3-12:冥夜の宴2
照明の落とされた暗いホールの中、真っ白な燕尾服に身を包んだ男性がスポットライトの下に颯爽と降り立つ。一斉に集中する衆人環視の目も諸共せず、インカムの位置を直すと、優雅な仕草で礼を取る。
「紳士淑女の皆様、大変長らくお待たせいたしました。宴の司会役を務めさせて頂きます、ミズーリと申します。十年の時を経て、今宵も変わらず皆様に相見えたことを大変喜ばしく思います」
円錐状に大きく広がった客席から、男性の声に反応するように観衆が口笛や楽しげな声を上げる。司会役のホストのような甘いマスクに一部の女性が沸き立ち、華やかな嬌声を上げ熱心に見つめている姿も伺えた。
「では、助手のカンザスから皆様にこの宴の主催陣のご紹介をさせて頂きましょう」
「ハイハイ。司会助手であり双子の弟でもあるカンザスですー! 今回も宜しくお願いしますねー! ではまず南側支柱の来賓席から、ガルム領の王ヴォルド様」
寸分違わず司会と同じ顔をした、ピンクの燕尾服を着た陽気な助手が指の先をパチンと鳴らす。するとスポットライトが瞬時に移動し、ライオンの頭部を持った亜人がパッと映し出される。
その屈強な外見に見合う、金の装飾に彩られた赤ラメのスーツ。それがスポットライトの光を浴びてより一層輝いている。指に金の指輪や大きめのブレスレットを嵌めているのが遠目からも確認でき、その豪奢な姿は他領の王を抜きん出て綺羅びやかだ。
そんな王の隣にはワンショルダータイプの赤いドレスに身を包んだ、しなやかな体つきの猫族の女性が寄り添い、互いに手を添えられていた。周囲の眼があるにも関わらず、女性の手に王は唇を押し当てて、なんとも熱々な雰囲気を漂わせている。
「ヴォルド様はお隣にいらっしゃる十五人目の妾妃様と超熱愛状態です! 見れば解ると思いますが、下手にちょっかい出してあっさり殺されないようにご注意ください。頭から食いちぎられること受け合いでーす! そして東側支柱の席にディルトス領の王クロムフォード様」
こちらは目元半分覆うような真っ黒なマスクを貼りつけ、容姿も年齢すらも伺えない。タイもシャツも徹底した全身黒のスーツ。黒のシルクハットを深めに被り、黒い艶のある杖を付き、静かに足を組んでいる。全身黒だからこそ、首に巻かれた黄色のストールと白い肌が印象的に映えている。ともすればマフィアのようにも見える王の横に、一切装飾のないアオザイのような白のドレスを纏った兎族の女性が静かに付き添っていた。
「相変わらず風体がよくわかりません! 女なのか男なのか判別つかないですが、多分仮面をとったら美形とかいうオチでしょう。そのご尊顔を間近で確認したいという命知らずはクロムフォード様の手によって魂を刈り取られ、冥府の住人になる覚悟をなさってください。それと隣にいらっしゃる女性は、かの有名な高級娼婦タチアナ様でございます! 安易に手を出せば法外な値段を請求され、超怖い後援者の方々に付け狙われますよ! 人生をまだまだ楽しみたい方は手を出さない方が無難だと思います」
何か特別恨みでもあるのかというほどアレな説明だけれども、周囲は特に気にしてないようだ。あれだけの事を言われた二領の王や付き添いの女性も、口元に笑みを馳せるのみで咎めることもない。
