3.僕は色々と苦労する
一か月ぶりの更新
この世界、アークシアには3種の人がいる。人間、魔人、獣人その三種族には大きな溝があった。何千年と繰り返されてきた終わりなき迫害。
魔人は魔物。獣人は動物。
人間こそ、この世界の覇権を握るに相応しい。我々の敵である魔人は滅ぼせ。動物と同じ獣人は我々に従属しろ。
終わる事のない争いを生んだのは、人間の傲慢さであった。
◇◇◇
「おおっ!これが人間の街というものか!見た事もない物で溢れておるわ!」
「わぁ‼︎わぁ‼︎わぁ、わぁーー‼︎」
金色の目をキラキラと輝かせ、ララは歓喜に酔いしれた。憧れでもあった人の街。その地を初めて踏み締め実感を噛み締めた。
その横で大声を出してララの言葉をかき消そうとするソウタ。しかし、ララの言葉を打ち消そうとしたその行為が逆に注目を集める事になってしまい、ソウタは慌ててララの手を掴んだ。
「ちょ、ちょっとララッ」
ソウタはララの手を引き、半ば無理やりに建物の影に連れ込んだ。
「んっ?なんじゃ?妾の美しさに欲望が堪え切れなくなったのか?んんっ?だが、残念ながら妾はそんな軽い女ではないのじゃ。ソウタの期待には応えられぬよ」
「ちち違うよ!何言ってんの⁉︎そういう意味で連れ込んだんじゃないからっ!」
ララは言葉に反して朴をほんのり染め満更でもなさそうではあったが、ソウタは真っ赤になってそれを否定する。そんな初々しいソウタの様子にララは慈愛の目を向けた。
「ソウタ……お主可愛いのう」
「怒るよ⁉︎……街に入る前に言ったよね、人の街で不用心な事は言わないでって。それとその口調を直してって」
ソウタは若干気疲れした様子で、肩を竦めた。
これでは先が思いやられる。
「口調というのは一朝一夕に直るものではないと妾は思うぞ」
「正論ありがとう。だけど、『これが人間の街か!』なんて自分が人間じゃないって教えてる様なものだよ?頼むからもう少し慎重になってくれよ」
ソウタの指摘にララはムッと眉を顰めた。
「むっ、言われてみればそうじゃな。ふむ、ではこれからはこれが下賎な者たちが住む街かと言う事にしよう」
「なお悪いよ⁉︎無理やり言おうとしなくていいから、そこは心の中だけに仕舞っておいて」
「むぅ、思った事を口に出来ぬとは、人間の街は窮屈であるな」
ララは不満気にその美しい顔を歪まさせた。
◇◇◇
「ララ、とりあえずこれ着てみてよ」
ソウタは綺麗に折り畳まれた女性物の服一式を手渡した。それは平民の一般服。
今のララの格好はローブを深く被った怪しい人物にしか見えない。ソウタは手始めに街に溶け込む格好をとララの服を買い揃えた。
「ほう、これが人間の服とやらか。やけに派手であるな。お主の趣味か?」
「ちがーう!もういいから、早く着替えてよ!」
誤解を叫びながら解きながら、ソウタはララ催促した。しかし、そこは四方を壁に覆われていないただの路地裏。服を受け取りバッと広げたララは興味深そうに眺めてから、周りをクルリと見渡し、ニヤリと笑うとソウタをからかった。
「ここで着替えよと?ソウタは中々ハードな性癖を持ち合わせているようじゃな」
「だから、違うって!何で全部そっちに持ってくの⁉︎ララの格好が悪目立ちするから宿にも入れないからだよ!」
顔を火照らせ、弁明でもする様に言葉を捲し立てるソウタの反応が面白かったのか、ララはニヤリと口角を僅かに釣り上げると、バッとローブを脱ぎ捨てた。
「むっ、妾のせいと申すか。やれやれ、では仕方ない。妾の美しき裸体を白昼に晒そうではないか」
ローブの下に着ていた柄のない質素な白いシャツに手を掛けたララ。上着が捲れ、その下に隠されていた細いウエストと白潤の素肌が露わになる。それを目にした瞬間ソウタは素晴らしい反応速度を見せた。
