第34話 起きたら病院でした。
空気に消毒液が混ざっているような独特のにおいがする。
心電図を映す装置。
白い部屋。鉄パイプのベッド。
起きたら姉と姪が居た。
神奈川からわざわざ来てくれたそうで。
腕には点滴の、そして股間のムスコに尿を出す管が刺さっている。
ここは千葉の病院だそうだ。
医者の説明を要約すると、俺の心臓はポンプとしての役割を失って変な動き方をするようになり、アメフェス会場で意識を失ったそうだ。
AEDの処置が早かったのが幸いしたと。
それはいいとして顔がものすごく痛いんだが……。
心臓は精密検査をしないとなんともいえないが、顔のケガもひどいもので倒れる時に打ったものだというが、もしかしたら倒れた後で、何人かに踏まれたのかもしれないと言っていた。
入院。ひとまず2週間。
経過によってはそれ以上伸びるかも。
姉にアパートの鍵を渡す。炊飯器の電源が入ったままだし、ポットなんかも切ってもらわないと。
あと……入院費用。どうすっかなぁ。
姉が立て替えてくれることになっていた。
感謝しかないと同時に、自分の経済力の無さに情けなさに涙が出てくる。
義兄さんごめんなさい。
買えなかった限定フィギュアへの未練なんか一瞬で吹っ飛ぶ。
父と母がこっちに来ようかと言っている。一応、命に別状は無いからと、断った。
わかってるよ姉。
向こうの兄貴にたのんで、遠距離でも動画通話が出来る奴で話すよ。
幸い指の動きや記憶や思考に後遺症は残っていない。今のところだけど。
「奇跡が起こったと思ってください」
医者が所見で最後に言った言葉が印象に残った。
しかし。
あの夢。
昏倒中に見ていたであろうあの夢。
エルフや、ダークエルフや、爆乳のBBAや、虎っぽい獣人が出てきて、疾風が凄いパワーを発揮した。
夢なのにはっきり思い出せるし、夢なのに内容を忘れていない。
あのおっぱいすごかった。
ダークエルフも清楚で可愛かった。
BBAはさらにすごかった。
けものはもさもさしていた。
手の感触は本物そのものだった。
蹴られたり、股間を圧迫された感触もリアリティがあった。
さすがに、『なにもしていないのになんでそんなふうに状態が変化したか?』、その理由をしつこく言わせようとしたり、『鏡餅』にしたら怒るよな。
しかしあのおっぱい。
ああ、やめてくれムスコ。
やる気を出さないで欲しい。ああ。刺さってる管が痛い。
痛い。痛い。




