第141話 カラスマは眠る
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第141話 カラスマは眠る
正直立っているのだけでもつらかった。
ガーネットとメイド長が肩を貸してくれている。
二人の肩に回した俺の手が、二人の胸に当たっている気がするが、手の感覚がもう無いんだよね。肘から先が無いみたいなんだ。勿体無い。
そんなことでも考えていなければ、意識が途切れそうなんだ。
体中が汗でべとべとしてつらい。俺はこの世界に留まりたい。ガーネットとメイド長はいいにおいがする。退院の日は近い。俺はこの世界に留まりたい。(中略)の毛に白髪を見つけた。疾風のパワーアッププラン。あのときルナリアに言われるままに(中略)を揉んでおけばよかったな。来月の家賃どうしよう。浅間紀伊さんの引き出し間接の思い切りには叶わない。ガーネットの(中略)は最高だ。ムトーさんのこと……。俺はこの世界に留まりたい。
何でもいいから考える。思考を途切れさせないようにして、意識をつなぎとめる。
意識を振り絞って、瞬きを減らして、少しでもこの世界に滞留できる時間を引き延ばす。
「カラスマさま!」
俺が俺の部屋にたどりつけたのと、ハウがルナリアを連れてきたのはほぼ同時だった。
メイド長がハウを呼んだから。ハウの耳は呼べば聞こえるらしい。
もしかして俺が夜中にベッドでごそごそやっている音とか聞こえていたのかな。……勘弁してくれ。
ベッドに腰掛ける俺。
目の前にはガーネットとルナリア。
二人は俺の手を握る。
メイド長と、ハウが居る。
改まって俺は話をすることにした。
「俺はこの世界の人間じゃない。それはみんな知ってるよな」
「うん」
と、ガーネット。
「疾風やタブレットは向こうの世界から持ってきたものだ。こっちの世界に向こうの世界のものが流れ着くか飛ばされてくることがあるから、あっちの世界のことはみんななんとなく想像がつくと思う」
「……うん」
「ムトーさんているだろ? あの人はあっちからこっちに飛ばされてきた人だ」
みんな真剣に聞いてくれている。
「だが、俺は違う。俺の体は向こうにもある。こっちにもある」
「どういうことなの?」
と、ガーネット。
「俺が最初にお前達と話をした時の事を覚えているか?」
「ええ」
「これは俺の夢だ。お前達は夢の中の登場人物だって」
「そうね。今でも忘れられないわ。あの時、あなたが私にしたことを……」
「ごめん。あの時は本当に」
だから本当に好き放題した。……してしまったんだけどね。
「あの時だけじゃないでしょ! でも、いいのよ……もう……」
顔を赤くするガーネット。
「夢の中の登場人物。それはいまでもそうなんだ……」
俺の話を、みんな真剣に聞いてくれている。
「俺は向こうの世界で生きている。そして眠って夢を見ると、こっちの世界で目が覚めるんだ。夢を見ている間だけね」
「……。私達の世界は、夢の中の世界ってこと?」
「多分違う。いや……わからない。実際にある世界……なのか、それとも、魂だけの世界なのか。ただこの世界でも人は生まれて死んでゆく。そうだろう?」
「ええ」
「人が生まれて生きてゆく世界。確かにある世界。でも、他の世界の、魂が流れ着く世界。それがここなんだろう」
俺の意識というか、多分魂だけがこっちの世界に飛ばされてきている。この体はきっと魂的なものなんだと思う。この世界の住人は、組成がそれに近いのだろう。この世界の会話はテレパシーみたいなものに近いと思う。だから俺とガーネットは会話が通じてた。タブレットの動画で日本語が通じなかったりするのは、一方通行、魂同士が会話をしていないからなんだろうな。
「……」
「俺が寝ている間に起こそうとしたことはあるか?」
「何度もあるわ。でも起こすことは出来なかった」
「俺が目を覚まさないのは、多分こっちの世界に魂が来ていないからだ。向こうの世界で起きている間は、俺はこの世界に来れない」
「……」
「そして向こうで眠っても、必ずこっちに来れるとは限らない。この世界に繋がる夢を見ないと、こっちの世界で目を覚ませないんだ」
「……」
