どこまでも一緒に行こうとする。この変態を恋愛という。
高校生のみやびは、一生懸命授業を受けていて、彼女の視線を受け止めてくれる英語教師にいつしか思慕を抱いていた。
東京の有名私立大学卒のこの青年教師は、いずれ試験を受けて県庁で教職員の人事課につく予定だったが、みやびは知るよしもなく、どうしたら高校卒業後にこの教師の近くにいられるかで頭を悩ませていた。
みやびは普通科の中の上くらいの成績で、ギリギリ地元の国立大学の教育学部に受かった。
英語教師は地方の辺境の地の高校に赴任したため、みやびは大学に通い出してからもちょくちょく列車に揺られてはるばる会いに行った。
これは恋かしら?でも、結婚して一緒に暮らす未来は全く予想できない。
もしかしたら、ただの師弟愛かもしれないと自分に言い聞かせているうちに、教師は別の女性と結婚してしまった。
田舎の駅のトイレでわんわん泣いていると、地元の高校生が「失恋でもしたんじゃないの?」と図星。余計に泣きたくなってしばらくどうしようもなかった。
これで良かったんだよ。そう自分に言っても心は千々に乱れた。
大好きな図書館の司書になりたい。学校図書館司書なら、県立高校に赴任できるだろうし、もしかしたら彼と同じ職場になる可能性がある。
みやびは司書の資格を取った。
しかし現実は甘くない。定員2名に40名の受験者がいた。
私は人見知りがひどいし、教師には向いていない。みやびはそう思い、教職には就かなかった。教員免許をびりびりに破いて捨ててしまった。
それから20年後。県庁に赴き、教員免許の代わりに証明書を発行してもらった。
彼にその時は会えなかったが、数年後、とある県立高校の校長になったと知った。年齢を重ねた笑顔の写真を見ることができて、みやびは感慨深かった。
もう会いに行かないだろうな・・・
そう思ったが、生きているうちにもう一度だけ会いたいという気もした。




