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第84話 これはよきもの

ブックマーク180件突破しました!!

(剥がれて減ってるかも知れませんがこの更新の時点では180件です)

もう喜びに踊りだしそうでたまりません! ブクマありがとうございます!

ツイッターの宣伝を見ていらしてくださったのでしょうか? 掲示板でしょうか? FGOのプロフィール文からでしょうか? とにかくありがとうございます!


このまま目指すぞ200件!!


※大切なお知らせ

現在、あらすじと、冒頭1話~6話の書き直しを検討しています。

第84話 これはよきもの


 慶屋。カタカナ表記でヨロコビヤとも。


 東京都武蔵村山市に本社を置く、国内では中堅の玩具メーカー。


 現在の主力商品はオリジナルのプラモデル。モノコックウェポンズとモノコックウェポンズ・フラウ、そしてアテナオブジェクト。


 ヨロコビヤではちょっと長いので、コアなファンはヨロコビヤを縮めて『()()()』と呼ぶ。


「秋葉原の()()()ショップで予約して買うと、おまけのタンポ無し顔パーツがついてくるよ」

 なんて言うとちょっと通な感じだ。


 慶屋のソーシャルメディアの宣伝担当も、コビ屋を自称している。


「そのアームをつけてるからやはりと思ったが、()()()のモノコックウェポンズ・フラウだな」


 意外な反応だった。


 この世界で()()()って単語を聞こうとは。


 この爺さん日本人だよな。……ムトーさんと同じように来たタイプか?


 だが、だからと言って気を許さないぞ。


「だから俺のマテリアルを勝手に触るな! いじるな! すぐ離せ!」


「これは失敬をした」


 爺さんは刀を地面に刺した。


 そして、マテリアルをつかんだ手を広げ、両手にマテリアルを乗せて俺のほうに差し出してくる。


 すぐさま俺は、マテリアルをジャンプさせて、俺の手に呼び戻す。


「平伏いたす」


 平伏いたすってなんだ。武士かよ。 


「貴殿のそのフラウ、貴殿の『作品』、今一度わしに見せていただけまいか?」


 作品ときたか。


「お頼み申す」


 頭を下げてくるおじいちゃん。


「……」


「平に」


「……。……直接は触らせないぞ?」


「ありがたい」


 ……油断させて刀で斬りつけてくる感じじゃないよな。


 俺は爺さんに近づく。


 立ち話できるような距離まで。


 そこで、マテリアルの羽織った雑巾、もといローブをちらりと剥がして中身を見せてやる。


「遠い、もっと近こうよっていいか?」


 断る前にずずいと寄って来る爺さん。


 しょうがない。


 俺は爺さんのほぼ横に立った。マテリアルを爺さんに見やすいようにポーズをつけていじくる。


「ほう」


 ポーズを変える。


「ほうほう」


 ポーズを変える。ちょっとローブをはがす。


「これはよきもの」


 ポーズを変える。……ローブはいったん脱がせちゃっていいかな。俺と爺さんの背中に隠れて見えないだろ。


「おお!」


 全身が明らかになったマテリアルを見て、爺さんが感嘆の声を上げた。


「この(中略)のライン、実に素晴らしい。パテであろう? なのに重みを感じる造形だわい」


「わかるか?」


 そこは一番苦労したんだ。『監修』に通すのに苦労した。


「この顔つきも良いな。凛として、居丈高で自信に溢れ、騎士道精神に溢れる」


「ああ」


「……実に心を折りたくなる!」


「……!」


 こいつ! いやこのおじいちゃん! そこまでこのマテリアルに込めた俺の心情を、感情を、熱意を! 理解するとは!! 理解してくれるとは!


