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なにこれファンタジー

やって良かったの声「婚約破棄してきた王太子殿下にざまぁしてやりましたわ!」

作者: 家紋 武範

「ミゼット! お前との婚約を破棄する!」


 ええ!? ムスタング王太子殿下は今なんとおっしゃいました?


 ムスタング王太子殿下は、意気揚々と私を指差しております。その後ろにはピンクブロンドのミラ男爵令嬢がほくそ笑んでおりました。

 まさか、ムスタング殿下は、ミラ令嬢に何か言われて私との婚約を無下になさるとおっしゃいますの?

 私は見苦しいと思いながらも、殿下に食い下がったのです。


「ヒドイですわ殿下! 私が何をしたとおっしゃいますの? 結婚は王家と我が公爵家両家の決まりごと。それを殿下の急な一言で無しになさるとお言いになりますの? 訳を……、訳を教えてください!」


 それに殿下もミラ令嬢もニヤついておりました。そして殿下は答えたのです。


「ミゼット。お前は鏡を見たことがないのか? そんなブクブクした体型で余と結婚など、片腹痛いわ!」


 そ、そんな。確かに私は太っておりますが、それは生まれつきのもの。それをおディスるなんて……。

 さらにミラ令嬢も、殿下の後ろから聞こえるように言ってきたのです。


「あのドレスは特注かしらね? 胸よりお腹が出てるなんて、私なら耐えられませんわ」


 ひ、ひどい。ひどすぎる。

 私は何も言い返せず、泣きながらお屋敷に帰りました。そして悲しすぎて数日伏せってしまったのです。


 その間に、私たちの婚約は無効となって、私はさらに気鬱の病にかかって家から出られなくなり、ベッドの上で過ごす時間が多くなったのです。


 そんなおり、お友だちのステラ侯爵令嬢がお見舞いに来たというのです。

 ステラは心おけない友人で、私と同じような体型をしていたので、とても親近感があったのです。それが数か月ぶりに会えるということで大変喜びました。

 ですから私はメイドにステラを部屋に通すように命じました。


「大丈夫? ミゼット。私、心配で心配で……」


 とおっしゃるステラのセリフがまったく耳に入りませんでした。私は彼女を見つめたままです。


「あら私の顔に何かついていて?」

「ステラ。あなたのその姿……」


「え?」


 そう。彼女はとても痩せた姿になっていたのです。


「ああ、これ?」

「あなた、私と同じくらい太っていたわよね? 私は太ってたお陰で婚約破棄されたの。あなたはどんな魔法を使ったの?」


「ふふ、魔法? 魔法じゃないわよ」

「え、じゃあどうやって?」


「それはね、このナロー食品が開発したサプリメント『スグヤセール』を飲んだからよ!」

「スグヤセール?」


「痩せるのって大変よね。食事制限をして、何時間も運動しても、痩せる量はごく僅か」

「ええ、そうね。私も経験あるわ。少し痩せると油断してまた食べちゃって、さらに太っちゃうのよね」


「そうそう。体質もあるだろうけど、みんなそう言うところで躓くのよ」

「そうよねぇ」


「そこでこの『スグヤセール』。他社の痩せるサプリメントとは違い、ナロー食品の研究した身体に安心な成分が入っていて、食べて痩せるを実現できる商品なの」

「良く聞く言葉だけど、なかなか信用できないよのね~」


「でもこの『スグヤセール』は、科学を根拠にしているのよ」

「え? それってどんな?」


「人間のすい臓には、糖を分解する酵素アミラーゼ、たんぱく質を分解する酵素トリプシン、脂肪を分解する酵素リパーゼがあるのよ」

「へえ! 太る要素を抑える酵素ね?」


「そう。『スグヤセール』にはその酵素を助ける働き成分が入っていて、自分の体内の酵素を活性化させるわけ」

「それでステラは痩せたのね!?」


「その通り。実際に目の当たりにすれば『スグヤセール』の効果が信用できるでしょ?」

「でも……お高いんでしょう?」


「それがね、一日一粒三十日分一箱、12,800円のところ、本日は二箱で9,800円(別途税がかかります)なのよ!」

「え? 二箱だったら25,600円の品が9,800円ですって!?」


