【ep19】破壊の閃光
空を覆う巨大な青白い手が突如として現れた
それは帝国の人々が戦慄するほどの巨大さであった
いまにも振り下ろされんとする手をみて
風姫フレアガはすぐに動く
「クエル!いますぐ部隊を集め帝国の前方へ防御陣を!避難誘導も頼みます!それらが終わったら私と合流!」
「はっ!」
クエルはその場から消える、魔術による転移だ
魔術研究所の研究者達も外にでて、空をみあげ騒ぎ出す
闇の剣のフォレアをマジルが持ち出してきた
「マジル、急いでその剣を主のメルさんのもとへ!」
「はい姫様!」
「私はクエル達と共に出来る限りあの腕を迎撃する」
「わかりました、ご武運を!」
2人は飛び上がりそれぞれ別の方へと向かう
姫は周囲の風を纏うとその姿を変貌させた
黄金の翼をもつ天使のような姿へと
身に纏う風が荒々しくなり空を駆け抜ける
「もう…壊させはしない─っ!ソラを!」
~
青白い腕の近くは闇の魔力が渦を巻き噴出していた
逃げ惑う鳥達がそれらに巻き込まれ
一瞬で跡形もなく消滅してしまった
「っ!どうやらあれに触れると危険だ!メル」
「は、はい!二人は…?」
「大丈夫だ鎖の魔術で繋いで遠くに退避させている」
目視でミシェルとリリルが遠くにいることを確認した
二人とも闇の魔力にあてられ気絶してしまっている
「メルは二人を連れて出来る限り遠くに逃げなさい」
「で、でもセリアさん」
「ここは我々、帝国軍に任せて」
「!」
振り返ると城でみた数多の軍人達が
既に防御陣をはりはじめていた
老兵クエルが、こちらへやってくる
その手には巨大な斧が握られていた
クエルがきたら私はすぐにその場を離れることにした
「…セリアよ、彼奴は古き破壊の神の腕のようだぞ」
「破壊…ではあれがシーバの力…?」
「恐らくな…セリアよ、ようやくこの時がきたの」
「ええ、必ずやここで暴いて見せます」
2人の尋常ならざる魔力が解放される
クエルは紅き焔を纏い、セリアは蒼き雷を纏う
それに気付いたのか巨大な腕は指先を二人に向けたと
同時、闇の魔力の塊を一筋の黒い閃光にして放つ
「神槍グングニル─」
「焔斧アポロン─」
黒き閃光を蒼と紅の巨大な魔力がかきけした
一瞬の出来事だがその衝撃波の余波であたりの空気が
大きく揺らぎ、雲は割れた
「わぁぁ~っ!?」
私はミシェルとリリルを連れて腕からは離れてたが
それでも余波でバランスを崩し
近くの浮いていた小島に不時着する
ごん!とミシェルとリリルを岩場にぶつけてしまう
「痛─っ!?」
「ぐえっ!」
「わぁ!ごめん!」
2人とも闇の魔力にあてられていたが目を覚ました
多少離れたことで濃さが薄くなったのだろう
目の覚めた2人は巨大な腕とセリアさん達の戦いを
見てあいた口が塞がらなく驚愕していた
「な、なに?あれ?」
「アタシたちが倒れてる間になにが…」
「よくわからない、けどあいつが研究成果の魔光石を使ってあんなに強い力を得ているみたい…っ」
遠く離れたこの小島にも戦いの衝撃波が飛んでくる
状況の説明もままならないが、私は2人にもっと遠くに逃げようと提案し、とにかくその場から遠くにいくことにした
戦闘は激化している腕の指から放たれる
無数の黒の閃光があちこちに飛び火する
それにあたった島や雲はあたかたもなく消えていた
爆発して消えるとかではない
この世界からの消失だった
「この閃光!我々はなんとか凌げますが…っ数が!」
「一般兵士には荷が重いか…っ」
防御陣をはっている兵士たちも次々に
あたったものから断末魔も残さず消えていっていた
兵士達も恐れ戦きはじめた、場が乱れ敵うはずがないと
混乱しはじめる中に、次の閃光が放たれようとしている
「ちっ!」
腕に向かい指に雷撃の魔法をしかける
しかし一瞬動きが止まる程度で、指自体は無傷だった
さきほどから何度も腕に指にクエルも、セリアも
強烈な一撃を放っているが傷ひとつつかない
