第5話 バトルアリーナ第2試合 ドラゴンを(コーラで社会的に)スレイヤーする。
第2試合
「おいジャッジ! 挑戦者が居ないぞ!?」
『もう、今来るところだ。ああ見えた。ほらアレ、あそこ!』
ジャッジが上空を指す。
遠くに、何かのシルエットが見えた。鳥か? それにしては妙に大きい。
シルエットがだんだん近づいてくる。
「おいあれって!」
トカゲのような4本脚に、巨大なコウモリのような羽根、長い首に4本のツノ、巨大な口には立派なキバと、長い尻尾。
『我はリッタードラゴンのウインガル=ツインガル。チャンピオンカラスマ殿、是非挑戦をお受け願いたい!』
『挑戦者! リッタードラゴン、ウインガル=ツインガル殿! 霞の谷のドラゴンの騎士階級のおでましだー!』
巨体のドラゴンは、空中からアリーナへと着地した。
ずしーん。
地響きが鳴り、観客席がざわめいている。
「闘技場が半分埋まったじゃないかどうすんだよあれ」
控えのゴーレムマスター達もさすがに慌てているようだ。
俺だってちょっと、いや正直かなり怖い。
「こりゃ、あのセクハラ野郎でもさすがに勝てないんじゃねぇっぺか?」
今セクハラ関係あるか?
「嬉しいズラ、この目であいつが(中略)ぬ日が見られる何てズラ!」
あの女マスター、ちょっと観客の前でパンツ斬ったくらいでいつまでも根にもって……試合中の事故だったって何度も謝ってるのに……。
とはいえドラゴン相手だ。こっちもかなり危ない。念のため、普段はつけないミスリルの盾を装備する……そしてお供は疾風を下げて砲兵のコルデを使うことにした。
<コルデにお任せなの!>
コルデもまた戦闘用のアーマーを装備していた。ミセリコルデは、第二次大戦中の戦車をモチーフにしたアーマーを装着する砲兵タイプだ。
コルデには砲撃タイプのカスタムパーツを外付けでゴテゴテと取り付けてある。
『オッズが出たぞー、7倍対3倍でウィンガル殿だー!』
「ガーネット、メイド長! 俺の賭け札、有り金全部で買っとけ!」
『ずいぶんと余裕ではないか』
「なぁにマトは大きなほうが当たりやすいもんさ」
『ッ! 我をマトと愚弄するか!』
銅鑼が鳴った。
『試合開始だー』
しゅぅぅぅぅぅ……ごぉぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!!!!!!!!!!!!!!!
『おおーっと! これは凄まじい!! 開幕瞬殺のドラゴンブレスだーー!! すさまじい灼熱の炎がアリーナ一面を覆っております!』
「きゃあああああああーっズラーッ」
「ぎゃああああ熱いッ熱いっぺー」
『炎が控室まで回り込んだようだ。これは控えの選手もたまらない! ちなみに観客席は、魔法障壁で完全防御されております。皆さま御安心の上、試合をお楽しみください』
しゅぉぉぉぉぉぉぉ……。
『おっとー、ドラゴンブレスの大掃射が終わったーっ! これはひどい、アリーナ一面が火の海で、丸こげだ! 何も残っていないぞーッ! もちろん我らがチャンピオンカラスマとそのゴウレムの姿もないーッ』
『フン、あっけないものよ』
とドラゴンがほくそえむのが見えた。
「無茶苦茶な奴だったが、男として共感できる部分はたくさんあったっぺ。惜しい奴を亡くしたっぺ」
「……感動で涙が止まらないズラ……パンツ切ったこと、最後に許してやってもよかったズラ」
聞えてるぞ、勝手に殺すんじゃないよ……。
俺は地面の下に掘ったトンネルから外の様子を見る。
<ぐえええー、死ぬかとおもったの!>
「だからドリルミサイルつけといてよかったろ……」
ドラゴンはまだ俺達に気づいていない。こんだけブレスの硝煙が残ってりゃあたりまえだ。
俺とコルデはトンネルを旨い具合に掘り進めたようで、丁度ドラゴンのしっぽの付け根あたりに居た。
真上にはドラゴンのケツの穴が見えた。
「よし、あのしっぽの付け根のケツの穴を狙え!」
こそこそ指示する俺。
<ラジャーなの>
こそこそ敬礼で応えるコルデ。
<照準セット! 砲撃準備よろしなの!>
「ぅてえー!」
<ファイヤーなのッ!>
ドリルミサイルの弾頭が、コルデの砲から発射される。
それはドラゴンの穴を正確にとらえると、穴の入口に先端がズボッと刺さった。
『うおおおケレル?!』
突然デリケートな部分に衝撃を受けて、びくッんとなるドラゴン。
「入ったか?」
<入ったなの!!>
「弾頭回転!」
<フルスピンなの!>
ドリルミサイルの弾頭が回転を始め、弾頭が穴の奥めがけて潜り込んでゆく。
『うおおおおおお、おああああああああああああーッ?? ……んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!?』
ドラゴンが、感じたことのない感覚にのたうち回る。そりゃドラゴンだもの座薬とか使ったことないだろな。
「今だ! 作戦第2フェイズ!!」
