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夢見少年物語  作者: イノタックス
15章 大好きな人に

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76話 2月のアレコレ

優斗君と付き合い始めた。

そのことに対する、周りの反応は如何に。


──まあ、予想通り、と言ったところ。

周りの人といっても、根原君たちのような、親しい友達にしか言っていない。

だからだろうけど、祝福一色だった。

その反応でまた涙ぐんでしまったのは、今は置いておく。


さて、告白の一件から少し経ち、1月中旬から始まったものがある。

それは──


◆◆◆


──自宅学習期間。

大学受験に向けて、最後の追い込みをする時期。

その中でも今日、2月10日は特別な日。


本命の大学の、受験日前日である。


ひたすら勉強してきたし、特に課題はない──はずなのだけど、それでも不安は残っているもので。

午後11時、夜遅くに申し訳ないかなぁと思いつつも、僕は優斗君に電話をかけていた。


『連宮? どうかしたのか?』

「ごめんね、夜遅くに。明日のことでちょっと」

『明日? ……ああ、受験だったな。不安で寝付けない、とかか?』

「うん、そんなところ」


ああ、落ち着く。

優斗君の声で、不安だった気持ちが消えていく。


「一応、勉強は結構してきたつもりだし、不安なことはないはずなんだけど……」

『不安になっても仕方ないと思うぜ。ここでの結果が、これからの4年間に直接繋がるんだからさ。……まあ、大学受験しない俺が言うのも変なんだけど、あまり気負わない方がいいと思うぜ?』

「うん、そうする」

『ああ。リラックスしていけよ』


──その後、少し会話して電話を終えた。

好きな人の声を聞く──それだけで、リラックスできた気がする。


明日に備えて、もう寝よう。

明日、頑張ろう。


◆◆◆


受験は本命・滑り止め共に、良い手ごたえを感じられるくらいにはできた、と思う。

そんなこんなで、受験のために特にドタバタしていた2月10日~13日が終わり、今日は2月14日。

バレンタインデーである。


「ごめんね、急に押しかけちゃって」

「気にしないで、さ、入って入って。今お兄ちゃん呼んでくるね」

「うん、お願い」


午後3時。小さな紙袋を手に持ち、やってきたのは月夜野家。

チョコを渡そうと思ったのだけど、『渡したいものがあるから僕の家に来て』というのは少し違うと思い、優斗君に『家に行くね』とだけメールして、直接月夜野家に来た。

今日は優斗君たちの親は仕事らしく、出迎えてくれたのは美月さんだった。


「お邪魔します……!」


意を決して、月夜野家にお邪魔する。

以前来た時とは違い、今はその、こ、恋人……に会いに来たわけだから、相当緊張している。

ヤバいもん、心臓がバクバクしてるのが自分でも分かるもん。



リビングで待つこと2分。


「お待たせ、連宮」

「優斗君! ごめんね、急に」

「いや、大丈夫だよ。それで、その……」

「あ、うん! ちょっと渡したいものがあって!」


優斗君、僕が何の用で来たのか分かってる様子。

まあ、2月14日に恋人が来たんだもん、分かるに決まってるよね。


「どうぞ!」

「お、おう、ありがとな」


お互い照れつつ、チョコの受け渡し、無事完了。


「開けてもいいか?」

「ど、どうぞ」


丁寧に包装紙をはがして、小さな箱を空ける。


「おお……」

「あの、簡単なものでごめんね? それが限界で……」


買ってそのままのチョコではなく、溶かしてナッツを混ぜ、型抜きをしたもの。

星形、動物の形、……ハート形。一応、それなりに上手く作れたと思う。


「食べても?」

「もちろん」

「んむっ、……ん、美味い!」

「ホント!?」


よ、よかったぁ……。

味見はしたけど、優斗君のお口に合うかは分からなかったから、ようやく安心できた。


「ありがとな、連宮。マジで嬉しいよ」

「う、うん。えへへ……」


ふふっ、喜んでくれた。頬が緩んで仕方ない。


◆◆◆


10分後、連宮と一緒に、連宮家の方向へ歩く。

家まで送るつもりだったのだが。


「ここで大丈夫だよ」

「そうか? ……分かった。今日は本当にありがとな、連宮」

「ううん、僕も喜んでもらえて嬉しかったよ。それじゃ、またね」

「ああ、またな」


軽快なステップで家へと向かう連宮の背中を少しの間見届け、俺も帰るため振り返る。

──と、そこには。


「顔がにやけてますぜ、お兄ちゃん」

「おわっ!? って、美月か……おどかすなよ」


後ろをついてきてたらしい、美月がいた。


「全く……帰るぞ、美月」

「ふふふ、お兄ちゃん」

「な、なんだよ」


なぜか嬉しそうに笑う美月。一体なんだって──


「幸せ者だね、お兄ちゃん」

「……ああ、そうだな」

「ん、やけに素直だね?」

「今日くらいはな」


そういう日なんだよ。


「ふーん……」

「だから、何だって」


まだ嬉しそうに笑っている。

何が面白くて、そんな表情に?


「よかったね、お兄ちゃん!」

「……っ! ああ、そうだな!」


驚いた。こいつ、俺が幸せそうなのを心の底から喜んでるんだ。


──ああ、そうか。


◆◆


辛そうだった美月のために、躍起になって色々と調べたのも。


引きこもりがちだった美月を、連宮に会わせるため、強引に文化祭へ連れて行ったのも。



『この学校に、転入してみないか?』



あの時の決断も、間違っていなかった。


何一つ、間違っていなかったんだ。


◆◆


「お兄ちゃん、今度はどうしたの?」

「ん?」

「急に穏やかな顔になっちゃって」


……ああ、そうだな。


「連宮には頭が上がらないなぁ、と思ってさ」

「当たり前じゃん! だって連宮君だよ?」

「ふはっ、なんだよその理論」

「えぇー、お兄ちゃんにも分かるでしょ?」

「分かるけどさ、くふ、ふはっ……」


からかいつつ、からかわれつつ、歩く。


まだ肌寒い日が続く。

早く、家に帰ろう。

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