第84話 これはよきもの
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このまま目指すぞ200件!!
※大切なお知らせ
現在、あらすじと、冒頭1話~6話の書き直しを検討しています。
第84話 これはよきもの
慶屋。カタカナ表記でヨロコビヤとも。
東京都武蔵村山市に本社を置く、国内では中堅の玩具メーカー。
現在の主力商品はオリジナルのプラモデル。モノコックウェポンズとモノコックウェポンズ・フラウ、そしてアテナオブジェクト。
ヨロコビヤではちょっと長いので、コアなファンはヨロコビヤを縮めて『コビ屋』と呼ぶ。
「秋葉原のコビ屋ショップで予約して買うと、おまけのタンポ無し顔パーツがついてくるよ」
なんて言うとちょっと通な感じだ。
慶屋のソーシャルメディアの宣伝担当も、コビ屋を自称している。
「そのアームをつけてるからやはりと思ったが、コビ屋のモノコックウェポンズ・フラウだな」
意外な反応だった。
この世界でコビ屋って単語を聞こうとは。
この爺さん日本人だよな。……ムトーさんと同じように来たタイプか?
だが、だからと言って気を許さないぞ。
「だから俺のマテリアルを勝手に触るな! いじるな! すぐ離せ!」
「これは失敬をした」
爺さんは刀を地面に刺した。
そして、マテリアルをつかんだ手を広げ、両手にマテリアルを乗せて俺のほうに差し出してくる。
すぐさま俺は、マテリアルをジャンプさせて、俺の手に呼び戻す。
「平伏いたす」
平伏いたすってなんだ。武士かよ。
「貴殿のそのフラウ、貴殿の『作品』、今一度わしに見せていただけまいか?」
作品ときたか。
「お頼み申す」
頭を下げてくるおじいちゃん。
「……」
「平に」
「……。……直接は触らせないぞ?」
「ありがたい」
……油断させて刀で斬りつけてくる感じじゃないよな。
俺は爺さんに近づく。
立ち話できるような距離まで。
そこで、マテリアルの羽織った雑巾、もといローブをちらりと剥がして中身を見せてやる。
「遠い、もっと近こうよっていいか?」
断る前にずずいと寄って来る爺さん。
しょうがない。
俺は爺さんのほぼ横に立った。マテリアルを爺さんに見やすいようにポーズをつけていじくる。
「ほう」
ポーズを変える。
「ほうほう」
ポーズを変える。ちょっとローブをはがす。
「これはよきもの」
ポーズを変える。……ローブはいったん脱がせちゃっていいかな。俺と爺さんの背中に隠れて見えないだろ。
「おお!」
全身が明らかになったマテリアルを見て、爺さんが感嘆の声を上げた。
「この(中略)のライン、実に素晴らしい。パテであろう? なのに重みを感じる造形だわい」
「わかるか?」
そこは一番苦労したんだ。『監修』に通すのに苦労した。
「この顔つきも良いな。凛として、居丈高で自信に溢れ、騎士道精神に溢れる」
「ああ」
「……実に心を折りたくなる!」
「……!」
こいつ! いやこのおじいちゃん! そこまでこのマテリアルに込めた俺の心情を、感情を、熱意を! 理解するとは!! 理解してくれるとは!
「なんというか、このフラウ。……『くっころ』がよく似合うのぅ」
「わかるか?!」
「応とも!」
「わかるか……わかってくれるか! ……俺はこのフラウで『くっころ』を出したかったんだよ!」
※注釈。くっころ。「くっ、ころせ!」の略語。プライドの高い女騎士がゴブリンや触手モンスター、盗賊団なんかに捕まったときに放つキメ台詞だ。
俺が立ち話も疲れてきたので、ちょっと屈伸しようかなと身をかがめると、爺さんはドカッと胡坐をかいた。
……仕方ないそのまま話すか。
「このフラウ、そこはかとなく『鎧袖戦女』のオーラバイトへのりすぺくとを感じるのう。オーラバイトがそのまま8年くらい歳を重ねてムチムチになった感じ」
オーラバイトは女騎士型の鎧袖戦女だ……確かにおれはそれを念頭に置いた。
だが待て……。
「鎧袖戦女まで知ってるのか!?」
「かかか。鎧袖戦女は全種持っておるわ。ふるこんぷじゃ!」
「全種フルコンプだと!? まさか、アメフェス限定のオーラバイト・ディルーナはまさか持ってないだろ……」
「持っておるよ」
「なんと」
俺ですら持ってないのにッ!!
「無論アメフェス先行販売限定ポストカード付きでな!」
にやりとわらうおじいちゃん。
こいつ! 許せん!
俺、ディーラー参加して買えなかったのに! 島田ミカ書き下ろしの水着ディルーナポストカードが欲しかったのに!
