達で考えた3つめの商品だからね」
「ほへー他2つはどんなんなの?」
その言葉に、待ってましたといわんばかりに
ミシェルもリリルも着替え途中なのにそのまま
身をのりだして道具をだして嬉々として答えた
「1つはなーこれ、ムーブックってやつだ。本に魔法をストックできる!どこでもだれでも使える!アタシの案な!」
「2つめはこれよ、カースリング。名前的には呪いっぽいけど闇魔法から身を守る為のアイテムね、さらに闇魔法を使う場合はその威力の底上げもできるのよ」
「ウォ~なんかすごいね!でもカースリングは買う人選びそうじゃない?闇魔法なんて滅多にみないけどー」
はっとする私達だった、今まで闇魔法を扱う
フォレアがいたので当たり前のようにおもっていた
それに闇魔法にやたらと自分達は触れてきていた
普通はそうそう使われない属性であることを思い出した
「エミー、有難うナンバー2は改良の余地ありね」
「うん、これだと売れないかも!」
「他の一般的な属性で作った方がいいな」
「やっぱり風か水か雷っしょ。このソラなら!」
着替えも中途半端になんだか商品会議がはじまった
なにげにエミーもノリノリで参加してきて
のまず食わず、小一時間ヒートアップしていた
~
その後、ひととおりニターナを案内してもらう
村の中心には女神像を飾る噴水、木々に囲まれる立地で
花もよく管理されて綺麗に咲いている
ちょっとした市場や遊び場や牧場、農場など様々だ
人々が悠々自適に暮らしているのがよくわかった
「なんか思い出すなー、私達の故郷の村」
「メルもそうおもう?のんびりしてていいよね」
深呼吸してより一層気持ちが落ち着くのを感じた
なんだかすこし懐かしい気持ちになった
エミーとリリルには今日の食材を買いにいってもらい、私とミシェルはブルーム商店をひとまずニターナ村に
引き寄せる作業をして、エルゴ教会に戻ってきたところ
「あら?だれかいるわね」
教会の入り口の前に、どこかで見たことがあるような
少年と女性が呆然と立ちつくしていた
2人とも服装は薄めの布で、少しボロボロになっていた
前髪でだいぶ顔が隠れていて素顔はよくわからないが
「こんにちは、どうされました?」
「こちらの教会でお祈りしたいのだけども…
だれもいらっしゃらなくて」
「あっほんとだ鍵閉まってる、ボルゼイルさんもどこかに出かけたみたいだよ」
「そうですか…どうする?ナタラ?」
ナタラと呼ばれた少年はボソボソと
物腰やわらかな母親らしき女性に耳打ちする
女性は子の話を聞いて少しだけ驚いた仕草をした
「この子、帰りたいそうなので私達はこれで…」
「そうですか、いらしたことだけ伝えておきますね」
「有難う、私はベシカです、この子はナタラ」
名前だけ告げて帰ろうとしたところ少年が私にぶつかる
あまり前を見てないのか慌てたのか不注意だとおもう。
私のポッシェからフォレアが地面に転がってしまう
すぐに母親が拾って返してくれたが
「ごめんなさい、ナタラが不注意で」
「あっいえ大丈夫です!」
ベシカさんがナタラにおじぎだけさせると
その場から森の方へ去っていった
なんだか寡黙で喋らない子だったが
私はなにかどこかでと思い首をかしげながら
2人をみおくった
「メルどうかしたの?」
「いや、なんだか会ったことがあった気がして」
なによそれとミシェルに笑われた
しばらく二人で談笑していたら無精髭をはやした
黒いカソックを着ているボルゼイルさんが帰って来た
「おや、すまないね。いま開けるよ」
「有難うございます」
ボルゼイルさんは私達を見つけ門を開けてくれた
ぎぃーとおもい扉があく音がなる
同時に村へ続く道から賑やかな声が聞こえてきた
エミーとリリルもタイミングよく帰って来たようだ
びっくりするぐらいたくさんの荷物を抱えていた
「師匠ーただいまー!ふっふっふー今日は特別に~
ボクが料理の腕を振るうよ~」
「おまえがか?出来る気がしないがの」
「がんばるもんっ!!」
