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底辺ハンターが【リターン】スキルで現代最強 ~前世の知識と死に戻りを駆使して、人類最速レベルアップ~【WEB版】  作者: 萩鵜アキ


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白い獣

 異変を感じたのは、明日斗だけではなかった。

 次から次に押し寄せる魔物たちが、突然ぴたりと動きを止めた。


 後ろを振り返った途端に、まるで蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。


「おー、見ろよ。お前の強さにやっと気づいて、尻尾巻いて逃げ出したぜ!」

「んなわけないだろ」


 明日斗は切れかかった集中力を、再度高めていく。

 こめかみを、冷たい汗が流れる。


 通路から感じる気配は、これまでの魔物とはまるで格が違う。


「……何が来る?」


 明日斗は目を細め、通路を伺う。

 気配の強さから、相手がもうすぐ傍にいることがわかる。

 だが深い闇が遮っていて、姿がまるで見えない。


 チリ……。

 うなじに強い痛みが走った。

 嫌な予感を覚え、腕を上げた。


 次の瞬間だった。

 暗がりの向こうから、純白の獣が現われた。


 猛烈な勢いを維持したまま、獣が爪を振り上げ、


(早いッ!!)


 対応が間に合わない。

 明日斗は奥歯をかみしめ、


 ――ィィイイイン!!


 両手の短剣で、獣の爪を受け止めた。


「ぐっ!!」


 攻撃が重い。

 強い衝撃に膝が折れそうになる。

 体格に差がありすぎる。

 こちらの腕力では押し返せない。


 判断すると即座に明日斗は力を抜いた。

 かくんと膝を折り、転がりながら攻撃を避ける。


 ――ザンッ!!


 目の端で、四つの爪がコンクリートの床に深々と突き刺さったのが見えた。

 もしあれが頭に振り下ろされていたら、今頃明日斗は綺麗に五等分されていたに違いない。


 床を転がり起き上がる。

 幸い、相手は即座に追撃を行わなかった。


 こちらを見て、にやりと口角を上げた。

 魔物の言語など微塵もわからないが、この時明日斗は不思議と相手がなにを言っているかが読み取れた。


『少しはいたぶり甲斐がありそうだ』


 上から見下ろす瞳に、胸がムカムカする。

 ゆったりと爪を上げる動作など、まるで自分が王であるかのように尊大だ。


 その態度に、アミィが珍しくいらだったように舌打ちをした。


「チッ、下等種ごときが、いけ好かねぇ」

「……不本意ながら、同感だ」

「明日斗、あの目障りな獣を蹂躙しろ」

「俺に命令するな。それに――」


 目を鋭く細め、短剣を握る手に力を込める。


「――言われるまでもない」


 明日斗は全力で踏み込んだ。

 獣が爪で迎撃。

 急停止してフェイント、回り込む。

 だが、相手もさるもので明日斗の動きに突いてくる。


(やはり――)


 この純白の獣は、ただの魔物じゃない。

 間違いなく、ボス級だ。

 それも、明日斗と同格以上。


 もしこれが劣等種ではなく原種のリカオンならば、その脅威たるやBランクを超える。

 非常に厄介な相手だ。


 だがそんなものは関係ない。

 丁度、雑魚討伐に厭いていたところだ。


(そちらが挑発するのなら、こちらは全力で受けて立つ!)


 斬って、突いて、蹴って、殴って、

 回避、フェイント、連続斬り。


 息も吐かせぬ速度で攻めかかる。

 並のハンターならば、目で追うのもやっとだろう。

 その攻撃を、獣が難なく回避していく。


(くそっ、全然当たらない!)


 相手と同じステージに立っていない。

 格の違いに気づき、明日斗は歯がみする。


 だからといって、諦めるつもりは毛頭無い。


 この一日で、戦闘を反省し、対策を立てることの意義を学んだ。

 反省が生きれば、レベルアップやスキルアップと同等の、大きな力になる。


 だから、明日斗は集中する。

 相手の呼吸、視線、体の動き、すべての挙動を〝記憶〟する。


 集中力が最高に達する。

 途端に世界がコマ送りになる。


 推測、行動、評価、改善のサイクルを、一呼吸で実行する。

 思考が回転。

〈記憶再生〉が加速する。


 サイクルを繰り返す度に、獣の動きの解像度が上がっていく。

 筋肉の盛り上がりや、予備動作で、徐々に次の攻撃が予測出来るようになっていく。


 獣が腕を爪を立て、振り下ろす。

 明日斗は短剣で受け止める。

 激しい衝撃。

 膝を柔らかく保ち、衝撃を床に逃がす。


 初めは押し込まれた攻撃も、いまは簡単に受け流せるようになった。


 獣が回し蹴り。

 しかし、


「それはもう見た」


 明日斗は軽くしゃがみ、蹴りを躱す。

 同時に、短剣を立て、固定する。


「――ッ!?」


 獣が慌てたようにバックステップ。

 隙を作らぬよう、自らの足をちらりと見た。


 その白い足には、真っ赤な裂傷が生まれていた。

 先ほど明日斗が立てた短剣の切っ先に、足が触れたのだ。


 完全に圧していた相手から、予想外の反撃を受けた。

 このことに、白い獣がいきり立った。


「格下だって舐めてかかるから怪我をするんだ」

「グルル……ッ!!」

「いいぜ、来いよ。お前のその自尊心、完膚なきまでに打ち砕いてやる」

「ガッ!!」


 白い獣が牙を剥き、襲いかかってきた。

 その雰囲気に、もはや慢心はなかった。


 風切り音とともに、爪が襲いかかる。

 かすむ速度の攻撃を、明日斗はひらりと回避する。


 ――重心が動いた。


 蹴りが来る。

 咄嗟にスウェー。

 鼻の先を、獣のつま先が通り過ぎた。

 明日斗は腹筋をバネにして反転。

 相手の懐に潜り込む。


 直上から、獣のかかとが振り下ろされた。

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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