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第153話 「メテオスタンプ!」

第153話 「メテオスタンプ!」


 3匹の狼に噛みつかれ、ルナリアが倒れこむ。


 もこ。


 そのルナリアの小さな体が。


 もこもこもこもこ。


 加熱したおもちのように膨れ上がった。


「「な……?」」


 もこもこもこもこもこもこもこもこ。


 その様子を呆然とするシズルとマズル。


 この二人は知らないだろう。


 俺がザ・ビッグバトルの最後の戦いで使ったエアバッグもこもこねんど。


 それをルナリアとガーネットの服の下、鎧に仕込んでおいたのだ。


 巨大なねんどのかたまりになっているルナリア。


 噛み付いた3匹の狼が、口に粘土をつめてはじきだされる。


「うまい! いいぞルナリア!」


「カラスマ様……、これどうやって出たらいいですか?」 


「ごめん、そこまで考えてなかった。ちぃネットでいい感じに斬ってくれ」


「はい…」


 まぁそれはいい。このやりとり、シズルとマズル、二人の意識をひきつけて、隙を作るには十分だったろう!


「やばい! 上だお嬢!」

 ハングドマンの叫び声。


 余計なことを言うなひげアロハ!


「上!?」


 上空に跳び上がった影!


 ガーネットだ。


 ラムペガスのすね当ては、脚力を強化する! 地面を早く走るだけが芸じゃない。ガーネットはひととびでコロシアムの上空高く、マンションの屋上よりも高く飛び上がっていた!


 その背中には、ちぃネットを乗せている!


「ルナリア!」


「はいお姉さま!」


 ねんどの中から声がする。


「ちぃネット!」


 ガーネットの背中のちぃネットが地上に向かって推進機関を反転させる! 空中で足場になったちぃネットが、ガーネットの背中を足で思い切り押し出す!


「いけーッ」

 叫ぶルナリア!


 地上に向かって弾丸のように飛び出すガーネット!


 ラムペガスのすね当てに覆われた両足をそろえ、大気に穴を開けながら一本の錐になって、地上へと落下する。


 ドロップキックロケット砲!


「メテオスタンプ!」


 その全体重に重力と、ちぃネットの押し出す推力を加えた超強力な一撃が!


 どん!


「ぐはあッ」


 上空からシズルの胸に直撃した!


 コロシアムの床にクレーターを作り、押し倒され地面にめり込むシズル。


 銀の破片を撒き散らして、シズルの鎧、胸部分が半壊する!


 めり込んだシズルを踏みつけ、その上に立つガーネット。


「くぅ」


 だが、ガーネットも無事では済まなかった。


 ラムペガスのすね当てが……!


 ひびが入り、同じく赤い破片が飛び散る!


「姉さん! お前ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」


 シズルの傍に控えていたマズルが、姉を撃ったガーネットに向かって飛び掛る。


 だが!


「必殺! 左捻りこみ斬! チェストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーッ!」


 ガーネットを追いかけて地上へと急降下していたちぃネット! その必殺技の餌食になるマズル!


「ぎゃああああああああああああーッ」


 ちぃネットの必殺の袈裟斬りが、マズルの胸アーマーを深々と切り裂く!


「鋭ッ!」


 切り裂かれたマズルの胸アーマー!


 その露出した胸部分に向かってレイピアを撃ち込むガーネット!


 ばしゅッ。


「……こあ……」


 声にならない声を上げ、マズルが、ばったりと倒れこむ。


「マズルッ!」


 地面にめり込んだシズルが叫ぶ!


「シズル! 恨みは無いけど、これが決闘なのよ!」


 レイピアの刃先をシズルの居る足元に向けるガーネット。


 だが、その手が驚きで一瞬止まる。


「!? あなた、その胸のそれ……」


 ガーネットの蹴りを受けて露出したシズルの胸。


 その胸。


 鎖骨の間には……緑色に光る石が埋め込まれていた。


「おしゃれだろ? 今まで顔も知らなかった親父がくれたんだ……こんなもの要りもしないのにさ……」


「シズル……」

 

「おしゃべりはここまでさ!」


 次の瞬間、シズルの体が床の下へと沈み込んだ。


 気を失ったマズルの体も同じく、床の下へ。水面から水中に沈みこむように姿を消す。


「アタシを怒らせたね! ガーネット!」

 シズルの声だけが響く。


 リングの上の狼ゴウレムが、次々とガーネットに飛び掛る。


 それを切り捨てて行くガーネット。


 だが!


 ぼふ!


「えっ!?」


 ガーネットが切り捨てた一体の狼ゴウレムが熱線を撒き散らして爆発する。


「ぐうッ!!」


 爆発に巻き込まれたガーネットが……。


 ガーネットのレイピアを構えていた右手が……!


