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第56話 10分

「そこでだ、アンタをファイターとしてスカウトしたい!

 ここのリングマスターになる気はないか?」


「「すごい!」」

 俺が反応する前に、シズルとマズルが歓声をあげる。


「やったね、カラスマ! アンタ就職おめでとう」

「プー太郎卒業よ!」


 まるで我がことのように喜ぶシズルとマズル。


「「契約おめでとうカラスマ」」


「いや、断る」


「「なんでよ!!」」


「もう疲れた。それにもう十分稼いだし」


 もうバトルは勘弁して欲しい。リングマスターってあのリングに上がってチャレンジャーの挑戦を受けるやつだろう?

 これ以上戦い続けるのはくたくただよ。


 それに俺はこれから用事があるんだ。


「カラスマ、次は30秒。いいえ、1分よ。リングマスターになるなら次は1分いいわよ」

 シズルが言った。


「そんな……」

 マズルが青ざめる。

 

「姉さん、本気なの、アレを1分ですって……!?」


「ええ、いいわ1分よ」


 1分か。悪くない……心が揺らぐ。


 だが俺は今になって気がついていた。


 今までこいつらにあまりにも良い様にこき使われすぎている。俺だって労働に見合った対価を要求できるはずだ。


「10分だ!」


「「なっ……」」


「10分なら俺は『考えてもいい』」


「10分……」

「そ、そんな……」


 シズルとマズルの顔がみるみる青ざめてゆく。


 俺はようやく気がついていた。


 確かに、知り合った女の子の(中略)を1分揉むのはなかなかプレシャスな体験だ。


 だが1分というのはあまりにも短すぎる。せめて10分くらい要求してもバチは当たらないだろう。


「カラスマ、あなた人間の心はあるの?」

「そ、そうよ、こんないたいけな女の子を、……10分だなんて」


「10分だ。『出来ないなら、俺はこの話を降りる』」


「10分……、10分ね、10分……いいわカラスマ! 10分いいわよ!」


「ね、姉さんッ!!」


「10分よ、10分きりよカラスマ! いいわね?」


(中略)


「ふえあぁぁ……ッ」


 シズルが太ももをがくがくと震わせたのち、全身を痙攣させて倒れた。


 びくんッ、びくんびくん。


「姉さん!」


「うっ……ううう」


「姉さん、しっかり、しっかりして!」


「どうしたシズル? まだ5分しか経っていないぞ?」


「あ……ああ、あああ……」


「カラスマアンタ、なんてことを……」

 マズルが俺をにらみつけた。


「約束は約束だ、俺はお前たちのために危険なバトルをこなしてきたんだ。お前たちをどんだけ稼がせたかもだいたいわかっている。

 この位の対価は安いものだろう? 合計10分、のこり5分きっかり楽しませてもらうぞ」


 肩で息をしながらシズルが立ち上がろうとする。


「……いいわ、マズル。私は平気よ……、

 (いいマズル? こいつをリングマスターにしてがっぽりファイトマネーを稼がせるのよ。そのためならこのくらい耐えられる……)」


「見上げた根性だシズル、さぁ続きと行こうか。これからは俺も本気を出す……」


「な……なんですって……!?」


「気がつかなかったか? 今までで俺は人差し指と親指しか使ってこなかった。

 この10分間という時間を最大限に楽しむために、あえて自分に制限をかけていたんだ……」


「そんな……」


「そしてこれからは俺はこの10本の指をフルに使う! さぁ、シズルよ! いくぞッ! 覚悟し……」


「う、うあああああ……」


 俺の言葉を聞いたシズルが、そのまま動かなくなった。


「ね、姉さん、姉さんッ。そんな、立ったまま気絶してる……」


「丁度いい。意識は無くとも乳はある」


「こ、この外道ッ!!」


「ふははははは、何とでも言うが良い……それともマズルよ? お前が身代わりになってもいいんだぞ……」


「そ、それは……」


「さあそこをどけマズル」


「い、いいわ、私が姉さんの代わりになる。それでいいんでしょう?」


 美しい姉妹愛だった。


(中略)


「ふえあぁぁ……ッ」


 シズルが太ももをがくがくと震わせたのち、全身を痙攣させて倒れた。


 びくんッ、びくんびくん。


「う、ううう、ごめんなさい、ごめんなさいマズル……」

「……いいえ、……いいのよ、シズル。(これからもこいつにがっぽりファイトマネーを稼がせられるんなら、このくらい)」


「ああ、ご苦労だったお前たち、これでお前たちとの契約は解消だ」


「「なんですって!!」」

 拙作はいかがだったでしょうか?

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