「──そーしーてぇ!! 北側支柱の席にはカルフォビナ領の女王、サフィーア様にお越しいただいております!! 流石トロテッカ一の美の悪女!! 毎日踏み倒され、嫐られ、詰られ、締め上げられたいほどのご尊顔と美脚です! なお隣に居りますのは、幼体期から女王をお守りされてきた警備隊長ネブラスカ様です。女王の下僕になりたい方はまずこの警備隊長を倒してから! 前情報によりますと、宴入り口ですでに彼の方に挑んだ命知らずな男が医務室送りにされております。容易に突破出来るなどと思い上がらないでくださいねー! ────三領三王様方には今回もかなりの額を出資していただいております。皆々様心の底から感謝しつつ、盛大な拍手でお迎えください!」
あけすけ過ぎる司会者の説明が切り上がると同時に、スポットライトが動き回り各拠点の王の姿をはっきりと浮かび上がらせる。中央に立つ女王はネブラスカを隣に付き添わせ、優美な仕草で手をやり爽やかな笑顔を振りまく。すると周囲から怒号のような歓声と盛大な拍手が湧き上がった。
あまりの熱狂振りに内心ヒヤヒヤしながらも、視線を貰わないように二人の少し後ろに立つ。
花びらを撒きながら舞い降りた鳥族の踊り子達にも目を向けることなく、皆各王達の姿に釘付けだ。司会役の双子はそれを見てにんまりと微笑みながら説明を続ける。
「それではこれから行われる宴の前に、諸注意についてご説明をさせて頂きます。まずはお手元にある案内状をご確認下さい。皆様に配布されている案内状には予め個人識別番号が記された紙票が同封されております。これを紛失された場合、再発行及び宴への再入場、また全施設の使用等、一切出来なくなります。また紙票の偽造や遊技中に不正行為を働いた場合、その場で所持金全額没収となりますのでご注意下さい」
「この宴でしか使えない通貨、ラダはこの会場前と各遊戯施設の売店から購入できまーす! トピからラダへ変換する場合は所定の位置に配備されている侍従からお願いします! それから別棟にも様々な飲食施設や休憩室もご用意させていただいております! 皆様充分に楽しんでいってくださいねー!」
周囲に響き渡る軽快なラッパの音と共に赤い緞帳が引き上げられ、蒼・黄色・赤、三領になぞらえた三色の鳥が一斉に羽ばたく。それと共に壇上が広がり、ホールの中に巨大な舞台がせり上がってきた。
そして舞台の脇に配置されたのは鉄色の檻。その中には真っ黒な物体がビチビチと音を立てて蠢いている。二人の司会の説明はまだ続いていたけれど、その異様な物体が怖くておもわず女王の側に体を寄せた。
「へ、陛下」
「なんじゃ? モモコ」
「あの黒いウネウネって一体なんなのでしょうか?」
「さてな。大方東の王が考えた新たな趣向ではないかえ。あれは特に悪趣味じゃからの」
なんとなく見ているだけでも嫌な感じがするのだけれど、女王はさして気にも止めずソファに座り込む。先程の爽やかな顔はどこへやら、ゆったりと長椅子に寝そべり煙管片手に悠々とくつろぐ。
私がやったら行儀が悪いと小一時間は怒られそうな行為だけれど、ネブラスカはそんな女王の姿を嗜めることもなく、嬉しそうにグラスとシャンパンを取り寄せ、甲斐甲斐しく世話を焼いている。
……正直な所を言えば、小間使いとしての出番はあまり無い。
もしかして私ここにいないほうが案外いいのでは? なんて思いながらも、ちょっと不思議な距離感を持つ二人の関係を眺めていた。自分には幼馴染という存在がいないから判らないけれど、こんなに気安いものなのか? 女王にとってネブラスカは、一体どんな存在なんだろう?
