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金色のゲート

 日が昇ってから眠り、昼から移動を開始。

 夜は頑丈な建物の中で魔物のウェーブに対処する。

 それを繰り返して三週間。

 明日斗はやっと、福岡県に到着した。


「な……長かった……」


 吉武高木遺跡が目に入った途端に、明日斗は腰から砕け落ちそうになった。


 疲労はさほどでもない。

 攻撃する度に〈ライフスティール〉が生命力を吸収して、体力が回復するからだ。


 反面、メンタルがかなりきつかった。

 一瞬たりともほっとする時間がなく、常に緊張を強いられ続けたからだ。


(精神は疲弊していくのに、体力はいつも万全って、なんかの罰ゲームだよなあ)


 体力と精神の均衡が保てないことが、これほど辛いことだとは思わなかった。

 へとへとになりながらも、明日斗は遺跡に向かって歩き出す。


 この遺跡に、とあるゲートが出現する。

 明日斗が入手を目指すアイテムがあるゲートだ。


 だがそれが、いつ、遺跡のどこに出現するかまではわからない。


「……はあ」


 ゲートが出るまで、ずっとこの場所に張り付き続けるのかと思うと、ため息が漏れる。

 遺跡全体が見渡せる場所に陣取り、明日斗はステータスを開いた。


>>覚醒してから人類最速でBランクに到達

 報酬:敏捷+10


○名前:結希 明日斗(23)

 レベル:47→54 天性:アサシン

 ランク:C→B SP:10→45

 所持G:49829→54234

○身体能力

 筋力:75→80 体力:70→75 魔力:19→24

 精神:19→24 敏捷:125→140 感覚:80→85

○スキル

 ・中級短剣術Lv3(51%→91%)

 ・致命の一撃Lv3→Lv4(13%→68%)

 ・回避Lv5(55%→87%)

 ・跳躍Lv5(9%→71%)

 ・記憶再生Lv4(85%)→瞬間記憶Lv1(19%)

 ・可死の魔眼Lv3(7%→68)

 ・ライフスティールLv1→Lv2(0%→11%)

 ・リターンLv2(0.5%)



 この三週間で、レベルが7つ上昇した。

 格上のゲートに挑んでいた時と比べて、相当レベルアップ速度が鈍化している。


 これはレベルが上がれば上がるほど、上がりにくくなるためだ。

 また、外地に出没する魔物のほとんどが、明日斗と同格以下であるためでもある。


 レベルアップの速度は鈍化したが、それを補ってあまりある成果を手に入れた。

 ――偉業達成だ。


 白い獣を倒した直後、明日斗のステータスがすべて5ポイント上昇した。

 これでレベル6アップ分。


 さらに、Bランクに達したところで、『人類最速』の偉業を達成した。

 これにより、さらにレベル2つ分のステータスが上昇した。


「最速の偉業が手に入らなかったからEランクまでだと思ってたが、DとCは他のハンターが先に取ってたのか」


 先に偉業を取得したハンターに、心当たりがある。

 ――氷室青也だ。


 彼は人類最速でCランクに到達したハンターだと言われていた。


 アウトブレイクにより魔物が跋扈した東京で、広範囲氷結魔術を使用し殲滅。その功績が認められ、一躍ハンターの頂点に君臨した。


「やっぱり、魔術の殲滅速度は凄いんだな」


 しかしここへ来て、明日斗は『人類最速』を達成した。

 氷室が持つ最速記録を越えたのだ。


「一応、前進はしてる……か」


 無論、明日斗が超えたのは今の氷室ではない。あくまで過去の氷室だ。

 それでも、偉大なランカーに近づいた気がして、明日斗は笑みをこぼした。


 視線をスキルボードに戻す。

 システム上のランクはBだが、実質Sランクを越える程のステータスにまで育っていた。

 レベルアップではなく、偉業達成でのステータス上昇はありがたい。


 スキルレベルも、全体的に上昇した。

〈記憶再生〉に至っては、レベル5を越えて〈瞬間記憶〉にアップグレードした。

 瞬間的に記憶を再生出来るため、コンマ一秒を争う戦闘中でも使用に耐えうる性能になった。


 戦闘能力は想定以上に上昇した。


(あとは、目的のアイテムを手に入れるだけだ)


 地面に腰を下ろして、じっと遺跡全体を注視する。


 東京とは違い、四月の福岡はとても暖かい。

 体がぽかぽかして、強烈な眠気が襲ってきた。


(くっ、瞼が重い)


 睡魔に抗うが、どんどん意識がもうろうとしてくる。

 明日斗はここまでの約三週間、朝に寝て、昼から行動し、夜は不寝で魔物と戦い続けた。そのせいで、生活リズムが昼夜逆転してしまっていた。


(魔物避けスプレーは、かかってるな)

(なら……ちょっとだけ……)


 明日斗は睡魔に身を委ねた。

 途端に、深い眠りの底へと意識がストンと落下した。




「――ッ!?」


 意識が戻った瞬間、明日斗は息を呑み立ち上がる。

 空が既にあかね色に染まりつつある。


「しまった。完全に寝過ごした!」


 まさかこのタイミングでゲートは出てないだろうな?


 考えると、背筋が冷たくなった。

 慌てて明日斗は遺跡全体を眺めた。

 すると、吉武高木遺跡の一角に、金色の輝きが見えた。

 間違いない。明日斗が狙っていたゲートだ。


「――くそッ!」


 荷物を放り出して、明日斗は急ぎゲートに近づく。


「おっ、ずいぶんと珍しい色のゲートだな。ありゃきっと、攻略すればレアアイテムが手に入るぜ!」

「――ッ、だろうな!」


 だからこそ、明日斗はここまで精神をすり減らしながら必死に移動を続けたのだ。

 アミィの言葉に乱暴な相づちを打ちつつ、全力で走る。


 幸い、ゲートの周りに人影はない。


(まだ一番乗りのチャンスはある!)


 内地のゲートは、発見者がハンター協会に報告し、権利を得てから攻略(もしくは権利を売却)する。

 だが外地のゲートは違う。ハンター協会が管理しきれないため、誰でも攻略して良いとされている。

 このことから、ハンターの間では外地に出現したものを、野良ゲートと呼んでいる。

 たとえ一番発見者にならずとも、アイテムを入手する手段は残されている。


(頼む、誰もいないでくれ……)

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