まるで電雷の様にララの脱ぎ捨てたローブを回収し、その全てが露わになる前に彼女をクルリと包む。
「ローブの中で着替えてよ⁉︎」
そう至近距離で真っ赤に顔を染め上げるソウタに、ララも気恥ずかしさから頬を僅かに紅潮させ、目を逸らした。
「あ、余り見るでない。そんなに見つめられては流石の妾も恥ずかしい」
「あわわわ、ご、ごめん!」
ララの一言で、ソウタは自身の顔がララの眼前にある事に気が付いた。あと僅かで唇と唇が触れ合おうかという位置。
ソウタは慌てて飛び退くように離れると、そっぽを向いて着替えを見ないようにと心掛けた。
「調子に乗りすぎたか……」
小さく呟いたララの顔は未だ赤かった。ローブを一度ギュッと掴み、覚悟を決めた様に着替え始めた。
ララはソウタをからかっていただけではなかった。その言葉のほんの少しは羞恥から来ていたものもあったのだ。
さしもの魔王の娘も、路上で着替えるのは抵抗があったらしい。
だが、そうも言っていられない事情がある事は重々承知している彼女は、ソウタをからかう事で羞恥を遠ざけようとした。
しかし、残念な事にその企みは上手くはいかなかったようだが……
「も、もう良いぞ」
テレを見せつつもララは視界を遮るローブを脱ぎ、ソウタを振り向かせた。
「ど、どうじゃ?変ではないか?」
日頃から自身の事を美しいと言ってのけるララにしては珍しく自信なさ気な様子で、恐る恐るソウタに訊いた。
魔人族にはない習慣。ファッションを楽しむという文化に初めて触れ、ララは喜びよりも先に気になった。自身がどのように見られているのかを。
ララの格好は魔法使いという単語が真っ先に飛び出してきそうな服装であった。トンガリ帽子にマント。杖はないが、それが幻視出来てしまいそうな程に魔法使い風にテイストされた服装はソウタが意図して選んだものである。魔法使いなら、魔法を使ったとしても可笑しな誤解は生まないと考え、選んだのだ。
そんな機能性はさておき、ララの求めるのは似合っているという感想。チラチラと期待するように上目づかいでソウタをチラ見するララ。しかし、そんな視線には微塵も気が付かないソウタは実に空気を読まない発言をした。
「僕の努力が無駄にならなくてよかったよ」
「…………」
まさかの自分の苦労に関しての感想だった。しかし、考えても見て欲しい。ララの服を集めてきたのはソウタなのだ。女性客から訝しげな視線とコショコショ話しを頂戴しながら、女性物の服を物色してきたのは彼なのだ。お金を払う際、女性店員さんに趣味は程々にとの有難ぁいお言葉を頂戴をしたのも彼なのだ。
自らの苦い思い出を振り返り、その苦労が結ばれた事に彼は満足感を味わいながら、頷いた。
しかし、一方シッカリとした感想を期待していたララは不満そうであった。若干頰を膨らませているのはその表れか。
「……どうじゃ?」
「うん、完璧な変装だね。これなら多少魔法を使っても大丈夫だよ」
改めて感想を求めたララに、またしてもソウタは期待と違う感想を漏らす。元々プライドの高いララは青筋を立てて、二本指を伸ばした。
「その目玉を取り替えてくるがよい」
「アギャァーー‼︎」
ソウタは思った。女性はどうして爪を伸ばすのだろうかと。
◇◇◇
「うぅ、目がしみるぅ。だけど、涙が止まらない……」
「ふんっ、いい気味じゃ。妾の美しさがわからん目など一度付け直すべきなのだ」
「理不尽過ぎる……」
ソウタはララの理不尽過ぎる物言いに嘆息しつつも、彼女が何か感想を求めたら、とにかく可愛い、美しいと言おうと決めた。自らの目玉を守る為に。
「そんな事より、ギルドとやらは何処にあるのじゃ?」
「失明するかもしれない一大事がそんな事?」
「やれやれ、大袈裟な男じゃ。お主程の力があればあれしき蝿に止まられた程度であろう」