ボルゼイルさんはやれやれといった態度だった
皆で笑い会いながら教会に帰る
今日の夕御飯は愉快なことになりそうだ
~
エルゴ教会の一室の食堂の白い長机の上に
振る舞われたのは、原材料が何か分からない
独創的な形と不思議な匂いのした物質
エミー本人曰く「どっかんグラタン」だった
刺々しい見た目になっててまるで爆発していた
ただ味は、よくも悪くもなにか普通…だった不思議だ
「ベシカとナタラが来ていたのだな、すれ違ったか
明日ははいれるようにしておこう」
「あの二人~ちょっと前から教会にくるようになって
信心深いんだよねぇ~なんか凄い暗いけど」
「確かに男の子の方は喋りもしなかったわね…」
どうやら先程会った親子はボルゼイルさん達とは
顔なじみのようだ、待ってて貰えばよかったな
奇形などっかんグラタンをなんとか食べながら
私達はこれからの予定などを
エミーとボルゼイルさんに話した
「壁の島、コリストルを目指していたのか君達は」
「そこならこの壊れた魔法剣フォレアを直せる人がいると聞きました。なにかご存じですか?神父」
「エミー、話しとらんのか」
「あ~ちゃんとはまだだね、ボクはあの娘苦手だし」
頬杖をつきながらエミーは斜め上を見ていた
ほんとに話すのも嫌らしい
呆れた様子で、ボルゼイルさんは食事を済ませて
背後にある古びた木造の棚から、写真を取り出した
写真に写っているのは若い頃のボルゼイルさんと
ピンク色の髪をした女の子だった
「コリストルについたらこの娘に会うといい
ファミリアという名で、私の一人娘だ」
「えっ!?ファミリア!?
ファミリアって、ミザール学園のトップよ!?」
「え、ミシェルの通ってる学園の!?」
「私にはどうかはわからないが…有名らしいな」
ミシェルはその名前に驚いてたちあがった
ミシェル曰く、ファミリアは現学生の中でも
トップ中のトップ歴代1と謳われている
学生の身で既に天才魔法学者らしい。実力だけでいえば
マジル先生すら凌駕するといわれているらしい
「ファミリアなら、魔界カースへの道も、その魔法剣の治しかたもおそらく分かるだろう」
「ファミーはまじ天才だかんね、で嫌味マンだけど」
「あっはは、それが嫌なんだね、エミーはさ!」
「リリルんはもっとめちゃいわれるよ多分」
「まじか…」
うげっとなるリリル、みんな楽しそうだった
しかし、帝国で聞いた話は
本当だったようだ私達の旅路に光明がみえた
私はなにかとても嬉しくて安心して
フォレアとまた話せると思い
傍らの折れたフォレアを見て、笑顔がこぼれた
~
暗い森の中、紅の瞳が8つ光っていた
ニターナの離れにある小さなボロやには4人
翼をはやした少年と女性。大きな姿の男と細めの男。
「ベシカ…触れてどうだった?眠っていたかい?
まだあの中に彼は」
「ええ、深く眠っていたわ。やはりフォレアが
眠らせているようね。フルフィルドの魔法で」
「女神の魔法はやはり厄介だな」
少年はピエロの姿になっていた
それは昼間メルたちが出会った少年ナタラだった
また、大きな姿の男の手にはラオラスの氷の根が
握られていた、細めの男には雷の根が。
それらは闇色の石の形をしていた。魔光石だった。
「ナタラよ、あの女どもは始末するのか?」
「特にメルってやつよぉ~早く消そうぜあいつ
いやその前にめちゃくちゃにしてぇ」
「メルには魔光石を集めさせる必要があるからね
ここじゃあ殺さないさ、まだ手はださなくていい」
「そうかい、わかったよ。でも魔界にきたら味見ぐらいはするぜ!」
「…好きにしろ」
静寂な森の闇に隠れるように4人の影は
散り散りになった。ナタラは翼をはやし木の上にたつ
怪しい笑みを浮かべるピエロの仮面をつけて
教会の方を一瞥した
「メル・カトレス、いずれ貰い受ける災いも君の光も」
細く言い残した言霊と共に道化師は
その姿を夜に沈めた─
つづく
読んでくださりありがとうございます
ピエロは実はだいぶ前にでてました
また続きをかいていきます!!