オーラバイト・ディルーナは、鎧袖戦女wave3のフラグシップモデル、オーラバイトの別カラー限定版だ。
通常版のオーラバイトは金髪に白い肌、青い目なのだが、ディルーナは銀髪に褐色の肌、翡翠の瞳をしている。
ちなみに、俺の疾風はそのディルーナをリスペクトというか、超リスペクトしてカラーリングした。
ディルーナが手に入らないからそれが欲しくて作ったわけじゃないぞ……。
「ディルーナいいよね……」
「……いい」
俺は島田ミカの大ファンだが、彼女がデザインしたキャラの中で一番好きかもしれない。
「島田ミカいいよね……」
「……いい」
「浅間紀伊さんは最高だよね……」
「……ああ。ときに、……鎧袖戦女といえば権利がサニムからコビ屋に移ったと聞くが、その後どうなのだ?」
「……それは!」
「その後音沙汰が無い様だが」
「それはだな……」
その話題。俺は話をしたくない……。
「しょ、……しょうがない、ちょっとだけなら触っていいぞ」
「まことか? かたじけない」
俺はマテリアルをおじいちゃんに手渡した。
大事そうに、丁寧に受け取ってくれるおじいちゃん。
「拝借する。……ううむ、よきものよ!」
ポーズをつけてマテリアルを楽しむおじいちゃん。
「アーマーパーツ付けてみるか?」
「いいのか?」
「ちょっと待ってろよ……」
カバンの中からアーマーパーツを取り出した。
マテリアルを再び受け取り、それを装着させる。
パテとプラ板によるフルスクラッチなのでメカニカルでボリュームのあるアーマーは作れなかったが、逆に手原型による曲線の強みを生かせるモチーフを選んだ。中世の騎士の鎧だ。
そしてマテリアルの体に密着させ、カチッとはまるよう最大限の工夫をした。
動かしながら外れることはまずないだろうと思うが。
イメージは女の聖騎士!
どうだおじいちゃん?
「やりおるな……お主」
唸るおじいちゃん。
女パラディンとなったマテリアルを捧げもち、いろいろな角度から楽しむおじいちゃん。
「この全身から漂う『くっころ』感。実にいいのぅ。まさにオーク軍団に捕まえられて「さぁ! 好きにしろ!」ってかんじじゃ」
この人、分かりすぎていてなんか嫌だ……。マニア同士の同属嫌悪が若干芽生え始めそう。
「ダメージ版の鎧はないのか? 胸アーマーが破壊されて『ぽろり』をした」
「当然ある!」
「だよのう!」
「……が、今日は持ってきてない、というか仕上げがまだなんだ」
「うわあ、残念じゃ。見たかったぁ!」
「まぁ機会があればね」
「写真もよろしいか?」
「いいよ」
ダブルのスーツからスマホを取り出すおじいちゃん。
異世界じゃ電波通じないけど、カメラとして使ってるのね。
「……」
「……」
おじいちゃんは、マテリアルをしげしげと見つめる。
「……」
「……」
「欲しいのう…」
と言った。
「駄目だ! これは絶対に駄目だ!」
超全力でさえぎる俺!
おじいちゃんの手に持たせたマテリアルを動かして回収する。
「すまんな。つい」
アーマーパーツを取り外してしまおう。そろそろ品評会はお開きだ。
「……」
「わかっておる。わかっておるよ。それが貴殿にとっていかに大事なものかということくらい」
「……」
「わしは昔、大殿……いや、『上司』に逆らったことがあっての」
上司に逆らうか。
俺もサラリーマン。納得のいかない上司の指示っていうのはある。
「まぁ、気持ちはわかるよ……」
「あれは『幾たびめ』かの謀反であったか」
「何度もやってるのそれ!?」
「その手打ちとして、わしのこれくしょんの中で一番大事にしていた『宝』をよこせといわれたことがある」
「えー、その上司そんなこと言ったんだ」
職権乱用すぎるだろ。
「だがわしはどうしてもそれがいやでな。手放すくらいならばと、これくしょんごと自爆してやったわ!」
なんだよそれ。
冗談だったのか。
「最後に傾いたものよのう、わし。傾奇者」
前田慶次かよ!
「わしは自分の大事なものを欲しがられる煙たさと、奪われる心苦しさを誰よりもわかっておるつもりじゃ」
「なら何で俺のマテリアルを欲しがったんだ?」
「それでも欲しくなった。欲しいという気持ちを打ち明けられずにおられなかった。それほどそのフラウはよきものじゃ。そう言いたかった」
「ありがとう、おじ……(おじいちゃんや爺さんだと失礼だから)、お兄さん!」
「……むう」
「最高の褒め言葉だ!」
「わかってくれたか、すまんな。平伏いたす」
「いいよもう」
だから平伏いたすって何だよ。武士かよ。戦国生まれかよ!
「さて満足した。そろそろわしは暇としよう!」
すっくと立ち上がるおじいちゃん。
「いでよ、平蜘蛛」
『ショワアア!!』
おじいちゃんの掛け声に呼ばれて、一匹の大蜘蛛が現れた。
超でかい蜘蛛だ!
胴体が軽トラックくらいの大きさがある!
おじいちゃんは、その蜘蛛の頭に乗った。
「また会おうかお若いの!」
「俺はカラスマ、原型師だ」
「カラスマ、原型師?」
「そうだ原型師だ。そういう職業があるの知ってるよな?」
「無論。どうりでそのフラウ、出来が良いはず。しかし、……そうか原型師! 原型師か!! 原型師じゃな!!」
おじいちゃんは白いあごひげを触った。何かを思いついたようなそぶりだ。
「わしはラヴァーズと申す!」
「ラヴァーズさんか。確かにおもちゃ愛に溢れてるな!」
「おうよ! わしこそ当代一の数寄者よ」
大蜘蛛は8本の足を屈伸させ、力を込める。
「さらば!」
そのまま天高くジャンプし、彼方へと跳び消えた。
……。
……。
『なんだったんでしょう、あの人』
とチャペル。
あ、そういえば居たね君。
「わからない、けどわかる!」
『えっ?』
「あれは同志だ!』
『は?』
「俺と魂を同じくするものだ!」
『は、はあ……?』
チャペルはぽりぽりと、頬を掻いた。
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