表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

婚約者令嬢の朝は早い【スピンオフ】

3部作になった!これは2番目。公爵令嬢視点。  @短編その16

1・処刑された最低王子は転生して死んだ悪役令嬢に許しを乞う 王子視点。

https://ncode.syosetu.com/n6762gg/

3・遊びは終わりだ、お前達。 王子視点。 

https://ncode.syosetu.com/n0046gh/


わたくし、エウルィ王国の第一王子、ネイザン様の婚約者でケーラ公爵の娘、メラディです。


爽やかな朝です・・今日も頑張りましょう。


まず6時に起床。目覚めのミントウォーターで喉を潤します。

それから筋トレに剣の稽古を1時間、軽く汗を流してから髪を結ってもらい、軽めの朝食。

8時に学園に登校、授業を受けます。今は最終学年、魔法授業が多くなってきました。

ランチは令嬢方といただきます。そして午後の授業。

終業したらお城に戻り、お妃教育。これはもう四年続いています。

お妃教育は本当、奥が深いです。

そしてディナー。最近は王様とお妃様と一緒に頂くことが多くなってきました。


「あら、またネイザンはいないの?」


そうです。この頃御学友の方々と、召し上がってくることが多くなってきました。

なので帰りも遅いです。このまま顔を合わせないこともあります。


「どうも、息子の行動が芳しくないようだな・・」

「全く・・はぁ」


王様とお妃様が顔を見合わせて大きなため息・・

知ってますわ。彼が何をしているかって。お二人もご存知なのですね・・


「諦めないで頂戴、メラディ。今はまだ子供で、遊びたい盛りなのよ」


と、お妃様はいいます。握り拳を両方、顎の下でキュッ可愛く。

でもボクシングのガードに見えてしまうのは何故でしょう?


とは言いますけど・・・・。それダメです、はい。




食事も終え、課題や復習も終え、風呂にも入り、今は自室でぼんやりと過ごしています。

机にはレターセット。


『拝啓 父上』


ここでペンが止まっています。


『もう、家に帰らせてください。正妃は他の方になって頂ければ宜しいでしょう』


と、書くつもりだった。


国を担う後継が遊びに夢中!王子ですよ?

こんなに責任も弁えない、子供のおつむの彼と何を共有しろと?

わたくしばかりが頑張って勉強し、政治経済を学び、お妃教育を叩き込まれ、剣も嗜む。

・・・私、女王になれるのではないかしら?

でもこのエルフィ王国は、王が国を治める慣し。

いっその事・・・その慣し、潰してしまえば良くないです事?

それに、子供が出来ないかもしれない事態を見越しての、側室・・一夫多妻制。

本当に産めない事がわかった時で良いのでは?夫の取り合いなんて、ゾッとする。

だって今でも、あの平民の・・・


そう思うと涙がぽろっと一粒、机に落ちた。


学園に特待生として通う、平民のあの娘。

ネイザン様は彼女がお気に入りで、いつも一緒。

その娘の手料理を食べて帰ってくる。だからディナーの席に来ない。


本当に貴族のマナーがなっていない子だから、最初は親切心で教えていたの。

それが鬱陶しいとばかりに反抗し、私の顔を見たらしかめっ面で、


「はいはーい、お貴族様は意地悪ですねー」


毎度毎度、こんな言い方をされては、こちらだってムッとするというもの。

だけど彼が庇うのは、平民のあの娘。

すぐ王子に言いつける。しかも大袈裟に。

そんな事は言っていないのに、盛りに盛るのだ。

無視するとこれはこれで言いつける。

わたくしの説明も何も聞かないうちから庇うの・・

そしてネイザン様と取り巻きが言うの。


「おい虐めるな」

「可哀想だろ」

「やきもちしたって可愛くない」


最近聞いたのだけど、この娘、何か聖なる力を持っているのだとか。


・・・・そんなにその娘が良いなら、そちらに行ってくださいませ。

ええ、熨斗を付けて差し上げますわ。

わたくし、頭が悪くてゆるくてボンクラな方は、好みではありませんもの。


それに・・・子供の頃からわたくし・・好かれていませんでしたから。


出会った頃の事、婚約してから、学園に入学して、今。


彼との思い出を鑑みると・・・本当、全然好かれてないわ!!