「足を揉め、ネブラスカ」
「はい。陛下」
……やっぱり完全なる下僕なのかもしれない。
幸いにもこんなやり取りが周囲に漏れないのは、この席が最上階に位置しており、下にある宴席と違って個室だからだろう。部屋の外には警備が詰めており、会場入り口での時のように沢山の男性が女王に群がるということもない。
周囲の視線から隠れられる場所があるのは嬉しかったけれど、下の階からの立ち上るような興奮状態はあまり体によろしくはない。
当てられるというか、匂いというか、色々むんむんしております。
「しかし本当に凄い熱気ですね。お二方はこんな大勢の視線の中で緊張なされないのですか?」
「下々の視線如きにいちいち反応するか、面倒くさい。あんなもの適当に流しておけばよいのじゃ」
「私は警護の面で緊張しますがね。モモコも今のうちに慣れておけ。周囲の目線が何処を辿り、何を思っているのか視線から読み取るのだ。慣れてくればどれが危険人物か感覚で読めるようになってくるからな」
「…………が、頑張ります」
やっぱり感覚からして色々と規格外の方々のようだ。言われたとおり慣れるために視線を巡らせてみるも、どの人がどういう具合に危ない人なのかも解らない。
中世というよりは、シャーロック・ホームズチックな英国風の衣服に身を包んだ紳士や貴婦人方。顔の前には豪奢な仮面が付けられていたり、オペラグラスが掛けられていたりと、その容貌は詳細に伺い知ることはできない。
それに種族も片手では数えられないほどおり、カレンやミラリナのような虫系の種族から、アズラミカのような樹人族、鍛冶屋で見たドワーフ系や、ランカスタのような動物の体を一部に持つ一族も居た。
下層部に行くほどその混在具合は増し、遠目ではもう確認すらできない。けれどもネブラスカには分かるようで、怪しい人物に目をつけては羽の生えた警備の一人を呼び寄せ、その背後に黒いスーツ姿の警備を配置させていた。
「こんな遠目からよく解りますね。ネブラスカ様」
「何事も慣れだ。……まったく、入り口で徹底排除しろと言い含めていたのに、要注意人物が顔を変えて紛れ込んでいるではないか」
呆れ顔で文句を言いつつも、警備を的確に配置していくネブラスカ。もう見ているだけでも人酔いしそうな光景におもわず目線を外すと、西側の空席が目に入った。不自然にもがらんと開いたスペース、そのテープルには一輪のスターリリアが置かれている。
「魔王領の方はまだお見えになられていないんですね」
先程の司会役の紹介の中に魔王領は含まれていなかったけれど、おそらく位置的にあちら側の招待席だろう。不思議に思って女王を見れば、シャンパンを揺らしながら気分良さ気に目を伏せていた。
「なんじゃ。あちらがそんなに気になるかえ?」
「あ、いえ。別にそういうわけではないんですが。ただご老体にはやっぱりこういう場はお辛いのかと思いまして」
なにせ一万年も生きている人だしと呟くと、女王は優雅に飲んでいたシャンパンを盛大に吹き出した。幸いにもその飛沫を受けた被害者はいないけれども、床がシャンパンまみれになってしまう。慌てて備え付けてあったタオルで拭いている間に、涙目になった女王がぶるぶる震えながら腹を折ってソファに蹲っていた。
「ご、ご老体ッ!! ブハッ! さ、最高の勘違いじゃの!!」
「え? ど、どうして笑うんですか!?」
「はしたないですぞ、陛下」
「しかしこやつの言動はそれほどに酷いじゃろうが!!」
扇子で口元を抑えながらも、ついには声に出してゲラゲラと笑い出した女王。ネブラスカはハンカチを差し出して立ち上がると、その姿が周目に晒されないように大きな体で覆い隠す。それでも女王の笑いはなかなか止まらず、流石のネブラスカも少し困惑気味のようだった。
「ひぃ……涙まで出てきたわ、馬鹿者め。ぬしはわらわを見てどう思うのじゃ」
「凄く綺麗です」
「褒めて遣わす。いや、そうではない。年齢のことじゃ」
「えーと、とてもお若く見えます、ね?」
外見だけで判別するのならば二十代後半だけれども、流石に年齢を指摘してもいいのか解らずに曖昧に答える。すると女王は呆れたように目元を半眼にした。
「まだ解からんのかえ。わらわとて長く生きておるが、容色は衰えておらん。年齢と容色は比例せぬ。力の有る者は体を衰えさせぬよう維持できるからの。糞ジジイの域にある宰相とて同じことじゃ」
