表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白球に駆ける  作者: らいとん
8/8

休日②

夏休みが始まった。麻佑以外の家族は、皆お母さんの実家に帰ったが、麻佑だけお留守番。一人でしかできないことをやろうと意気込む麻佑だったが……。

 夏休みに入って3日目。お母さん・お父さんと美咲は、お母さんの実家、九州に帰った。3泊4日だが、お父さんだけは仕事の都合で明日の夜には帰ってくる。私はというと、明日試合があるから、今回は1人留守番をすることになった。どうせ年末にはまた帰るし、今回くらい行かなくてもいいとお母さんに言われたのだ。私としても、明日の試合には出たいしその方が嬉しかった。

 今日の朝早くに、3人は家を出ていった。今までも家で留守番をすることはあったけど、日を跨ぐほどの長い留守番は初めてだ。家に1人しかいないということは何をしてもいい。別にやりたいことがあったわけではないけど、私は妙にわくわくしていた。とりあえず朝ごはんはお母さんが作ってくれている。それを食べて、考えよう。


 時計がお昼を回った。結局、私は朝ごはんを食べた後、部屋に戻ってずっとゲームをしていた。家に誰かいようがいまいが関係ない。私にはゲームする以外の選択肢がなかった。明日からは試合や練習で野球漬けになる。家でゴロゴロできるのは、今日くらいかもしれないのだ。私は最近買ったばかりのRPGゲームを、今日でクリアする気満々だった。

 ただ、いつもと違うことが1つだけある。私はいつも、起きたらパジャマを脱いで、部屋着に着替えている。そうしないと、お母さんに怒られるからだ。だが、今日は他に誰もいない上に、暑い。私はパジャマを脱いだ後、何も着ることなく、シャツとショーツだけの姿で、ゲームをしていた。カーテンは閉めているし、誰に見られることもない。私は扇風機の風を肌へ直に浴びながら、ゲームをしていた。普段からシャツ・パンツでいられれば、こんなに快適なのになぁ。そう思ったが、流石にそれがだらしないことであることは私も分かっていた。だから、今日だけ、特別だ。

 ふと、小腹がすいた。お母さんが用意してくれたのは朝食だけで、昼と夜は自分で何とかするよう言われていた。一応お金を1500円貰っているし、コンビニで何か買ってくることもできる。だが、ゲームに集中している私は、外に出るのが酷く億劫だった。適当に家にあるもので済まそう、そう考えていると、この前お母さんと買い物に行ったときに、ポテチを買ったことを思いだした。……そうだ。ポテチとサイダーを部屋に持ってきて、寝転がりながら食べてゲームしよう。普段、部屋にお菓子を持ち込むことは禁止されている。ベッドの上で何か食べるなんて、もっての外だ。でも、今日はそれを咎める人が誰もいない。よし、やろう。私は1階のリビングへ行くとポテチを取り出し、サイダーをペットボトルごと持って自分の部屋に戻った。そして寝転がると、ポテチの袋を開け、ぱりぱりと食べながらゲームの続きをした。手についた油で、すぐにコントローラーはべたべたになってしまった。後で忘れずに拭き取らないとな……。色々な証拠を隠滅するのが大変そうだと少し思いながら、私はゲームの続きをやった。


 13時。ポテチを食べてから少しして、私はトイレに行きたくなった。とはいえ、既にサイダーをペットボトルごと持ってきているし、部屋から出るのが酷く面倒に感じられた。まだ我慢できるし、トイレは後で……。そう考えていたら、私の頭の中にふと、とんでもない考えが浮かんできた。おむつを履いてたら、トイレ行かなくて済むんじゃ……。

 私は一旦コントローラーを置くと、クローゼットを開けた。そこには私と美咲の服や下着が入っている。……そして、左隅には、美咲のおねしょ用の紙おむつのパッケージが置いてあった。私はそれに手をかけたが、そこでハッとした。もし、残り枚数をお母さんがカウントしていたら?今日家にいるのは、私しかいない。私が履いたことが、バレる。それは、恥ずかしすぎる……。いや、でも、お母さんは自分の記憶違いかと思うかもしれない。あぁでも、そもそも私が美咲のおむつを履けるんだろうか。サイズ的に、いけそうな気はするけど、もしダメだったら、元通り綺麗に戻すことはできないかもしれないし……。私は、様々なことに頭を巡らせた。ここで、おむつを履く必要なんて、ほとんどなかった。だが、これこそ他に誰もいない今日しか、できないことだ。そのドキドキに、私はすっかり魅了されていた。

 ――そうだ、トイレのゴミ箱に、美咲の使用済みおむつがある。かなり汚いけど、まずそれでサイズを確かめよう。履けなかったら、諦めるしかないんだし。私は1階に降りて、トイレへ向かった。そもそもトイレに行くのが面倒でおむつを、と思ったはずなのに、すっかりそのことは忘れていた。私はトイレに入ると、角のゴミ箱を開けた。美咲のおむつが、丸めて3つ入っていた。できれば、あんまり美咲が漏らしてないやつを……。私はそれぞれのおむつを手に取り、重さで美咲の漏らし具合を予測した。1個目は、ずっしり。手越しにひんやり、おしっこの冷たさが伝わってくる。これはかなりやったな。流石にこれを履きたくはない。私はそれをトイレの床に置くと、2個目を取り出した。2個目は1個目とうって変わって、軽かった。また、1個目のように、手にひんやりとした感覚もなかったし、漏らした後のぶよぶよ感もなかった。これ、漏らしてるのかな?私は疑問に思いつつ、それを床に置くと、最後の1つに手をかけた。しかし、3個目は手をかけた瞬間に、びしょびしょであることが分かった。これは、1個目と同じくらいだな……。私は3個目を外へ取り出すことなくそのままゴミ箱へ戻すと、1個目も床からゴミ箱へ戻した。そして、残った2個目のおむつを開いて、中を覗いてみた。真っ白。全く黄色い場所がなかった。美咲は、流石に毎日おねしょするわけではない。これは、成功した日に履いていたものなのだろう。私にとって、こんなに好都合なものはなかった。もちろん、よく考えれば、これも汗で汚れているから、汚いに決まっているのだが。