ララは目にも止まらぬ戦闘を繰り広げたソウタの力を信用して、大袈裟だと言った。それは、正しくもあり、間違いでもある。
どんな強者でも気を抜いている時は弱いもの。ソウタのそれはもっとタチの悪いものだが、概ねそんな感じであった。
「それはそれでゾッとするけど……僕の力はララが思ってる程大したものじゃないよ」
ソウタは途中から視線を逸らし、何処か辛そうであった。ララはそれを自信の無さであると受け取った。そして、ソウタを励ますようにポッと背を叩く。
「謙虚な事は美徳と聞くが、この場合は嫌味にしか聞こえぬな。もっと胸を張れば良いのだ。其方は強い」
「ララは逆に胸を張りすぎだよね。さっきから注目の的だよ」
ソウタは主に偉そうな喋り口に対してそう言ったのだが、ララはそうは受け取らなかった。両手で胸をバッと庇い、逆に双丘を際立たせつつも、顔を赤くしたララは、ソウタに軽蔑する様な目を向けた。
「ど、何処を見ておるのじゃ⁉︎この色魔め‼︎」
「ええっ⁉︎そういう意味じゃ……」
誤解だと伝える前に、手の早いララの後ろ回し蹴りが、ソウタのこめかみにクリーヒットした。ソウタは往来の場で見事にノックアウトされ、スリーカウントを取られた。
◇◇◇
「まだ頭がクラクラする……」
「しつこい奴じゃ」
ララの勘違いなのに、と恨み言を言いながら、ソウタは揺れる脳みそを気遣いながら、建物の中へと入った。
「ほほう、ここがむぐぅ…々」
「しー、ここでララが喋るのは禁止。いいね?」
ジト目でソウタを睨むララであったが、強められたソウタの口調に渋々ながらも頷いた。ここで正体が露見するのは芳しくないと彼女にもわかっていた。
そこはギルドと呼ばれる場所であった。冒険者という職業の者が仕事を求めて集う集会所。そこには、街の人々から様々な依頼が舞い込み、冒険者はそれを求めてここを訪れる。
ソウタもまたその1人。まぁ、彼の場合それ以外にも理由はあるが……
「まずはギルドカードを作るよ」
「コクッ」
口を手でバッテンして頷いたララにソウタは口元を緩めた。まるで小動物の様な可愛さが今のララにはあった。普段の偉そうな態度とのギャップがその愛らしさをより一層際立たせていた。
いつもこうならいいのになぁと思いつつも、ソウタはここを訪れた目的を果たそうと受付の列に並ぶ。
列はそれ程長くはなく、数分でソウタ達の番がやって来た。
「ようこそ。冒険者ギルドは初めてですか?」
「こっちの子はそうです」
定型文で迎えてくれた受付の女性。物腰柔らかそうな印象を受ける彼女はソウタが何度かお世話になった事がある受付係だ。
彼女の主な仕事は3つ。依頼の受理と報酬の受け渡し。それから、初回の者を冒険者登録する事である。
「そうですか。では、冒険者登録という事で宜しいですか?」
ソウタの視線を辿り未だに口を押さえコクリと頷くララを見た女性は、プロ根性で顔色を変えずにスラスラと述べた。しかし、内心はと言うと、その余りにもな格好に若干引いていた。
「はい、それと依頼を達成したので、その報酬をお願いします」
「承りました。では、登録の方から先に。ここに必要事項をご記入下さい」
そう言って机の上に取り出したのは、冒険者登録用紙と書かれた紙。そこには名前や年齢などを書き込む空欄があり、ララはソウタの方をチラリと見た。書いていいのか?と問う視線を受けたソウタはコクリと頷き、ララは羽ペンを取って嘘偽りなく情報を書き込んでいく。
ギルド登録に必要な情報には、ララが魔人であると露見する可能性はない。真偽を確かめる方法がないと言えばそれまでなのだが、嘘で固めたとしても冒険者登録は可能だ。
この世界では、貴族や王国に大きく貢献したもの以外、偽っても問題ない様な身分しか持たない。むしろこの場で身分を、自らの手で作るのだ。