「糞ジジイとまでは言ってませんけれど……。いつまでも若くいられるだなんてなんだかもの凄く便利ですねえ」
「まあ、その分不都合もあるがの」
「不都合?」
むしろメリットだらけのような気もするのだけれど、女王はそれには答えずに煙管を口に含む。どういうことなのか聞きたくて再び口を開きかけるも、ネブラスカの大きな手に遮られて言葉ごと抑えこまれた。
「モモコ。少し場を弁えろ。城に居るときと同じではないのだから、無為に質問ばかり繰り返すのはやめるのだ」
「う。……はい。申し訳御座いません」
なんだろうな。気になるな。けれどもネブラスカに釘を刺されてしまった手前、仕方なくその広い会場を眺めるだけに留めた。これ以上突っ込んだら怒られるのは眼に見えているし。
この宴には比較的裕福層と見えるご婦人や紳士だけでなく、割りと若めな女性も多く参加している。もっともどれだけ若く見えても見た目=実年齢とは限らないと、教えられたわけだけれども。
……でもあそこに居る子供が実はウンなん百歳とかで、人生の酸いも甘いも経験済とかだったら結構怖いなとも思う。女王が先程口を噤んだのはこの理由からだったのだろうか?
なんとも微妙な気分になりそうなその思考を振り払いたくて、再び中央にせり上がった舞台を見る。
するといつの間にか双子の司会役は舞台から降り、屈強な男性達が大勢立ち並んでいた。物々しい装備に身を包んだ男性達に混じり、中にはプロレスラーのような体つきの女性も数十人は確認できる。男女比率は半々、どうやら混合で何か行われるらしい。
「あのー、ネブラスカ様。質問宜しいでしょうか」
「お前、人の忠告を少しは聞けと……。まあいい。なんなのだ?」
「これから何が始まるんですかね? なんだかとっても物々しい感じなのですが」
「冥府に居られるご先祖様への追善試合だ。この宴はトロテッカの為に身を尽くして亡くなられた方々へ、後世変わらぬ恩義と繁栄をお約束する祭りだからな」
「へえ! そういう意味があったのですか」
「……へえ、って今更驚くような事なのか? いや待て、お前一体誰からこの宴に付いての説明を受けたのだ?」
「食品技術部主任のランカスタさんです」
そうしてランカスタから教えられたことを全て答えると、何故かネブラスカは額を抑えて唸ってしまった。暫くして閉じていた三白眼をキリッと釣り上げ、私に言い聞かすように告げる。
「研究者だからあちらの方が重要だと説明したのは分かるが、偏りすぎだろうが。カレン女史も何をしておられたのか。……とにかく、元々はそういう宴だ。冥府の門が開くと言われる七の月の新月の夜の祭り、だから冥夜の宴。解りやすいだろう?」
「なるほどー! ちなみに冥府の門が開くとどうなるんですか?」
故人ということは、もしかして幽霊とかどばーっと現れたりするのだろうか。上司二人が側にいるから危険は無いだろうけれど、もしもそうなったらと緊張しながら答えを待つ。けれどもこれで質問は終わりとばかりにネブラスカに頬を摘まれる。
「それくらいは自分で考えてみることだな」
三白眼の鋭い眼がくしゃっと笑みに細められ、たしなめるように軽く小突かれる。その姿にちょっとドキッとした。
……う、うんうん。気のせい。気の迷い。
自分に言い聞かせるように近すぎる顔から距離を置いて、ちょっとだけ弾んでしまった胸の内を撫で下ろす。すると女王が足を組み直しながらふふっと笑う。
「ふん。モモコ、いまコレが申したのは建前じゃぞ。元々は口煩い古狸共を黙らせる為にわらわが作った方便じゃからの。冥府の門など開いたこともないし、いまでは完全に祭りが主体になっておる。皆も故人を敬う意識もしておらんのえ」
「……陛下。そのような事を聞いたら義父上様や義母上様がなんと仰るか」
「本当のことじゃろうが。それに親共はぬしが思うほどに了見は狭くはない。案外冥府の淵で一緒に楽しんでおるのではないかえ」
煙管を燻らし薄く笑う女王に対し、困ったように苦笑するネブラスカ。そんな珍しい光景を見ながら、先程の説明を反芻する。
多分、時期的に見てこの宴はあちらでいうお盆みたいなものなのだろう。盆にそんな賑やかな催しをやるなんて、少し違和感を覚えないでもなかったけれど、トロテッカでは普通のことみたいだ。
しかしそうなるとランカスタが言っていた展覧会自体は結局どこでやっているのか。もしかしてここではなく、入り口にあったテントの方?