 ガーネットの右腕を覆っていた服がやぶけ、その肌が真っ黒に焼け焦げている。


「うう…」


 レイピアを掴んでいられなくなって落とすガーネット。


 仕込んでいたねんどの層まで焼き飛ばされたのか!?


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


『弾正様』


 満員のコロシアム。


 その観客席にラヴァーズは居た。


 彼に声をかけたのは、行者こと異界堂の姿を見せない店主である。


「何か行者殿?」


『あれを仕込まれたのは弾正様で?』


「左様。全てわしの差配よ」

 笑うラヴァーズ。


『では何故、あの男爵令嬢達にも力を貸したのですか?』


「なぁに。……一方を強くしすぎては、死合いにならぬからな……」


『左様ですか』


「かかか……。さて、どう切り抜けるかな? ガーネット殿は……いや、カラスマ殿は……」


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 リングの外周で、地面がゆらりとゆれ、マズルの肩を抱いたシズルが、姿を現す!


「卑怯だろうとなんだろうと、あたしたちはこの決闘に勝たなきゃならない! 絶対に勝たなきゃならないんでね! 行け! 狼達!」


 狼達が一斉にガーネットに飛び掛る!


「やらせません!」


 ルナリアをひっぱったちぃネットがガーネットに急接近する。そのままガーネットの体のベルトを掴み、空中へと飛び上がる!


 ガーネットが居たリング上で、目標を失った狼達が互いに衝突し、そのまま爆発が次々と起こる!


 その爆風を上空から見下ろすガーネットとルナリア。


「姉さま……」


 ガーネットの黒焦げになった右手から血が滴り落ちていた。


「大丈夫よルナリア。でも、これじゃカラスマが殴れなくなっちゃったわね……」


「姉さま……」


「敵の弱点。多分わかったわ。胸に埋め込まれた魔石。あれであの狼ゴウレムを動かしてる……」


「わかりました! ちぃネットで胸の石を壊せば!」


「ええ! 私達は勝てる……!」


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


「マズル起きて」


「姉さん……?」


 マズルを抱えたシズル。シズルの腕の中で気絶していたマズルが目を覚ます。


「あいつらは……!?」


「あそこ」


 空をあごで指すシズル。


「マズル。あんたの飛び道具、使える?」


「いけるよ姉さん……でも届くかな」


「それじゃ、こんどがアタシが魔力をマズルに渡せばいい」


 シズルの胸の魔石がにぶく光る。


 マズルの切り裂かれた胸アーマー。露出したその胸の鎖骨の間には、シズルと同じように魔石が埋め込まれていた。


 マズルの腰に手を回すシズル。


 二人の胸に埋め込まれた魔石が、共振してにぶい光を放つ。魔石によって倍化されシズルの体から生み出された魔力が、マズルの体に流れ込む。


 血圧が血流が高まり体の内側から破裂しそうになる。


「みなぎるねシズル……これを耐えてたんだ?」


「わるいねマズル。つらいだろう?」


「いいよ、母さんのためだろ?」


「ああ。母さんのためだ……」


 マズルの両肩のアーマー。その狼の意匠がスライドし、両手を覆う手甲となった。


 手甲の狼の顔。そのあごの中に、赤い光球が生まれる……。


 両手の狼が空中を向く。射線上にガーネットとルナリアを捉えた。


「ぶっ放せる……」


「はずしちゃだめだよ……」


「逃げられないのを撃ちこんでやるよ……」


 フィィィィィィィィ……。


 あごに生まれた2つの光球が、融合してひとつになる。


<アオオオオオオオオオオオオオオオオオオー>

<アオオオオオオオオオオオオオオオオオオー>

<アオオオオオオオオオオオオオオオオオオー>


 シズルとマズルを囲んでいた狼ゴウレム達が、彼らの女王を称えるかのように遠吠えを上げる。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


「寒い……なんか冷えてきたズラ……」

 と、ズーラン。


「あの、赤い光。それに周囲の熱が吸い取られているようですね」

 と、メイド長。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 周囲の大気が揺らめき、その温度がどんどん光球にかき集められてゆく。


「さよならスカーレット様。ファンだったよ! でもさよならだ……」


 揺れる赤い光球が、まるで太陽の様に光をはなつ。ぐずぐずに熱を上げ、今にも爆発しそうなそれを、マズルは2つの狼の頭、あごをつかって無理やりに制御する。、


「食らいな!」


 マズルの腕に生まれたもう1つの太陽! 


「ヘルブレイズ・コロナバースト!」


 それが今、マズルの腕を離れ! 上空に撃ち出された!

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