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底辺ハンターが【リターン】スキルで現代最強 ~前世の知識と死に戻りを駆使して、人類最速レベルアップ~【WEB版】  作者: 萩鵜アキ


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力の喪失

「じゃあ、殺り合おうぜ」

「しゃー殺せー!」


 金満利男の言葉に、隣にいる天使ガープが気勢を上げた。


 ガープは第一次アウトブレイク直後に現われた、相棒の天使だ。

 ちまたではこれを天使と呼んでいるが、人が死ぬ瞬間が最も好きと公言している。こんな奴が天使であるはずがない。


 さておき、天使の声とともに利男は駆けだした。


 目の前にいる青年――結希明日斗は、ハウンドドッグのシマを荒らした張本人だ。

 ハンター協会に潜り込んだギルドの内通者によれば、結希のハンターランクはF。先日覚醒したばかりだという話だ。


 こんな雑魚に、ギルドメンバーの下っ端が一方的に殴られ、さらにダンジョンリーダーの新城が怖じ気づいたと世間に知れれば、ハウンドドッグの評判は地の底だ。

 同じギルドの構成員として恥ずかしい。


(蹂躙した後は、きっちり口封じしなきゃな)


 ゲートやダンジョンの中で人を殺すと、物的証拠が残らない。

 目撃者はメンバー以外におらず、死体も魔石に変化する。


 口封じには、ダンジョンやゲートを使うのが一番だ。


「オラオラオラオラオラッ!!」


 初めから、連打を仕掛ける。


 少し強いからってイキる奴を潰すことこそ、利男の生きがいだ。

 イキった奴が泣いて助けを乞う姿を、笑いながら踏み潰す瞬間が、この上ない幸せだ。

 助命を懇願する奴を、一瞬助かると信じさせてから殺す瞬間が、なによりも快感だ。


(はやく、こいつで楽しみてぇ!!)


「――オラァッ!!」


 スキル〈ストレート〉を使い、結希を殴りつける。

 だが、ここへ来て利男は異変にやっと気がついた。


(手応えが……ねえ……!?)


 これまで何度も攻撃を繰り出している。

 だがそのいずれも、人を殴った手応えがまったくなかった。


 傷一つ負っていない結希が、冷たい表情で口を開いた。


「おしまいか?」

「……ッ! やっと暖まってきたとこだよ!!」


(Fランクごときが!)


 ビキッ。

 こめかみが脈動した。

 怒りのまま、拳を振り抜いた。


 必中と思った攻撃が、寸前のところで回避された。

 結希が懐に侵入。


「――ガフッ!!」


 レバーブロー。

 めり込むほど、深く拳が突き刺さった。

 たまらずバックステップ。


(こいつ、Fランクじゃなかったのか!?)


 暖まったはずの体が、一瞬にして冷たくなった。

 利男はCランク上位の、ベテランハンターだ。


 Fランクごとき、指一本で殺せる実力がある。

 にも拘わらず、攻撃が当たらないどころか、反撃を食らうとは予想だにしていなかった。


(まさか、職員にガセ握らされたか!?)


 だとすれば、危うい。

 すでに利男はタイマンを宣言した。


 ここから全員攻撃を指示すれば、格好悪すぎるし、利男の実力が疑われかねない。


 ハウンドドッグは、完全実力制のギルドだ。

 ハンターとしてのランクはもちろんだが、魔物や人間を殺して功績を挙げたものを特に重用するシステムがある。


 反面、失敗した相手には容赦がない。

 実力がないと見なされ、死ぬまで懲罰を受ける場合もある。


(万が一、オレが負けたら……)


『二度とこんなゴミが幹部にならんよう、見せしめにする必要があるな』


 間違いなく、他の幹部やギルドマスターに殺される。


(チッ、見栄を張ってる場合じゃねぇか)


「テメェら、なにぼさっとしてやがんだ! 攻撃だ、攻撃をしやがれ!!」


 多対一で格好が悪くとも、関係ない。

 こちらが勝てればそれでいいのだ。


 利男がメンバー全員に号令をかけた、その時だった。


「戦闘中に、なにをぼさっとしているんだ?」


 ぞっとするような声が、真横で響いた。

 利男が足を動かすが、それより早く結希の蹴りが腹部に突き刺さった。


「ゲェッ!!」


 強烈な一撃に、利男はたまらず膝を折る。

 続けて結希が短剣を振りかぶった。

 これを利男は地面を転がる。


 結希の一撃は、何故か利男から離れた空中を水平に抜けていった。

 助かったと思う反面、今の一撃が自分に向けられていたらと考えると、ぞっとする。


(本気でやべぇ……!)


 なりふり構ってる余裕すらなくなった。

 慌てて、利男はシステムを開く。

 しばらくため込んだゴールドを使って、逆転するアイテムを購入するのだ。


 しかし、


「シ、システムが、開かねぇ……!? お、おいガープ、どうなっ……えっ?」


 見上げると、これまでそこにいたはずのガープの姿が、どこにもなかった。


 五年前から四六時中ともにおり、時々『消えればいい』と願っても絶対に消えなかった奴が、消えた。


 その衝撃が、脳天を痺れさせた。


「なん……で、だ」


 天使は絶対に消えない。

 どれほど喧嘩をしても、口汚く罵っても、これまでハンターの中で天使が消えた者はいない。

 だから、天使は消えないと思っていた。


(じゃあ、どうして、消えたんだ……?)


 まったく訳がわからなかった。

 だが、今は戦闘中だ。

 それに自分はハウンドドッグの幹部でもある。


 このまま四つん這いになって、みっともない姿を晒し続けるわけにはいかない。


 立ち上がろうとするが、上半身が何かに引っ張られた。

 ――ナックルだ。


 先ほどまで自由自在に操っていたナックルが、今は重すぎて持ち上げることさえ出来なくなっていた。


「一体、なにが……」


 困惑の最中、突如目の前に現われた明日斗のつま先が、利男の戦意を完全に刈り取ったのだった。

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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