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かけあしで集まって

作者: くるみ

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窓の外を見るといつの間にか、西日が影を伸ばしていた。

体の力を抜いて、しばらく焦点を合わさずに目の前の壁を眺める。

足もとから寒さを感じブルっと体を震わせた。大分室内の気温も下がっていたことに気づいた。

帰るか。

市営図書館から家までの道のりはただひたすら下り坂。

この時期に少しだけ有名となるイチョウ並木の歩道を歩きながら帰路につく。銀杏をうまく避けながら、さっきまで読んでいた本の内容を反芻した。

終始心拍数の上がらないストーリーだったのだが、文章が巧みだった。水のようにさらさらと心を流れつつ、氷のような鋭さが突然胸に刺さり、手が止まる。止まった点から、視線を上げて思考の世界を一周してきて、視線を戻し次の文章へ進む、そんな本だった。読後の達成感や、集中状態から解放された体の心地よさで、いつもの景色がちょっとドラマチックに見える。西日に照らされてイチョウが透ける。重なった葉の色が濃い黄金色を作り、モザイクのような煌びやかさを演出する。今日は良い日だった。ただ本を読んだだけの1日だったが。本を読むために、朝起きて顔を洗い、薄く化粧をして、髪を結った。お昼時には図書館の近くのカフェで、昼食を食べてコーヒーを飲んだ。そして再び図書館のいつもの窓の近くの席に戻って、物語の世界へ入って行く。本を読む外側も内側も完璧であった。こんな平穏な日常を私はこよなく愛している。

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