だが一方で、一度身分を持てば偽る事は容易ではない。登録時に必要となる血液が、その身分を証明する核となるからだ。
DNA判定、そんな高度な知識と技術が必要となる確認方ではなく、同種の物を判別する魔道具、通称『天秤』と呼ばれる物がある。その天秤を用いて個人の特定が可能なのだ。
ララが書き終えると、女性が書き漏らしがないかチェックした。パパッと手際よく目を通し書き漏らしがない事を確認すると、小瓶と針を取り出す。事前にソウタから話を聞いていたララは、針を迷う事なくチクっとする。
ツーと針に血液が流れる。ポトポトと流れ落ちるララの血はバラの様に赤く、また煌めいていた。それは彼女の内に流れる魔力が透き通る様に綺麗で、またの濃密であるからこその輝き。
紅色の美しい血液。それを採血し終えると、女性は手放しにララを褒め讃えた。
「素晴らしい才能をお持ちですね。これ程の輝きは今まで見た事はありませんよ。貴方ならすぐにでも1流冒険者を名乗れる様になるでしょう」
その女性職員の言葉に、周りにいた冒険者が耳をピクッと動かし、ララへと視線を向けた。そして、その美貌に思わず見惚れた。長く美しい白銀の髪。透き通る肌にスラッとした長い手足。
タダでさえ珍しい女冒険者。更には才能も美貌も併せ持つ彼女。冒険者は欲に駆られた。彼女を自身のパーティに引き込みたいと。
そんな周囲の様子を機敏に察知したソウタは、少し声を張り上げ先手を打った。
「冒険者登録が済んだなら、僕と彼女のパーティ登録をお願いします」
「はい、了解しました」
他の冒険者の耳に入る様に言ったソウタに、女性職員は笑顔を作りながらも、内心嘆息した。彼女がララを褒めたのは打算有っての事だった。
何事にも才能を持つ者と持たざる者がいる。ギルドの職員としては、その才能がある冒険者同士がパーティを組む事を望んでいた。
だから、わざわざ彼女を褒め、他の冒険者達を刺激したのだ。
しかし、それを勘付かれたか、ソウタはララの登録が終わると真っ先にパーティ申請をした。ソウタの実力を知らない彼女は見た目で判断し、出来れば避けたいと考えていたが、パーティを強制する力はない。
嘆息しつつも、彼女はパーティ申請を受理せざるを得なかった。
「Cランクですか……」
報酬支払いの際にソウタが出した冒険者カードを一目見て、やはり見た目通りの実力のようだと彼女は嘆息した。これでは輝く原石が泥に埋もれてしまうかもしれないと考えたが、立場上何も言う事は出来ず、他の冒険者に期待するばかりであった。
「あれ?」
ふと、ソウタから手渡しされた冒険者カードに目を落としていると、おかしな点に気が付いた。ソウタが達成した依頼、それを受理した職員の名に自分の名があったのだ。
だが、この冒険者の顔を見た覚えがない。一体どういう事だろうと、彼女は冒険者カードと睨めっこし始めた。
「どうしました?」
固まってしまった職員を急かす様にソウタが問い掛けた。職員はハッと顔を上げると、元の営業スマイルに切り替え、仕事を再開する。
「いえ、何でもありません。これが報酬となります」
女性職員は忙しさにかまけて忘れてしまったのだろうと無理矢理に納得し、報酬とカードを返却した。それをソウタはやや乱暴に受け取ると、ララの手を引き扉を目指した。
「ッ⁉︎」
突然手を掴まれビクッと体を震わしたララであったが、ギルドの中では喋らないという約束を守り、大人しく手を引かれた。
そんな急ぎ外に出ようとする二人の行く手を遮る様に、下卑な笑みを浮かべた男が立ち塞がった。
「ちょーと、待ってくれるか、にいちゃん。そこの別嬪さんと話しさせてくれや」
「すいません、急いでるんで」
ソウタは男にとり合わさず、横を通り抜けようとしたが、その鼻先を掠めるように手が伸ばされた。ソウタの顔の半分はあろうかと言う太い腕。その腕を辿った先には、隆々と浮き上がる筋肉の塊が鎮座していた。
