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魔王が世界を壊すまで。  作者: イレニナ
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いじめと魔法陣

夏が終わり、涼しくなり始めた9月も終盤。

16歳の俺は今日も今日とて元友達に絡まれている。

「こうたろうくぅーん?今日もママがつくってくれたお弁当でちゅかぁ?」

口の中にあった卵焼きを飲み込み答える。

「そうだけど。」

視線を下に向けたまま答える。

この前は目線を合わせただけで難癖をつけられたのだ。

俺の胸元まで伸びた手に気が付いたときには無理やり椅子から立たされていた。

弁当箱が机と一緒に床にひっくり返る。

そう言えば登校前に母が自慢げに言っていたのだ。

「朝から唐揚げを揚げる家庭なんてそうないわよ?」

それから母はパートのためにバタバタと俺より先に家を出た。

「どこみて答えてんだよ、なぁ!」

そんなの勿論唐揚げだ。

彼に初めて視線を向ける。

「手を放せよ。」

彼は舌打ちをしながら手を放し、床に落ちている弁当箱を蹴り飛ばしながら教室の外に出て行った。

散らかった食べ物を一人で泣かずに片付けた俺を誰か褒めて欲しい。

俺の物をゴミ箱にわかりやすく捨てたり、通りすがりに肩をぶつけたり、人の目につかないような嫌がらせがもともと多かったのだが、嫌がらせの内容や頻度が日に日にエスカレートしている。

部活でのいざこざで部活を俺は辞めたが、それでも彼は納得できなかったらしく今嫌がらせを受けている。


10月になったからと言って何かが変わるわけじゃない。

少し肌寒くなったのだろうか。

雲一つない快晴で、俺の心とは正反対だ。


学校に着く時間はいつも始業ぎりぎり。

教室からは騒がしく楽しげな声が聞こえてくる。

扉が突然開かなくなったりしないだろうか。

吐くつもりのなかったため息が、口から勝手に漏れ出す。

きっとやる気も一緒に漏れ出したのだろう。

大きく吸い込み、教室の後ろのドアから静かに入る。

不思議なことにペタペタと俺の歩く音だけが木魂する。

俺はきっと人気ものなのだろう。

誰も喋らずこちらを見ない。

息も詰まりそうな教室で彼だけが顔を歪ませこちらに挨拶してくれた。

「今日も来たのかよ、こーたろうくん?」

彼の名前は芦田翔。

基本的には誰にでも優しく、身長こそ高くはないが甘いマスクが特徴だ。

その上勉強も運動も申し分なく、教師からの受けもよく、頭も回り、トークも外さない。

昔水泳教室に通っていたとかで髪は染めた明るい茶髪のような色をしている。

誰にでも優しい彼が、ある日突然俺にだけキツイ対応をするようになったため誰もそのことについては触れない。

まるで俺と彼以外の時が止まっているようだ。

「おはよう。」

とりあえず目線を合わせて挨拶をしておく。

これで昨日のように絡んではこないだろう。

だが俺の予想に反して、芦田翔の顔は激しく歪んだ。

いったいどうして欲しいのだろうか。

挨拶ではなく、来たのかよ?という疑問に対して来たと回答するベきだったのだろうか?

俺の席は一番後ろの中央からやや左寄りだ。

鞄を机の横にかけ座ろうとしたタイミングでゴミ箱に何かが見えた。

芦田に一瞬視線を送ると彼はニヤニヤとこちらを見ていた。

彼なりのサプライズなのだろう。

「勉強が嫌だからって教科書を捨てるのは違うんじゃないかなぁ?」

漢文の教科書が丁寧に捨ててある。

まあ、概ねゴミであっているのかも知れない。


四限目は体育だったのだが、シューズが見つからない。

結局シューズ見つからず、誤って持って帰ったのだと体育教師に説明し、靴下で授業に参加した。

50分の間に芦田に2回足を踏まれた。

その行動力を分けてほしいものだ。


体育が終わり昼休みに入った途端、

「1年生は12時35分から学年集会を行います。講堂に集まるように。」

と校内放送が入った。

抜き打ちの容疑検査だろうか?

4限目が終わるのは12時10分で、現在12時23分のためもうそんなに時間はない。

芦田に絡まれる前に移動をしておくのがいいだろう。


1年は200人程しかおらず、名前はわからずとも顔見知りがほとんどだ。

それに俺は学年1のイケメンに絡まれているため知名度はばっちりだ。

俺はこの纏わり付くような視線が嫌いだ。

12時35分開始のはずだが生徒が集まり切ったのは40分を過ぎていた。

生徒指導が時計を見ながら口を開く。

「今日集まってもらった理由がわかるものーー」

というお決まりの台詞から入ったが誰も手をあげない。

そのため、いつも通りワケを切り出す。

「今日トイレの便器の中から体育用のシューズがーーー」

そう言えば探すのを忘れていた。

この学校はシューズや制服のデザインが学年ごとに違うため学年だけがばれたのだろう。

教師たちは犯人捜しと持ち主探しをしたいようだが、そのどちらかが名乗り出た時点でいじめやそれに準ずる行為がこの学年で起こっていたことの証明だ。

母に心配をかけたいわけではないしできれば穏便に済む方法はないのだろうか。

無言の時間が続き、生徒指導も明らかに苛立ち始めていた。

とりあえず名乗り出ようか迷っていると突然床が金色に光り始めた。

その光は円を描いており複雑な模様や文字のようなものもあった。

「なにこれ」

「どうなっているんだ」

「マジうけるんですけどー」

「みんな落ち着きなさい!誰がこんなこと!」

無論静かになるはずもなく、生徒たちの混乱に比例するかのように光も強くなっていった。

バチュン!

この音は、光が弾けた音なのか、意識が途切れた音なのかはわからない。

大きな破裂音が響き渡った。


閲覧ありがとうございます。

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