第162話 狩人(ハンター)
第162話 狩人
「うおおおおおおおおおおおおおおおーッ!」
叫ぶ俺!
二本の日本刀を振りかぶり疾風が突進する。
「むんッ!」
叫び返すムトーさん!
ムトーさんのゴウレムのローブの下から、板が飛び出す!
板!?
それを盾のように構えて、日本刀の一撃を受け止めるムトーさんのゴウレム。
ごんっ!
激突。
空気の振動が水面を伝う波みたいになって、目に見えるようだ。
板?
盾?
違うな、これは剣だ。
幅広の巨大な剣だ。
幅広の巨大な片刃の剣。
俺はこれ、見覚えがある。
ムトーさんと遊んだあのハンティングアクションゲーム。
そのプレイアブルキャラクターの狩人が持っている大剣だ。
「ちぃネット。もう一体のゴウレムは使わないのかいカラスマくん?」
「使いますよ、今!」
俺の肩にはオー・ウル・ベルンアーマーを着たままのちぃネットが乗っている。
「ちぃネットッ! ヨロコビヤC・A・S=カスタマイズ・アクセサリー・シリーズ、『バスターコフィンキャリアー』射撃モード、リンクアップ!」
バスターコフィンキャリアーを肩に乗せ、射撃体勢で構えるちぃネット。
「安全装置解除! キルモード解放! 射撃ッ(ファイヤーッ)!」
対人戦用にゴム弾レベルまで威力を落としていた射撃モードをアンロックし、本来の威力でぶっぱなす!
ばらららららららららら……ッ!!!!
蜂の巣になる、ムトーさんのゴウレムのローブ!
ローブが粉々に吹き飛び、その正体が露になった!
やはりっ!!!
ムトーさんのゴウレム。
ローブの下から現れたそれは、
あのハンティングアクションゲームのキャラクター。ハンターだった。
モンスターの素材で作られた、重装甲の鎧をつけた剣士。
大剣を構えた女剣士だった。
そして、その剣士の兜から覗き見える顔は……やはり!
「ミセリコルデかッ!」
慶屋プラモデルシリーズ MW:F = モノコックウェポンズ・フラウ MWF-002 ミセリコルデ。
疾風と同じシリーズのプラモデル。
モノコックウェポンズ・フラウの2番だ。
「御名答」
と、ムトーさん。
ムトーさん。
ミセリコルデを素体にして、ハンターの鎧をフルスクラッチで作ったのか!?
だとしたら、あのミセリコルデは……ゲームと同じ性能を持っている!?
「はあああああああああああああああああああああああああああああああーッ!」
叫ぶムトーさん。
<おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!>
大剣を盾にしていた狩人。狩人の鎧を身に着けたミセリコルデが、吼えた!
赤いオーラをまとって、大剣を振り上げる。
やばい!
肉薄していた疾風をひっぺがす俺!
振り上げた大剣を振り下ろすミセリコルデ!
ずん!
空気が震えた!
大剣を床に叩きつけるミセリコルデ!
避けろ疾風!
ぎりぎりで横に避ける疾風!
だが!
ずばああああああああああああああああああああああああああああーッ!
空気ごと、空間ごと!
大剣の一閃が、衝撃波を作って、一直線に目の前を破壊する!
新調されたばかりのリングの床に、一直線の破壊の跡が出来る。
なんて破壊力だ!
まともに食らったら無事じゃ済まない。
「ゲームのモーションそっくりですね!」
と、俺。
「だが、こいつはゲームじゃない!」
と、ムトーさん。
ムトーさんのハンターが跳んだ。
ゲームのモーションにはない動き!?
跳ぶハンターミセリコルデ!
振りかぶられている大剣!
その目標は……俺!?
油断!?
いや、まさか俺を直接攻撃しないだろうと思っていた俺の油断。
ムトーさんなら、あのムトーさんならそんなことしないだろうって、無意識に思っていた俺の油断だ。
ミセリコルデは俺の眼前、頭のすぐ上にいる!
「ちぃネット!」
を、ぶつける俺。
ばしん!
弾き飛ばされるちぃネット!
駄目だ!
「終わりだ! カラスマ!」
叫ぶムトーさん!
「うわあああああああああああああああああああーッ! と……」
大剣が俺の脳天に、振り下ろされる光景。
俺はその光景を、スローモーションみたいに見ていた……。