「む、今回は開始時間が早いな。陛下、お幾ら程変換されますか」
「始めじゃからの一千万程度でいいじゃろう」
「はぁー……。え?! い、いっせんまん!!?」
「畏まりました」
ネブラスカは女王から差し出された蒼いカードを受け取り、自分の物と合わせると側にあるメモに金額を書き込み、侍従を呼び付けるとそれを渡した。
羽の生えた侍従は敬々しくメモとカードを受け取ると、すぐに売店に行き大きな籠を持って戻ってくる。侍従の手から次々にテーブルに積まれていく蒼いそれは、どう見てもカジノコイン。ラピスラズリのような素材でできたそれを一つ手に取り、女王は手の内でくるりと転がす。
周囲を見渡せばどの客も同じように侍従にカードを渡し、色は違えど数枚のコインを受け取っていた。
「さて、お楽しみの時間じゃ。ぬしらも大いに楽しめよ」
「はい、陛下」
「はい?」
もしかしてと自分の案内状に触れて、立体化された各施設を眺めてみれば、カードゲームにダイス、ルーレットにダーツなど、他にも見たことのあるような遊戯が沢山飛び出してきた。
女王の言っていた本当の宴の意味って────もしかしてこの巨大カジノってことか?!
故人を偲ぶのは本当に建前で、公の場で合法的に賭け事して楽しみながら儲けようって魂胆ですか?!
「今回はまた毛色の違うのが出てきたの。あれも趣向の一部かえ?」
「選抜式から一般参加に変わりましたからな。賞金目当てに参加する下層の者等もおるのでしょう。……しかし珍奇な格好ですな」
「くく、あれが勝ち抜いたら城に引き抜こうかの。警備部隊にどうじゃ?」
「間に合っております。これ以上安易に城の住人を増やすのはおやめ下さい。経理に泣きつかれてしまいますよ」
メインは目の前にある闘技場のようで、裕福層ラインにいるご婦人や紳士方はそのまま一歩も動かず、選手のことに付いて語り合っていた。
先程の考えもあながち間違ってはいないようで、二人の上司も類に漏れず、どの選手が強いあれは弱いと品定めしている。それこそネブラスカのような体格の人がごろごろ居る中で、女王はとある選手に目を留めた。
「うむ。わらわはこれにしようかの」
「では私はこちらに賭けましょうかな」
白い用紙の上にそれぞれコインを積むと、透明なゲージがせり上がりコインが一切動かせなくなる。ただの白い紙切れなのに不思議だ。指で啄いても壊れず、ガラスのように乾いた音がした。
「モモコも賭けるかえ?」
「あ、いえ。私はその、賭けられるほどのトピがないので……」
お給料全部入れてもたった六百トピしかない私の所持金。やってはみたいけれども、ラダコインへの変換額は最低でも一万トピからだ。貯金に入っていないものを捻出できるわけもない。
そうして二人の賭けた対戦者を眺めながら、開始の合図を待っていた。