「なんというか、このフラウ。……『くっころ』がよく似合うのぅ」


「わかるか?!」


「応とも!」


「わかるか……わかってくれるか! ……俺はこのフラウで『くっころ』を出したかったんだよ!」


 ※注釈。くっころ。「くっ、ころせ!」の略語。プライドの高い女騎士がゴブリンや触手モンスター、盗賊団なんかに捕まったときに放つキメ台詞だ。


 俺が立ち話も疲れてきたので、ちょっと屈伸しようかなと身をかがめると、爺さんはドカッと胡坐をかいた。


 ……仕方ないそのまま話すか。


「このフラウ、そこはかとなく『鎧袖戦女』のオーラバイトへのりすぺくとを感じるのう。オーラバイトがそのまま8年くらい歳を重ねてムチムチになった感じ」


 オーラバイトは女騎士型の鎧袖戦女だ……確かにおれはそれを念頭に置いた。


 だが待て……。


「鎧袖戦女まで知ってるのか!?」


「かかか。鎧袖戦女は全種持っておるわ。ふるこんぷじゃ!」


「全種フルコンプだと!? まさか、アメフェス限定のオーラバイト・ディルーナはまさか持ってないだろ……」


「持っておるよ」


「なんと」


 俺ですら持ってないのにッ!!


「無論アメフェス先行販売限定ポストカード付きでな!」


 にやりとわらうおじいちゃん。


 こいつ! 許せん!

 俺、ディーラー参加して買えなかったのに! 島田ミカ書き下ろしの水着ディルーナポストカードが欲しかったのに!


 オーラバイト・ディルーナは、鎧袖戦女wave3のフラグシップモデル、オーラバイトの別カラー限定版だ。

 通常版のオーラバイトは金髪に白い肌、青い目なのだが、ディルーナは銀髪に褐色の肌、翡翠の瞳をしている。


 ちなみに、俺の疾風はそのディルーナをリスペクトというか、超リスペクトしてカラーリングした。


 ディルーナが手に入らないからそれが欲しくて作ったわけじゃないぞ……。


「ディルーナいいよね……」

「……いい」


 俺は島田ミカの大ファンだが、彼女がデザインしたキャラの中で一番好きかもしれない。


「島田ミカいいよね……」

「……いい」


「浅間紀伊さんは最高だよね……」


「……ああ。ときに、……鎧袖戦女といえば権利がサニムからコビ屋に移ったと聞くが、その後どうなのだ?」


「……それは!」


「その後音沙汰が無い様だが」


「それはだな……」


 その話題。俺は話をしたくない……。


「しょ、……しょうがない、ちょっとだけなら触っていいぞ」


「まことか? かたじけない」


 俺はマテリアルをおじいちゃんに手渡した。


 大事そうに、丁寧に受け取ってくれるおじいちゃん。


「拝借する。……ううむ、よきものよ!」


 ポーズをつけてマテリアルを楽しむおじいちゃん。


「アーマーパーツ付けてみるか?」


「いいのか?」


「ちょっと待ってろよ……」


 カバンの中からアーマーパーツを取り出した。


 マテリアルを再び受け取り、それを装着させる。


 パテとプラ板によるフルスクラッチなのでメカニカルでボリュームのあるアーマーは作れなかったが、逆に手原型による曲線の強みを生かせるモチーフを選んだ。中世の騎士の鎧だ。

 そしてマテリアルの体に密着させ、カチッとはまるよう最大限の工夫をした。


 動かしながら外れることはまずないだろうと思うが。


 イメージは女の聖騎士パラディン


 どうだおじいちゃん?


「やりおるな……お主」


 唸るおじいちゃん。 


 女パラディンとなったマテリアルを捧げもち、いろいろな角度から楽しむおじいちゃん。


「この全身から漂う『くっころ』感。実にいいのぅ。まさにオーク軍団に捕まえられて「さぁ! 好きにしろ!」ってかんじじゃ」


 この人、分かりすぎていてなんか嫌だ……。マニア同士の同属嫌悪が若干芽生え始めそう。


「ダメージ版の鎧はないのか? 胸アーマーが破壊されて『ぽろり』をした」


「当然ある!」


「だよのう!」


「……が、今日は持ってきてない、というか仕上げがまだなんだ」


「うわあ、残念じゃ。見たかったぁ!」


「まぁ機会があればね」


「写真もよろしいか?」


「いいよ」


 ダブルのスーツからスマホを取り出すおじいちゃん。


 異世界じゃ電波通じないけど、カメラとして使ってるのね。


「……」


「……」


 おじいちゃんは、マテリアルをしげしげと見つめる。


「……」


「……」


「欲しいのう…」


 と言った。


「駄目だ! これは絶対に駄目だ!」 


 超全力でさえぎる俺!