「俺は今からこっちで眠りにつく。そしてあっちの世界で目が覚める。あっちの世界に意識が戻ると思う。だから、次にこっちに来れるのはいつになるかわからない」
決闘はあと3日後だった。
「決闘を見守れない……かもしれない」
次に目を覚ますのはいつになるかわからない。もしかしたら、二度と。言いかけて口をつぐんだ。可能性の話だけで二人を不安にしてはならない。
俺は必ずまた、この世界の夢を見るつもりだ。
「カラスマ」
と、ガーネット。
「私は平気よ。あのゴウレムがあれば、あなたがそばに居てくれるのと一緒だから」
「ガーネット」
「カラスマ様」
「ルナリア」
「セーターをください」
サマーセーター。俺が着ていたままだったな。
脱いでルナリアに渡す。
嬉しそうに受け取るルナリア。セーターに袖を通した。
「私にはちぃネットが居ます。お姉さまも。それにこのセーターがあれば。カラスマ様に抱きしめてもらっているみたいな感じがするんです。あの時」
あの時。デン侯爵と戦った時。ルナリアがひどい目にあっていたあの時か。
「カラスマ様に助けていただいたあの時、折れそうだった私の心は、このセーターに救われました。このセーターに包まれて、甦ることができたんです」
ルナリア……。……重いよ。でも、あの時、あの裸のルナリアにかけたそのセーターが、この子の支えになっていたのか。
「このセーターさえあれば、勇気100倍になっていられます。だからきっと決闘も上手くいくと思います。だから……」
「……」
「心配は要りません! 決闘はかならず、乗り越えてみせます! お姉さまと一緒に」
安心した。安堵感が俺の全身に染み渡っていく。
同時に眠気がこらえきれなくなった。
上半身を自分で支えていられず、俺はベッドに倒れこむ。手を握っていたルナリアとガーネットが一緒に倒れこんでくる。
いいにおいがするし、あったかい。
「ガーネット。あのゴウレムの中には秘密兵器が入っている。詳しくは、メイド長に。ルナリアも元気で……」
「カラスマ!」
「カラスマさま!」
大丈夫だな。大丈夫なはずだ。やれるだけのことは全部やった……。
「メイド長。あとは頼んだ……」
俺は落ちるように眠りについた。
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ベルン男爵邸。食堂。
アルタ。フィッシャー。パニッシュメント。キャンプマスター。ソードマンロコリコ。エイジ。チャペル。ズーラン。ムトー。ラヴァーズ。
カラスマに招かれた戦士達が、休憩をとっていた。軽食と酒が振舞われている。
「痛い痛い痛い痛い……」
と、アルタ。
「怪我が治っても痛いッス」
と、フィッシャー。
「怪我の程度にもよりますが、治癒魔法は万能ではありませんからね。致命傷ならなおさらです……」
と、チャペル。
「もうトラウマですよ。バトルアリーナに立てなくなるかもしれません……」
「幼女……ルナリア様があと10歳幼ければ……幼女」
と、ソードマンロコリコ。
「なんとも、コメントに困るねぇ」
と、ムトー。
「こいつガチだったズラか……」
「戯言は2.5次元だけにしておけ。それ以上騒ぐなら斬るぞ」
と、ラヴァーズ。
その時、食堂のドアが開けられた。
ガーネットを先頭に、ルナリア、メイド長、ハウが入ってくる。
「挨拶が遅れて申し訳ない。ベルン男爵家当主のガーネットだ。この度は当家の困難に力を貸していただき、感謝の言葉もない。いや、感謝しかない」
凛としたその表情に、もう迷いや弱音は見られなかった。
「ガーネット! どうした!? カラスマとちゅーでもしたズラか?」
とズーラン。
「してないわよ! (……まだ)。ズーラン、さっそくだけどスパーリングをお願いできるかしら、新しいゴウレムに慣れなければいけないの!」
「まかせるズラ」
「ラヴァーズ先生! さっきの続きをお願いします!」
と、ルナリア。
「あいわかった。だが、酒を入れてしまってな……」
「なら冷めるまで僕がお相手をつとめましょう。(中略)はなかなか強いと思いますよ」
と、ムトー。
決戦の時は刻一刻と近づいていた。
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