「くっ!」
無数の閃光が指から次々に放たれる
いくつかは対魔法で相殺できるが、抜けていく
また兵士たちが消えてしまうとおもったその瞬間─
強烈な風が吹き、無数の閃光は全てかき消えた
新緑の吹き荒れる風、兵士たちも皆、彼女がきたことで
絶望の表情が一変し歓喜にみちる
「セリア!クエル!ここは私がうけもつ!貴方たちは、腕の根元のシーバを討ちなさいっ!」
「フレアガ姫様っ…!御意っ!ゆくぞセリア!」
「はいっ!」
緑の衣へ戻ったフレアガ姫は
自身の背丈より長い杖を召喚し風を集める
この空において無尽蔵に存在するのは風も同じだ
「ジオス…いやシーバ、もう貴方の思いどおりにはさせないわ、風姫の名において!」
~
帝国近くの浮島までなんとか私たちは逃げてきた
こんな遠くまで伝わる戦いの衝撃には驚きを隠せない
途中途中、閃光がとんできて危うかった
目の前で物が消えていくのは恐怖でしかなかった
疲れ腰をおちつけるが、息も絶え絶えで
震えもとまらない。純粋に怖かったのだ
「はぁはぁ、ここまでくれば…」
「なんだよあの閃光…生きた心地がしなかったよ」
「メル、私たちが気絶したあと、暗闇の島でなにが?」
「急にあの腕が現れて…そしたら声がして…」
「声…?」
ミシェルとリリルに、事の経緯を話した
ミシェルが推察するに、研究所から
盗まれた魔光石を使われてあの巨大な腕を召喚された
おそらくは暗闇の遺跡島でみた壁画の化け物
ジオスの腕ではないかという
話に夢中になっていたらミシェルの後ろに人がいた
少し驚いたがマジル先生だった
「ご明察だ、ミシェル。やっぱり頭の切れがいいな」
「あっマジル先生!」
「はぁしかし君らを探すのに少し手間取ったよ、ほらメルちゃん、フォレアを返すぜ」
「フォレア~っ!」
「メル、しばし待たせたな」
研究のため預けていたフォレアを返してもらい
まじまじとかかげてみた
なにか?少し見た目が?変わっていた
剣の形状が変化して以前より刀身が長くなっている
「フォレア変わってる!?」
「あぁ我の力で魔光石を砕いたらこうなった」
「魔法剣って成長するものなんですか!?先生!?」
「いやぁはじめてみたよ」
三人で不可思議と目新しくフォレアを触っては
変化を観察しはじめる、内に秘める力の強さも
いままでの短剣のような形状からは
想像もつかないものだ、夢中になって観察してた
私たちをなだめ先生が話を進めてくれる
「手短かにいうが、フォレアの解放できてない魔力は尋常じゃなかった…神話時代の民が創造した魔法剣だと彼にのこる魔力から調べてわかった」
「神話時代の…!?」
「それ以上は時間がなくて調べれなかったが、その力なら、あの腕の化けもんも斬れるかも、だ」
私はフォレアをしばしみつめ
その切っ先を巨大な腕へと向ける
なにか確信めいたものは、強く感じる
けど怖さもある、いまさっきあれから
逃げてきたばかりだから本当にできるか?
手が震えてきた
「メルちゃん、無理強いはしない。すまない変な話をしてしまって」
「いえマジル先生…いいんです」
「メル、あれは私たちの手には負えない、けど」
「ここで逃げたら、フィンスターなんて」
「なれないもんねっ!」
私たちは立ち上がりそれぞれの武器を遠くの腕に向ける
マジル先生は少し驚いた様子を見せていたが
やれやれと肩を竦めていた
「逆戻りで悪いけど、君らの先導は任せてくれ」
「有難うございますマジル先生!」
「頼りになるねぇ~」
「行こうっミシェル!リリル!マジル先生っ、そして─フォレアっ!!」
「あぁ─アイツは我が必ず斬りふせる─っ!」
私たちは暗雲立ち込めるソラを飛び立つ
いつのまにか震えは止まっていた
みんなと、フォレアとならどんなことだって
叶えられる!
つづく
読んでくださり有難う御座います!
ひさびさにかきましたが、つづけたいと思います!