<ラジャーなの!!>
コルデが、コーラのボトルを構える。
「そーれっ!」
コルデをレシーブの要領で、ドラゴンの穴めがけて投げ飛ばした。
ポーンと飛んでいくコルデ。
<おりゃあああああなのーッ!!>
コーラを頭の上にかかえたコルデは、空中で砲弾を発射して軌道を修正し、ドラゴンの穴に加速を付けて突っ込む。
<とうッなのーッ!>
キャップを爆破されたコーラボトルの先端が、ドラゴンの穴に突き刺さる。ドリルミサイルであらかじめ拡張されていたため、今度はずっぽりと入った。
<慈悲の一撃キィィィィィッーク!>
同時に放たれた回し蹴りがボトルの底面に激しくぶち当たり、コーラボトルを穴の中へと思い切り押し込んだ。
『んほおッ!! ん゛ん゛う゛ぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!!』
さて、すこし前のムーブメントになるが、日本ではある動画が流行った。コーラにアメリカの清涼お菓子である(中略)を入れると、その2つが科学反応を起こして激しく中身が膨張し噴出するのだ。
お菓子の名前にコーラを足して、(中略)コーラという言葉が根付くくらいには流行した。
試合に話を戻そう。コルデがドラゴンの穴にぶちこんだドリルミサイルの弾頭であるが、その中にはとあるアメリカの清涼お菓子を仕込んでおいた。
そう(中略)である。
ミサイルに乗って直腸から腹の中へ運ばれた(中略)は、いま同じくぶち込まれたコーラの炭酸と交りあい、内部で激しい化学反応を起こしたはずだ。
『ごああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
どったんばったん、七転八倒するドラゴン。
地震の様な地響きで観客席がぐらぐら揺れる。
俺もうっかり下敷きにならないようにトンネルに身を隠す。
さっき偶然通りの店で見つけて買っておいた異界産のコーラと菓子だった。屋敷に帰ったらガーネットに飲ませて楽しもうと思っていたが、こんな所で役に立つなんてわからないものだ。
勝った。
<ファイヤーなの!>
着地したコルデが装備した砲弾をのたうち回るドラゴンに浴びせる。だがドラゴンのウロコは噂どおりに堅く、まったく傷がつかない。
<こしゃくなのー! パパとコルデを丸焼きにしようとした罪は重いなの!>
「よせコルデ! もう決着はついてる!」
コルデは制止も聞かずに、ぜいぜいとあえぐドラゴンの口の中にスポンと入って行った。
20秒後。
<オールマスターアームオン!!>
喉の奥、腹の中からエコーが掛った声が響いてくる。
<エンゲージ、フルファイヤーなの!>
やめなさいおバカーーーーッ!!!!
ドラゴンの腹の中から重火器が一斉発射される音が聞え……、ドラゴンはびくん、びくんと、大きく体を動かした後、
ボトルとミサイルが排出され
ふしゃあああああああああああああーッ
ケツの穴から大量の(中略)コーラをきらきらと霧のように噴出し、
『あ……ああああ………あああ…見、見ないで……、見ないでー……』
アリーナに虹が出た。綺麗な虹だった。
ドラゴンはそれきり動かなくなった。
「……」
30秒ほど経って。
コルデがドラゴンの中からとてとてと戻ってきた。
粘液で体中がべっとべとになっている。あとで中性洗剤で洗ってやらなきゃ……。
<おみやげなの、なんかキラキラしてたの。メイド長にあげるなの>
ベトベトになったコルデが満面の笑みをうかべてキラキラした何かを差し出してきた。
コルデちゃん。これはあの竜さんの結構大事な器官なんじゃないかな……ちょっと見えないところにすぐ隠そうか……。
「あの……リッタードラゴンさん、大丈夫ですか?」
『……………………………………………………………………もぅ……無…理……』
あー良かったー、まだ生きててくれたー。
「すまない、正攻法で戦ったらどうしたってあなた達には叶わないから、からめてを使わせてもらった」
『……でも……だからって…こ…んなのって……もぅ、わた…し……よごされちゃった……』
レアアイテム、竜の涙を惜しげもなく落とし続けてくれたドラゴンさん。
あとで残さず拾っておこう。
『勝者カラスマーッ!!』
ジャッジが高らかに宣言するが、客席の反応は全員絶句していて皆無であった。
勝利者への報酬ということで、ドラゴンはウロコを何枚か剥がして置いてくれた。
こういうのファンタジーっぽくて大好きだ。
もはや飛ぶ力も無いとかで最後は人間の姿に変化した。
「くっころ」が似合いそうな美少女の女騎士の姿に。
……メスだったのかお前。
こんないたいけな娘さんの(中略)をドリルミサイルで拡張した上コーラのボトルをつっこんで、大衆の面前で(中略)コーラを噴出させるなんて……。
ごめん。本当ごめん。
そして一生の思い出にします。ありがとうございました。