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底辺ハンターが【リターン】スキルで現代最強 ~前世の知識と死に戻りを駆使して、人類最速レベルアップ~【WEB版】  作者: 萩鵜アキ


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銀山の安否は……

 空港からタクシーに乗り、新宿にあるハンター協会本部ビルへと向かう。


 するとすぐに、スマホが震えた。

 神咲からのメッセージだ。


<結希さん、東京に戻られましたね?>

<ああ。いま着いたところ>

<私に出来ることがあれば、なんでもおっしゃってください!>


 この子は何故ここまで張り切っているのだろう?

 明日斗は首をかしげる。


<殺人以外ならなんでもやります!!>

<い、いや……>


 脳内で問答無用で大暴れし、東京某所を爆心地のようにする氷血姫が思い浮かぶ。

 ――それは非常にまずい。


<いまは大丈夫かな>


 昔の氷血姫ほど力は付いていないだろうが――彼女は大天才だ――万が一が起きかねない。

 ありがたい申し出だったが、明日斗はやんわり断った。


 神咲のメッセージを終えるとすぐに、再びスマホが震えた。


「ん……」


 取り出すと、画面には『銀山まこと』の文字。

(やっと来たか)


 これで詳しい事情が聞ける。

 内心ほっと胸をなで下ろし、通話ボタンをスライドした。


「もしもし」

「やあ。あなたは、結希明日斗でいいですかぁ?」


 耳に聞こえてきた男の声に、明日斗の体が硬くなる。

 銀山ではない。まったく知らない声だ。


「お前は誰だ?」

『それを知りたければ、今から指定する場所に一人で来てくださいー』

「……悪いが、今手が離せないんだ」

『あなたに拒否権はありませんー。意味は、わかりますよねぇ?』


 まことの電話から、知らない男の声。

 指定場所への呼び出し。

 拒否権がない。


 これらの情報から、最悪の状況を理解して、明日斗の頭からさあっと血液が落下した。


(拉致されたのかッ……!!)


 まさかの事態に、明日斗は奥歯を噛んだ。

 何故、どうして。その言葉が頭を駆け巡る。

 状況を整理したい。だが、相手はそれを待ってはくれなかった。


『この協会職員を助けたければ、言う通りにした方がいいですよぉ』

「……っ。場所は、どこだ?」

『一度で覚えてくださいねぇ。東京都○○区××――――』


 明日斗はとある住所を運転手に告げ、行き先を変更。

 まことを拉致したと思しき声の主の元へと向かう。


「おいおい、ハンター協会に行くんじゃなかったのか?」

「外せない用事が出来た」

「時間はあんのか?」

「……あまりない」


 現時刻は夕方の六時。

 このままハンター協会に行けば、問答無用でライセンスを剥奪されることはなくなる。

 だが、銀山の命がどうなるかはわからない。


 逆に銀山を助けに行けば、ハンター協会のリミットに間に合う可能性が低くなる。


 どちらを選ぶか?

 そんなもの、答えは決まっている。


「まことを救いに行く」


 明日斗は前回、銀山の自殺を見過ごしてしまった。

 その経験から、今回は絶対に助けると決めていた。


 しかしまさかこんなことになるとは、予想だにしていなかったが。


「ライセンスはどうすんだ?」

「……駄目なら再取得すればいい」


 ライセンスは、それ相応の理由がなければ剥奪出来ない。

 反面、一度剥奪されると、数年は再取得が禁止される。


 明日斗には〈リターン〉がある。たとえ数年ハンターライセンスを失っても、死に戻りを駆使してレベリングすれば、十年後に間に合う可能性は残されている。


 しかし、ライセンスの剥奪だけで済むかどうか、という問題もある。

 まかり間違えて殺人犯として裁かれれば、十年後も塀の中にいる可能性がある。


(どうすればいいんだッ)


 血を吐き出しそうな気分になり、明日斗は頭を抱えた。

 考えるけれど、ちっとも頭が働かない。

 これまで外地にいて、神経をすり減らし続けてきたのだから、当然だ。


 馬鹿の考え休むににたり。

 一旦深呼吸をして、明日斗は座席に深くもたれかかる。

 こうなったら、その場その場で出来ることをやるしかない。


(まこと。どうか無事でいてくれ)




 指定場所は、都内某所にあるビル建設現場の一角だった。


 ビルは丁度地盤工事が終わり、上へ上へと鉄骨が組み上げられている。


 カツカツカツ。

 鉄板が敷き詰められた現場の奥に、人影を発見した。


「……来ましたねぇ」


 黒いコートを纏った男が、そうつぶやいた。

 男は背が高く、立っているだけでかなりの威圧感がある。

 知性と鋭さを兼ね備えた銀縁眼鏡の奥には、エメラルドの瞳が輝いていた。


(この男、たしか……)


 男の足下に横たわる銀山が目に入り、明日斗は一旦〈瞬間記憶〉を打ち切った。


「銀山を返せ」

「いいですよぉ。返してさしあげますぅ」


 男が片手で銀山を持ち上げ、こちらにむかって放り投げた。

 ぎょっとするが、体はスムーズに動いた。

 明日斗は手を前に出し、衝撃を吸収しながら銀山を受け止める。


 すぐに体を降ろし、首筋に指を当てる。


「……よかった、生きてる」


 脈を感じ、明日斗はほっと胸をなで下ろした。

 しかしそこで、異変に気づく。


(何故、すぐに返した?)


 銀山は人質だ。

 相手の要求をこちらが何一つ呑んでいない状況での返還は不自然だ。


(一体、なにを考えてる)

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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