 私はパンツを脱ぐと、そのおむつに足を通した。妹が履いているものだから、きついかと思ったけど、お尻のところで少しつっかえただけで、思いのほかすんなり履けた。よし、とりあえず履ける。じゃあ後は、私が一枚使ってもバレナイかだけど……。その時、私は名案を閃いてしまった。このまま、このおむつを履いていればいいんだ。そうすれば、クローゼットのおむつは減らない。確かにこのおむつは美咲のお古ではあるけど、漏らしてはいないから、履いていても不快感はない。よし、これでいこう!私はそのままパンツを手に持ち、部屋に戻った。


 おむつを履いて2時間。久しぶりのおむつは不思議な感覚だった。私は小学校に上がる前からおねしょを卒業していたから、尚更だ。いざおむつを履くと、不思議と尿意が収まって、結局我慢できてしまっている。まぁ、ゲームに集中できていいんだけど。

 その更に2時間後。流石にそろそろ、トイレがきつくなってきていた。そして、ゲームも大詰めだった。ラストダンジョン。ここから、一気にいって、クリアする。その前に、トイレにいきたいけど……。ここにきて、私は迷っていた。トイレに行くか、おむつに出すか。ここでトイレに行ったらおむつを履いた意味がないのだが、漏らすのは抵抗があったのである。どうしようかな……。私は、おむつに目を落とした。可愛いディズニープリンセスの柄だ。折角、履いたんだしね。ここまできたら、やっちゃえ。私は、そっと股の力を抜いた。最初は全然出なかったが、少しずつ、普段のトイレのイメージに近づけていく。何度かそれを繰り返していると、ようやく、出だした。ちょろろろろ……。私はハッとして、一旦おしっこを止めた。漏れていないか不安になったのだ。股間を押さえ、座っていたベッドの部分を確かめてみる。しかし、全く漏れていなかった。私は安心すると、残ったおしっこを出し始め、最後まで出しきった。我慢しただけあり、すっかりおむつはタポンタポンだった。流石に気持ち悪く、私はその場でおむつを脱ぐと、パンツに履き替えた。おむつを覗くと、中は真っ黄色だった。……ふぅ。よし、クリアしよう。私は再び、コントローラーを手にするのだった。


 1時間後。私は、無事ラスボスを倒し、ゲームをクリアした。そのエンディングを見て余韻に浸っていると、ふと、私が漏らしたおむつが目に入った。そうだ、忘れないうちに、これ処分しないと。私はずっしりと重いおむつを持って、1階のトイレに向かった。トイレのゴミ箱におむつを捨てようとしたその時、私は気がついてしまった。妹が漏らした2つのおむつに比べ、私が漏らしたおむつは、明らかに重かったのだ。もし、お母さんが捨てるときにそれに気づいたら。……。うん、今捨てよう。ゴミ箱のおむつだけだと不自然だから、家中の全てのゴミをまとめて、捨てる。そうすれば、私が家の手伝いでゴミ捨てをしたとも思われるし、一石二鳥だ。丁度今日は、ゴミ捨ての前日だし。私はすぐにリビングや私たちの部屋からゴミを集め、おむつのゴミ袋と合わせて1袋に纏めた。

 ゴミを捨てるため外に出ると、既に真っ暗だった。ついでに、夕飯もコンビニへ買いに行かないとな。私がゴミ捨て場に袋を置いた時、通りすがりの車が、横で止まった。

「麻佑ちゃん!」

私はビクっとした。振り返ると、車の窓から雪子が顔を出していた。

「えっ、雪子?……あ、こんばんは」

車には、雪子のお父さん・お母さんも乗っていた。

「ゴミ捨てなんて偉いね!こんな時間に」

「……大したことないよ」

私は、酷く動揺していた。私がおむつを捨てているところ、見られた?冷静に考えれば、黒い袋の中に入っているおむつが、見えるわけがない。まして、私がおむつを履いて漏らしたなんて、絶対に分からない。だが、この時は不意に現れた雪子に対して、全く心の準備ができていなかった。

「もう夜も遅いし、麻佑ちゃん気を付けてね。あ、お母さんにもよろしくね」

「あ、はい」

雪子のお母さんが、助手席の窓を開け、私に話しかけてきた。

「8月の頭くらいに、1回遊ぼうね!それじゃ!」

雪子はそういうと、私に手を振った。私も軽く手を振りかえすと、やがて車は走りだし、向こうへ行ってしまった。まだ、心臓がドクドク行ってる。とにかく、早くここを離れて、家に戻ろう。私は、足早に家へ戻った。そして、玄関でハっと気が付くのだった。夕飯を買いに、コンビニへ行くつもりだったことを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