「まぁ、そう言うなよにいちゃん。急いでるんなら、その子だけ置いていってくれりゃいいからよぉ。へへっ」
「お断…」
「おーと、悪い手が滑った」
体を捻りソウタの鼻先にあった腕を彼へと叩きつけた。グニャッと言う効果音を聞きながら、鼻を押し潰されたソウタは床に尻餅をつく。
「ソウタッ⁉︎」
「おおっと、ねぇちゃんは俺と話をしようや」
「離せ!妾に勝手に触れるでないッ‼︎」
鼻からポタポタと血を垂らすソウタを見てララは約束も忘れ怒りを露わにした。その怒りは駆け寄ろうとした彼女の手を掴み、卑しく笑う男へと向けられていた。
ララは盗賊達に追い詰められた時とはまた別種の怒りに心を染めていた。恩人であり、自身が心を許した数少ない存在であるソウタを傷付けられ、己が身を切るより痛く、熱い激情に駆られた。
それはララの全身を駆け巡り、血が沸き立つ。高い魔力を有する魔人だからこそ起こる変化が、公衆に晒されようとしていた。
「けけっ、強気なねぇちゃんだな。悪くねぇ」
「その下品で汚らしい手を離せ‼︎妾は貴様などが触れていい存在ではないッ‼︎」
今にも戦いが始まりそうな空気が二人の間に流れた。それを打ち消す様に、ソウタが間へと割り込む。まるでララを己が背に隠す様に。
「ララ、落ち着いて」
一言、ソウタは振り返る事なく、瞳を紅く光らせるララに告げた。ララはその一言で、ハッと我に返った。
昂った感情の唸りを抑え、魔力の高まりを鎮めた。
一方、そんな心の変化を感じとった筋肉隆々の男は、苛立ちを眼に灯し、ソウタを睥睨する。
彼にとっては、このままララが怒り狂い勝負を挑んできた方が好都合だった。自身はAランク冒険者、幾ら才能があろうと新米の冒険者如きに負けはしない。
そうなれば後は、言う事を聞かせ、自分の手の内に引き込むだけであった。
「よぉ、にいちゃん。鼻から血が出てるぜ。ちょーと当たっただけで、そうなるたぁ貧弱な奴だな」
小馬鹿にする様な笑みで見下す男に、周りの冒険者達も似たような笑みを浮かべ、ソウタを見下した。Cランクという一人前とは言えぬレベルの冒険者に向けられる有り勝ちな視線だ。少し目立った行動を取ると、すぐにこの様な視線が飛んでくる。
ソウタはその何度目かの視線に辟易しつつも、何処か手慣れている様子で男に向かって言い返した。
「自分より弱い相手にしか絡まない小物より何倍もマシだよ」
「ぁんだとぉ?」
「噛ませ犬の法則って知ってる?それによると貴方は僕にけちょんけちょんにされる事になるんだけど?」
適当な法則をでっち上げ、ララから自分に注目を向けさせようと、ソウタは男を煽る。その煽りにまんまと吹かれた男は、片目を釣り上げソウタへと詰め寄った。寄せられた眉が男の内情を顕著に表し、今度はソウタと男の間に一触即発の危険な香りが漂い始める。
その香りは奇しくもソウタにとって都合のいい事態が重なった結果であった。
しかし、その香りは一瞬に霧散する事になる。
「うるせぇ‼︎」
その怒鳴り声をあげたのは、ソウタの目の前にいた男ではなかった。酒の入ったジョッキ片手に、ドンと足を机の上に乗せる男が、顔を酔いで赤くしながら割り込んだのだ。
歳は30を過ぎたあたりだろうか?
太過ぎず細過ぎない、そんな中間的な体型ながらもその男の醸し出す雰囲気は他の冒険者とは一風変わったものであった。並々ならぬ経験と実力が漂わせる強者の香り。それはたった一言で、威圧感を伴う香りとなってギルド内に満たされた。
「酒が不味くなんだよ」
話が進みませんね……
早く異夢世界の方を完結させたいところですが、今のペースだとあと一年は掛かりそう。なので、気長にいく事にします。
そんなわけで、次はまた一か月後。気長にお付き合い下さい。