〜第2話〜 宝具とバルチヌス邸
いつもの時間に遅れてしまいましたが投稿できました!
「はぁー、はぁー、やった...殺した、私が人を」
そう呟きながら姉が倒れる。
その様子を見ていたサージュが近寄り抱きしめる。
「お姉ちゃん、安心して...大丈夫、仕方ないよ」
そう囁きながら姉を強く抱きしめる。
「うっ、うぅ...」
姉は今にも泣き出してしまいそうだが、妹の前ではと思って必死に我慢しているようだ。
なぜか知らないが少し離れたところでその光景を見ていた僕はどう見ても姉が妹にしか見えなくなってしまった。
そんな光景を片目で見つつ食料庫から取ってきた食材を料理し始める。
トントントントン、
包丁の音が静かな夜に響く。
「あー、妻がいた頃を思い出すわい...」
オールドンファー様がそう呟き、包丁を止める。
「もう少し静かに切った方がよろしかったでしょうか?」
そう、オールドンファー様を気遣って聞いて見ると、
「お主は...姉と妹程まではしなくても良いがもう少し気を抜いたらどうだ?そのまま息抜きをしないでおるといつか爆発するぞ?」
そのオールドンファー様の気遣いに僕は、
「いえ、大丈夫です、料理をすることが息抜きみたいなものですから」
そう答えた。
次の日の昼、やっと王都に着いた。
一様あの後はサージュがまた服を脱いだり、オールドンファー様がまた壁に頭をぶつけて鼻血を出したり、色々あったらしいが、その時はすでに僕は寝ていたので知らない。
そして、朝起きたらもう王都目前という訳だ。
「やっと着いたのぉ...」
「「「つかれたぁぁ!!」」」
また私達3人の声がハモる。
そのハモった声を聞いてオールドンファー様は微笑ましいものを見たと言ってにこにこ笑っている。
まぁ、確かに美少女三姉妹が3人仲良く言葉をハモらせてニコニコとしている光景を見たらそこらのチンピラもニコニコと笑ってしまうに違いない。
そんなことを考えていると、今乗っている馬車が貴族専用の入り口に到着する。
その入り口に立っている騎士にバルチヌス家の象徴とも言える《宝具》の、《蒼天の蒼玉》を騎士に見せる。
この世界の《宝具》と言うのは貴族が自分は貴族であると言う証明のために持つ道具、又は宝である。
種類も豊富で、バルチヌス家の様に宝石であったり、短剣であったり、杖であったりする。
そんなバルチヌス家の《宝具》《蒼天の蒼玉》を見た貴族はすぐにその《宝具》を返して門を開けた。
「バルチヌス様が帰っていらっしゃいました!!」
門を開け終わるとそう叫び、僕達が乗る馬車を通してくれた。
ここの門は、貴族専用の名前の通り貴族しか通ることはできないし、先ほど見せた様に《宝具》を見せなければならないが王都内で分かれている商業街、住宅街、貴族街、スラム街、王族区の貴族区にほぼ直接入る事ができるので殆どの貴族が此方の門を使っている。
ちなみに貴族区の中心に王族区があり、中心部に近ければ近いほど地位が高い貴族とされているため、ナンバー3のバルチヌス家を含めた御三家と呼ばれる一家は王族区のすぐ隣に屋敷を構えている。
ガラガラ...
今、貴族街を馬車で走っているわけだが、周りの目が凄い、幾ら御三家の中の最下位であるにしても第3位と言うのは本当らしく数々の貴族が一目見ようと大通りの脇に集まっている。
そしてオールドンファー様が一度手を振ると歓声が起こる程だ。
「アーフェ、やっぱり私達凄い人に使えるんだね...」
「本当、本当、でもやっぱり私達の中でアーフェお姉ちゃんが一番しっかりしてるからお願いするよ〜」
そうサージュが言うとミーシェが反応する。
「なんだとぉ〜?お姉ちゃんの方がしっかりしてるよぉ〜?」
そう語尾を伸ばしながら人差し指でサージュの脇腹を突っつく。
「や、やめて!くすぐったい!」
そう可愛らしくミーシェの手を払いのけ、ふんっ!と言ってそっぽを向いてしまう。
「ふふふっ!どーだ!参ったか!」
と、姉が言っているが喋り方は完璧に妹である。
そんなふざけた事をしていると、オールドンファー様が声をかけてくる。
「そろそろ着くから準備していなさい」
そう言われて外を見ると、先程まで見ていた低級貴族や中級貴族とは比べ物にならないほどの大きさのお屋敷が並んでいた。
「「「お〜!!」」」
3人で小窓を覗き合って声を上げる。
「凄いじゃろう?だがわしの家はこんな物じゃないぞ?」
「本当〜!?」
サージュが目を輝かせながらオールドンファー様を見つめる。
「お、おう...そうじゃよ」
動揺している様だ、まぁ、あそこまでの美少女(いやよく考えるの僕達は美幼女か?まぁいいや)に見つめられると動揺してしまうのは元男の僕ならわかる。
「ふっ、ふふ〜ん♪」
姉もテンションが上がっている様だ。
「ふふっ、」
おっと、僕まで姉に釣られて鼻歌を笑顔で歌い始めるところだった...やはり身体に精神が引っ張られている様だな。
そしてそう納得したあと直ぐにオールドンファー様を見てみるとなぜかこっちをガン見していた。
ま、まさか...見られた?
はずかしー...
ガチャン!
馬車の車輪にストッパーをかける音が響く。
「よし、我が家に着いたぞ」
そう言って扉を開けると、目の前には、物凄い大きさの豪邸があった。
「「「おぉー!!!」」」
サッカーコートぐらいありそうな庭、これまたサッカーコートぐらいの大きさありそうな豪邸、高さは大体5階建てのマンションぐらいの大きさだった。
「よ、予想外の大きさだ...」
ついそう呟いてしまった。
「デッケェ...」
そう姉は言葉を漏らし、
「みちゃくちゃ大っきい...」
サージュは...今の言葉の噛みかた、何処かで?
「では、入るぞ?」
そう言って僕達3人を連れ、お屋敷の中に入っていた。