別に王妃になりたかったわけではないの!

わたくし以外になれそうな子がいなかったから、押し付けられた、気がするの!!


でも・・わたくし・・王子様を好き・・・・・・


・・・・・・・・・


ポロポロポロ・・・また涙が机に落ちる。


『でした』って言えない。『過去形』じゃないもの・・・


「今も好きなんですもの・・・」


記憶の中の、彼の天真爛漫な笑顔を思い出して。

意地悪ではあったけど、小さい頃はわたくしを置いていかなかった。

遅いとか面倒とか言いつつ、わたくしの手を握り、引っ張って連れて行ってくれた。

大きくなってからも、時には笑顔を見せてくれていたの。


だから筆が進まないの。進められないのね。


今の事は黙認し、結婚したら厳しくする?いいえ、側室の処に入り浸りになるわ。

そして今よりも無視されてしまうのだわ。

多分王の執務もわたくしに押し付け、今のように遊んで過ごす気なんだわ。


「もうこれ以上・・苦しまないようにするには・・・婚約を解消するしかないのね」


もう筆を進めるべき。そしてもう王妃になりませんと宣言するのだ。


トッ・・


微かな音にハッとする・・・暫くして『コツコツコツ』。


窓?

振り返ると、人の影・・よく見ると・・・え?ネイザン様?

3月とはいえ、まだ夜は寒いのに薄着だわ・・とにかく部屋に入ってもらう事にして。


「どうしました?こんな夜中に」


ネイザン様が何かを見ている。視線を追うと、机の・・便箋!

でもまだ何も書かれていないから良かった・・・


「勉強していたのか?」

「・・・はい」


誤魔化せたわ。

でもネイザン様、なぜここに・・・彼の部屋は真上・・・まあ!お猿さんのように降りてきたの?

こんな夜中、一体どうしたのかしら?それもレディの部屋に!わたくしったらはしたない!


「頑張っているんだな」


勉強していたと思ったのね。そうよ、いつだって貴方のために・・虚しいけど・・

わたくしは今のまま生きていく事になるのだわ。ネイザン様の尻拭いをずっとさせられるのだわ。


「・・・私の価値は・・このくらいしか」


私の言葉に、ネイザン様はハッとした様子で息を飲み・・・・俯いてポツリと呟いたの。


「すまなかった」


!!!

いきなりどうされたのかしら?夜中ですけど、晴天の霹靂です・・

急にネイザン様が跪き、わたくしの右手をとると口付けたのです!


「どうなされたのです?突然・・」


じっと私を見上げるようにして、視線を逸らさないから・・・ドキドキしてしまう。


「最近の私は君を粗末にした」

「・・・」


粗末・・ですの?粗末なんてものではないのでは?

でも自覚はありますのね?それもどうかと・・


「君は・・少しは・・・・」

「?」


・・少しは?


「やきもちを妬いてくれただろうか?」


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「ま・・!」


それって!それってどう言う事ですの!!!

計略?絡繰りでしたの??な、な・・・


「あまりにも君の反応が薄いので、無駄な戯れは止めることにした」


・・・・・・・・・・・・・・・絶句。


「・・・そういう事でしたの?」


ネイザン様は苦笑しつつ、ゆるんと頭を左に傾げた。ま、可愛い・・いえいえ!!

なんて事・・なんて事なの・・悪戯にしては・・・酷すぎます・・


「意地悪ですわ・・・私、お父様に婚約を解消してくださいと言うところでしたの」


目を細め、なんでしょう・・切なげな顔をしています。

手酷い悪戯をしておいて、貴方の方が傷付いた顔をするなんて・・

狡いですわ・・・


「毎日が苦しくて・・辛くて・・それを、やきもち?許しませんわ!」


わたくしがどれだけ、どれだけ、どれだけ・・苦しんだか、思い知るが良いのです!

