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夢見少年物語  作者: イノタックス
15章 大好きな人に

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75話 大好きな人に

走ってここまで来たのはいいけれど。


『聞いて、くれますか?』


聞いてくれるだろうか。

十日以上も待たせてしまったけど、僕の話、聞いてくれるだろうか。

まだ、待っててくれただろうか。


乱れた息を整えつつ、優斗君の言葉を待つ。


「……ああ」


僕の目を正面から見つめて、優斗君は口を開く。


「聞くよ。聞かせてくれ」


まだ、間に合うみたい。



「えっと、その……告白の返事について、です」

「だ、だろうな」


なんか、ぎこちない。


「返事の前に、優斗君に訊きたいことがあるんだけど」

「え、何を?」


最初に返事をすれば、もっとスムーズに会話できるんだろうけど。

でも、このことを訊いてからじゃないと、返事しちゃダメな気がする。


「僕の……僕のどこを好きになったのか、いつから好きだったのか、知りたいな、って思って」

「どこを、いつから……か」

「あ、言える範囲でいいんだけど……」

「全部言うよ。告白したのは俺だ、ちゃんと全部話す」


えーっと、と少し考えて、ぽつりぽつりと話し出した。


「いつから、ってのは……多分だけど、2年の秋ごろかな」

「2年の秋……」

「体育祭の時にはもう、好きになってた」


ということは、僕がみんなと月夜野家に行った時にはもう、僕のことを好きだったのか。

……そんな素振り、全然なかったから気付かなかった。


「好きになったところは……お前の存在そのものっつーか、なんつーか……」

「存在?」

「ああ。上手く言えねぇけど、お前がいてくれると幸せになれる……っつーか……その……」


言いながら、顔全体が真っ赤になっていく。

どんどん声が小さくなって、顔は下を向いていって、もうほとんど何も聞こえない。


「ゆ、優斗君?」

「……ああもう! 思ったまま言うぞ!」

「は、はい!」


吹っ切れたみたい。


「『どこを』ってのは──具体的には言い表せない。お前の内面に惹かれたのか、外見に惹かれたのか……ってのも、やっぱ分かんねぇ」

「は、はぁ……」

「だけどよ、これだけは言えるぜ」


下がっていた視線を上げて、再び、僕をまっすぐに見つめて。


「俺は、お前の全部が好きだ。お前の全部を、受け入れたい!」

「……!」

「上から目線っぽくて悪いが、これが、俺の今思ってることの全部だ!」

「……」

「え、あれ、連宮?」


──『受け入れたい』。

その言葉で、その想いで、僕は。


「……ひぐっ」

「え゛っ!? わ、悪い! やっぱ上から目線過ぎたよな、『受け入れたい』なんて……すまん! なんて詫びたらいいか──」

「ひぐっ……違う、よ」

「え?」


違うよ、優斗君。

逆なんだ。僕は、その言葉で──


「『受け入れたい』って言ってくれて、すっごく嬉しかったんだ。こんな僕でも、居場所があるんだ──って。僕のことを、そんな風に思ってくれる人がいるんだ──って、嬉しくって」


泣いてしまったんだ。


自分の性別で悩んだ日々も。

いじめられて、辛かった日々も。

それでも諦めきれずに、一生懸命、頑張った日々も。


何もかもが、報われたような気がして。


「本当に、嬉しくて……」


涙が止まらない。

告白の返事をしないといけないのに、上手く喋れそうにない。


「……そっか」


ふわっ、と。


優しく、抱きしめられた。


「ゆうと、くん?」

「頑張ったな」

「……!」

「気が済むまで泣いとけ。返事はその後でいいからさ」

「うぅ……そんなこと言われたらぁ……ひぐっ、ううっ……」


泣き止めそうにない。

今は、優斗君に甘えよう。


◆◆◆


「落ち着いたか?」

「……うん」


恥ずかしいところを見せてしまった。

──よし。


「じゃあ、その……告白の返事、します」

「ああ」


ぎこちなかった空気は、既に消えていた。

言葉が、自然と溢れ出る。


「告白してくれて、すごく嬉しかったです。……僕も、優斗君のことが大好きです。──付き合いましょう」

「……ああ!」


また、抱きしめられた。

今度はふわっとした感じじゃなく、ちょっと強めに。


「ありがとな、連宮」

「ふふっ、こちらこそ。……ね、優斗君。嫌じゃなければ、なんだけど……」

「ん? ……ああ、嫌なわけない」


差し出した唇に、優斗君の唇が重なっ──


『キーンコーンカーンコーン』


「……あ、予鈴が……」

「あ、ああ、そうだな。……えっと……」

「……ふふっ」

「くくっ……」


二人で、笑い合う。

なんて間の抜けた、初々しさ。


「キスはまた今度、な」

「うん。……えへへ」

「じゃあ……教室に戻るか。急ぐぞ、連宮」

「うん!」


生徒用玄関に向かって、二人で走りだす。


「ねえ、優斗君!」

「なんだ?」


走りながら、息は乱れながら、それでも伝わるように、はっきりと。


「僕も、優斗君がいてくれると、幸せだよ!」

「……そっか!」


ああ、優斗君が笑ってくれた。


僕だって、すっごく、すっごーく幸せなんだよ。

この気持ち、少しでも伝わってたら、嬉しいな。


◆◆◆


辺りに人はいないから、もしも、の話になるけれど。


走っている僕らを見たら、どんな関係だと思うのだろう。

友達だろうか。ただの友達ではなく、親友に見えるだろうか。


それとも──好き合う二人に、見えるだろうか。


そんな風に見てもらえるように、自然とそう見えるように。

そこから、そんな努力から始めよう。


ここから、二人で。

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