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本当の王子様  作者: 宗像 来栖
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つまりは、個性

 わたし、高宮たかみやしおり。現在16歳のピチピチの女子高生。

 毎日、放課後は友達とショッピングや食べ歩きに明け暮れる至って普通の女の子。 

 学校でも休み時間になる度に女子と雑誌やスマホを囲んでは、最新の流行ファッションや新作のお菓子情報を探ったりと毎日大忙し!

 放課後は全力で遊び倒すために部活動には入っていない。しかし、青春は十分に謳歌していると言える。


 ある一つの問題を除いては・・・


「えッ!? さっちー、2組の城川くんに告白されたのッ!?!?」

「えっへっへ~ つい昨日!」

「うっそ!! やったじゃん! ずっとアピールしてたもんね!!」

「おめでと~! さっちー!!」

「お幸せにねぇ!!」

「ありがとう! これからラブラブお惚気トークするかもだけどよろしくね~!」


 とある放課後。いつもの仲良しグループとカラオケに来ていた時の事。

 フリータイムで入室し、毎度の如く各々が好き放題やりたい放題に歌声を披露してしばらく経った頃・・・

 一通り歌い終わったわたしたちは、一旦休憩と言わんばかりにマイクを置き、ドリンク片手に恋愛トークに花を咲かせていた。


 話題に上がったのは“さっちー”こと秋森あきもりさちの彼氏できました報告。

 高校に入学してすぐ、隣のクラスの城川くんに一目惚れしていたさっちーは、毎日地道に彼へのアピールを続けていた。それはわたしたちにとっても周知の事実。

 そして、さっちーの話によると、その努力が昨日、無事に実ったらしい。なんともおめでたいことだ。


 頬をポッと赤らめ幸せそうに笑うさっちーは女のわたしから見ても可愛らしいと思う。

 城川くんめ、絶対さっちーを幸せにしろよ!なんて思ってしまう。


 さて、いきなり話は変わるが、今回さっちーに彼氏ができたことにより、これでこのグループで彼氏がいないのは光栄なことに私だけになってしまった。わはははは。マジか。


 ズゾゾゾゾッ、なんて音を立てながらドリンクを飲み干しふと頭の片隅で笑う。

 実際問題、マジかとか言ってるけどそこまで焦りは感じていない。


 え?なんでかって?まぁ、隠すつもりもないから言っちゃうけど・・・


 わたし、高宮しおり、男に興味がありません。


 はい。こういうことです。

 みんなの恋愛トークを聞いたり、恋愛ドラマや漫画を見るのは普通に好きだ。

 けど、実際に自分が恋愛をするとなると話は別だ。ぶっちゃけめんどくさい。


 過去に男にひどい目にあわされた、とか、こっ酷くフラれた、とかそういうことは一切ない。

 ただ単純に、別に彼氏がいなくても毎日楽しいし必要なくない?という状態なのである。

 あと、わたしをドキドキさせるような男が身近にいない。という高飛車発言。


 まぁ、そんなこんなで今まで男に見向きもしなかったわたしだが、周りの友達が次々と彼氏をゲットする状況の中で一人ポツンと一人身を続けているわけである。

 さっきも言ったと思うが、別に焦りはない。もちろん、羨ましいとも思わない。ただ問題なのは・・・


「で? しおりはどうなの?」


 ほいきた!これだ!


「え? どうって?」

「またまたとぼけちゃって~」

「気になる男子はいないのかって話に決まってるでしょ!」

「しおりってばすぐにはぐらかすんだからー!」


 彼氏がいなくて問題なのはこれだ・・・私に対する恋愛トーク!

 まさか、キャピキャピと楽しそうに話しに花を咲かせているみんなに向かって「え? 男とか興味ないし~」なんてふざけた発言をできるはずもなく、わたしは毎度のこと“今は気になる人はいない”と周りをごまかしてきた。

 そんなごまかしもそろそろキツそうなのが現状なのだが・・・


「しおりは一ヶ月前は気になる人はいないって言ってたけど・・・今はどうなの?」

「そろそろいいな~って思うくらいの人はできた?」

「え?あ、う、う~ん・・・」

「まさか・・・」

「いまだにいないの!? 一人も!?」

「あはは・・・」


 とっくに空になったグラスを握りしめながらなんとか話を受け流す。

 みんなは驚愕した目でこっちを見てたけど・・・だって本当のことだし・・・


 キョロキョロと目線を動かしながら時間が過ぎるのを待つ。

 さっさと私から話題を移してくれぇ~


「ま、人を好きになるって本能的な部分だし」

「無理に彼氏とか作っても傷つくのは自分だしね」

「そう焦らなくてもいいと思うよ、しおり」

「!」


 驚いた!意外にもみんな大人だった!!(失礼)


 若干“話が聞けなくて残念だ”みたいな空気を醸し出しながらもみんなはそれぞれ仕方ない、と納得してくれたみたいで・・・

 早々と話が別の事に移ってわたしは人知れずホッと息を吐いた。


「あ、わたしドリンクおかわり行ってくる!」

「私もいくー!」

「じゃあついでに私のオレンジジュースもお願い!」

「おっけ! さっちーは?」

「あ、じゃあメロンソーダお願いしていい?」

「任せて! 戻ったら第二ラウンド始めるからねー!!」


 再びキャッキャッと盛り上がるルーム内。

 色々不安なことはあるけど、今はこの青春を名一杯楽しもう!

 考えるのは後でもいいでしょー


 なんて、呑気なわたしは鼻歌交じりに廊下を歩きだした。


 恋愛は学生の醍醐味、みたいなこのご時世・・・

 果たして、わたしは一体いつまで一人身を貫いていけるのだろうか・・・

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