ポカポカと、屈んだままの彼の頭を叩いているけど・・

ああ、また涙が・・・


ぽた、ぽたとネイザン様の頬に、頭に、肩に、滴が落ちる。

酷い・・絶対に、絶対に!赦しません・・!!

人を馬鹿にして、苦しめて、傷つけて・・・


「許さなくていい。私にうんと怒って欲しい」


ネイザン様は立ち上がると、わたくしをそっと腕の中に引き寄せて・・


え、えええ??


すごく優しく、逃れようとすれば簡単に逃げ出せる力で包んでいるの。

抵抗?しませんわ・・驚いたけれど。

わたくしは抜け出さず、そっと彼の胸に体を寄せたのです。わたくしったら大胆です。

だってずっとこんな風に・・ネイザン様に触れたかったのですもの・・


気が付くと、すっかり抱きしめられていました。じわーーと捉まってしまいました。

心臓の鼓動も感じます。規則正しい音・・つまり、ネイザン様は余裕という事ですの?

わたくしはもう、体が心臓になったと思えるくらい、ドキンドキンしているのに。

ふと、ネイザン様の手がわたくしの後頭部に触れ、くいと仰け反らせて、お互いの顔が見えるようにして、クスッと笑ったの。わたくし、変な顔してたのかしら?


「そしてもっと私に感情を見せて欲しい。勿論、私にだけだ」


こんなことを言うなんて・・・こんな事って・・夢が願望になったのかしら?

確かに、わたくしはかなり硬い感じだわね。可愛げがない、そういうことですのね?


「でも・・」

「お妃教育で、感情を表に出さない様に、ってあるのは知っているけど、ずっとでなくていいんだ。

公式の場所だけだから・・でもそんな真面目なところが君の良いところなんだろうね」

「・・・」


そうですわね。これからはもっと柔らかく、心にゆとりを持って、そういう事ですのね?


「私も真面目にするとするか・・・ねえ、メラディ」

「はい」

「キスして良い?」


聞きます?そんな事。


「もう・・それは真面目とは・・・くす。お願いします」


お願いしますという言い方、固かったわ、あ・・

・・・きゃ。どうしましょう!どうしましょう・・初めて、きゃあ・・



今夜のネイザン様は、どうしたのかしら?

これは夢なのかしら?ネイザン様が改心してくださったのなら、ちょっと赦して差し上げます。

でもちょっとですからね?夢だと分かっても、ちょっと赦すだけですわ。


「メラディ。これからも私を怒ってくれるか?」


何を言っているのです!!そんな甘えた微笑みで!もしや私を籠絡する気ですのね?

でも怒ってくれって、どういう事ですの?横道逸れたら注意しろって事?でも!


「ま!!怒らせない様にする気はないのですのっ?」


思わず声を荒げてしまったら、ネイザン様は物凄く嬉しそうにして、声を出して笑ったの。

きゃ・・なんて素敵な笑顔なのかしら・・私ったら・・ちょろいわね。ふふっ。


そうなの。ちょっと冗談を言ったり、軽い喧嘩しても最後に笑ってお終い。

こんな風に、ネイザン様と過ごしたかったの。

これが夢なら本当、素晴らしいわ・・

やっぱり大好きです・・・



次の日・・


昨夜の出来事は、夢でない事に気づいたの・・・


だってネイザン様、私の隣で寝ているんですもの・・・

あ!まだ婚約だもの、その先は自粛していますわ!!本当ですわ!!

あら?胸元が肌蹴て・・?




一旦エンド




ちょっとおまけ>


ネイザンはこの日、メラディを断罪するための資料を纏めたモノを持ち帰っていた。

最近ディナーに間に合わなかったのは、あの女と過ごしているのもあったが、断罪する証拠や証言も揃えたりして、メラディを陥れる気満々、虎視眈々だった。


だが彼は3月1日の夜中に転移したのだ。


持ち帰った証拠や資料は暖炉に焚べ、隠滅した。

これで完全に断罪はなくなったのである。



本当のエンド



ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。

どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。


pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。

https://www.pixiv.net/users/476191

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