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第14話 異世界の男爵令嬢(妹)の挑み

「デン侯爵ッ!」

 ガーネットの両腕、両足は、地面から生えた無数の手につかまれていた。

 磔にされて身動きが取れない。


 足をつかまれ倒れこんだゲートキーパーは、ようやく体勢を立て直し起き上ったところだ。


「不意打ちとは武家のすることですか!」


 デン侯爵は白いゴウレム、ホワイトナイトの背中から上半身を出している。

 その背後をとりかこむように、配下のゴウレム兵たちが次々と姿を見せていた。兵士用のゴウレム、リビングプレートである。その数5体。


「不意打ち……? おや? 賊から助け出したというのに、伴侶に対してその言いざまはなんですかな? おかしいですな……まるで賊の味方をするようではありませんか?」

「……」

 拘束されたガーネットはそれに無言で答えた。

「ガーネット殿。これから先は考えて話をし、行動なさい。あなたは私の妻なのだから」

 そして、にやりと口角を上げる。

「妻は夫におねだりができる。そんな妻を夫はかわいく思うものだ」

 暗に、ルナリアやメイド長の処遇は自分が決定権を持っている。そうデン侯爵は言っているのだ。


「さて、花嫁泥棒殿?」

 デン侯爵はゲートキーパーを見た。

「私がこれまで何百という民草に幾億という金を貸してきたとお思いか? 食い詰めた人間が起こすことはだいたい似通っているのでね」

「それは自慢げに言うことですか? ノブレスオブリージュを体現すべき貴族たるものが弱者の足元を見て嘆かわしい……」

 ルナリアは引かなかった。


「ふん。賊に道を説かれるとは滑稽な。……まぁいい」

 侯爵は手を叩いた。

「ハングドマン!」 

 木の影から、男が現れた。

 あごひげを生やした痩せこけた中年だ。魔法使いのようなローブをつけている。

「やれ」

「はい」

 ハングドマンと呼ばれた男が手を上げる。


 ずぼっ。


 メイド長の片足を掴んだ腕の本体が、地中から現れた。

 ひょろながい、かかしのようなゴウレムだった。背は高く身長は3メートルほどはあろうか。

 メイド長は片足をひっぱりあげられ、さかさにとまるコウモリのように宙吊りにぶらさげられる。めくれないよう思わずスカートを押さえていた。 


 ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。


 同様にゲートキーパーも土の下から現れたカカシ型ゴウレムが、がっちりととりおさえている。


「このまま屋敷まで?」

「御夫人方だ。丁重にな……」

「へい」

「……もう一匹いたような気がしたが」

「そっちはシ・ビャッコの姐さんが」

「そうか。行くぞ」

「へい」


 ハングドマンは手を動かし、その動きに連動したカカシ型ゴウレム・ハングドマンズがメイド長をぶらぶらと揺さぶった。

 メイド長の豊満な体の豊満な部位が揺れる。


「だらーん……か。だらしねぇデカ(中略)だなぁ……垂れて顔にかかってら。それじゃ前が見えねえだろ」

 ガーネット達を取り囲んだゴウレム兵達から、下卑た笑いが起こる。


 ぼん。


 メイド長を掴んでいたカカシの頭が突如吹き飛んだ。


「何……?」


 カカシゴウレムが倒れこむのと同時に、メイド長はくるりと、着地する。

 銀縁のめがねをくいっと上げた。


 ハングドマンの顔に張り付いていたにやけが、一瞬で吹き飛んだ。

「何をした?」


 これが反撃の合図となった。


「出力最大!」

 ゲートキーパーが取り囲んでいたカカシ型ゴウレムの一体をつかみ、それを即席のこん棒に見立てて、そのままブンとなぎはらった。

 他のカカシがはじけ飛んでいく。


「御覚悟!」

 カカシをそのままふりあげて、デン侯爵のホワイトナイトに振り下ろした。

 

 ガンッ!


 ホワイトナイトがとっさに盾を構えなければ、伯爵の頭はぺしゃんこになっていただろう。


「旦那ぁ……」

「かまわん。力の差を見せ付けてやるのも面白い。……お前はそっちのメイドを片付けておけ」

 デン伯爵がホワイトナイトに乗り込んだ。


「へえ…仰せのままに」


 ゲートキーパーはカカシを放り捨て、内蔵された剣をひきだすと構えた。


 ホワイトナイトを守るように、5体のリビングプレートが展開する。


 1対6である。 


 敵は多数だ。

 

 メイド長はルナリアに加勢しようと、ゲートキーパーに近づこうとするが、目の前にはローブの男。ハングドマンが立ちはだかった。


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