「そう。さらに二箱ご注文のお客様にはもう一箱付いてきちゃう!」

「わあ。これはすぐに注文しなくっちゃね!」


「もちろん個人差もありますが、効かないと思ったら、全額返金させていただきます」

「ということは、痩せないと思ってもお金が戻ってくるので安心ね。早速、私も飲んでみるわ」





 それから数ヶ月。王家主催の夜会があるということで、私もそこに出席することにいたしました。

 ムスタング王太子殿下と、憎きミラ令嬢は一段上の席で仲睦まじくイチャイチャしております。


 しかし、私がその前を流し目を送りながら通りすぎますと、王太子殿下の目がこちらに──。私は気付かない振りをして、いろんな殿方とお話しておりました。

 そして殿下はミラ令嬢の手を振り払ってこちらにやって来たのです。


「キミ……。夜会では見ない顔だね。どこのご令嬢だい?」

「あら、これは畏れ多い王太子殿下。私は殿下の目に触れてはならない身です。ここで失礼致します」


 そう言って殿下の前から立ち去ろうとすると殿下は私の腕を掴んで来ました。


「キミのような細身で美しい女性が余の目に触れてはならぬという法はない。どうかつれないことは言わないでおくれ」


 と殊勝なことをおっしゃいますので、思わず笑いそうになりました。


「ですが殿下には可愛い人がおります。その人がいては私はただの愛人です」

「まさか……。ミラは私の婚約者じゃないぞ? 今日、キミと会うために婚約者の座は取っておいたのだ」


「まぁお上手だわ。では今、ミラご令嬢とお別れになることが出来まして?」

「ああ出来るとも。余は王太子の名においてミラとは別れる。これで良いか?」


「まさか。ご本人を前にして言っていただかないと……」

「ああそうか。ミラ! こっちへこい!」


 殿下はミラ令嬢をお呼びになり、怒鳴り付けたのです。


「ミラ! お前とは別れる。金輪際余の前に現れるな!」

「ええ? 殿下! 私を王妃にしてくれると言ったことをお忘れですか!?」


「まさか。そなたの聞き間違いだ!」

「な、なにをおっしゃいますの? 証人もございます。友人のタントも、ラパンもいるところで結婚の約束をなすったでしょう!?」


「馬鹿な! 余計なことをいうと、友人共々監獄行きだぞ!」


 二人が言い争いをしている間に、私は婚約者の隣国の皇太子トナーレの元へ行き、その腕を組みました。


「ん? どうしたんだい。ボクの愛しいミゼット」

「トナーレさま。ここは暑うございます。二人でテラスに行きませんこと?」


「ああ、いいとも」


 トナーレさまに引っ付いて、さっきの二人の横を通りすぎようとすると、さすがに殿下も気付きました。


「お、おい、トナーレ皇太子殿下。その女性は私と──」

「ん? 私の婚約者、ミゼットがどうかしたかね?」


「ミゼット!? その……彼女は我が国のミゼット公爵令嬢だというのか!?」

「そうだ。本日の夜会は私の婚約者のお披露目の夜会ではないか。なにを言っているのかね?」


 そう言って、トナーレ殿下は私をテラスに連れて行ってくれました。

 あのときの王太子殿下の顔ったらありませんでした。その後に、思いっきりミラ令嬢にひっぱたかれておりました。


 その後、私は隣国へ嫁ぎ幸せな結婚生活を送りました。逆に祖国では王太子は、余りの乱行のために廃されてしまったそうです。


 それもこれも『スグヤセール』のお陰ですわ。みなさんもすぐにお取り寄せしてみてください。今なら無料で一週間分の試供品が貰えますのよ?

※個人の感想です。

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― 新着の感想 ―
[一言] You○ubeの広告でたまに見る信用できないアレですね
[良い点] 面白かったです! こういうお話大好きです!楽しーい! なんと鮮やかなざまあなんでしょう。 『スグヤセール』私も飲まなくちゃ。 読ませていただきどうもありがとうございました。
[一言] 友人のと会話がもう…www 『スグヤセール』物凄く欲しいですw
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