 

 おじいちゃんの手に持たせたマテリアルを動かして回収する。


「すまんな。つい」


 アーマーパーツを取り外してしまおう。そろそろ品評会はお開きだ。


「……」


「わかっておる。わかっておるよ。それが貴殿にとっていかに大事なものかということくらい」


「……」


「わしは昔、大殿……いや、『上司』に逆らったことがあっての」


 上司に逆らうか。


 俺もサラリーマン。納得のいかない上司の指示っていうのはある。


「まぁ、気持ちはわかるよ……」


「あれは『幾たびめ』かの謀反であったか」


「何度もやってるのそれ!?」


「その手打ちとして、わしのこれくしょんの中で一番大事にしていた『宝』をよこせといわれたことがある」


「えー、その上司そんなこと言ったんだ」


 職権乱用すぎるだろ。


「だがわしはどうしてもそれがいやでな。手放すくらいならばと、これくしょんごと自爆してやったわ!」


 なんだよそれ。 


 冗談だったのか。


「最後にかぶいたものよのう、わし。傾奇者」


 前田慶次かよ!


「わしは自分の大事なものを欲しがられる煙たさと、奪われる心苦しさを誰よりもわかっておるつもりじゃ」


「なら何で俺のマテリアルを欲しがったんだ?」


「それでも欲しくなった。欲しいという気持ちを打ち明けられずにおられなかった。それほどそのフラウはよきものじゃ。そう言いたかった」


「ありがとう、おじ……(おじいちゃんや爺さんだと失礼だから)、お兄さん!」


「……むう」


「最高の褒め言葉だ!」


「わかってくれたか、すまんな。平伏いたす」


「いいよもう」


 だから平伏いたすって何だよ。武士かよ。戦国生まれかよ!


「さて満足した。そろそろわしはいとまとしよう!」


 すっくと立ち上がるおじいちゃん。


「いでよ、平蜘蛛」


『ショワアア!!』


 おじいちゃんの掛け声に呼ばれて、一匹の大蜘蛛が現れた。


 超でかい蜘蛛だ!


 胴体が軽トラックくらいの大きさがある!


 おじいちゃんは、その蜘蛛の頭に乗った。


「また会おうかお若いの!」


「俺はカラスマ、原型師だ」


「カラスマ、原型師?」


「そうだ原型師だ。そういう職業があるの知ってるよな?」


「無論。どうりでそのフラウ、出来が良いはず。しかし、……そうか原型師! 原型師か!! 原型師じゃな!!」


 おじいちゃんは白いあごひげを触った。何かを思いついたようなそぶりだ。


「わしはラヴァーズと申す!」


「ラヴァーズさんか。確かにおもちゃ愛に溢れてるな!」


「おうよ! わしこそ当代一の数寄者よ」


 大蜘蛛は8本の足を屈伸させ、力を込める。


「さらば!」


 そのまま天高くジャンプし、彼方へと跳び消えた。


 ……。


 ……。


『なんだったんでしょう、あの人』

 とチャペル。


 あ、そういえば居たね君。


「わからない、けどわかる!」


『えっ?』


「あれは同志だ!』


『は?』


「俺と魂を同じくするものだ!」


『は、はあ……?』

 

 チャペルはぽりぽりと、頬を掻いた。

 拙作はいかがだったでしょうか?

 続きは頑張って書きたいのですが、書く力を得続けるには、ポイントの力が必要です!!!


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 またブックマークがつくことが何より嬉しいです!! 


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