72話 もうすぐお正月
「高波さんと根原君が付き合いだしたらしいよ」
「マジですか」
大晦日の午前9時半、駅前のファミレスにて。
三上さんから告げられた話は、なんともまあ、衝撃的というか。
「どっちが告白したの?」
「高波さんだって」
「……高波さん、根原君のこと好きだったのね」
そんな素振りはなかった(と思う)し、夏休みに高波さんの家に行った時も『恋愛的な意味で好きってわけじゃない』みたいに言ってたから、まさかあの二人が、というのが正直な感想。
「何が起こるか分からないね、ホント」
「……失礼かもしれないこと、訊いてもいい?」
「ん? いいけど」
前からなんとなーく気になってたこと。
「三上さんって、高波さんのこと、好きだったりはしないの?」
「ああ……考えたこともなかったな」
反応からして、違う模様。
「自分の過去──中学の時の話、美月さんには話したでしょ?」
「うん」
去年の夏休みの合宿で、旅館で聞いた話。
最初は孤立していて、でも高波さんが話しかけてきて、友達になって──。
「経緯が経緯だから、さ。高波さんのことはあの時から『すごい人』だと思って、尊敬してて。性別とか恋愛とかとは程遠い感情なんだ、自分が高波さんに向けてるのは」
「恋愛的に好き、って感じじゃないんだね」
「うん。あの出来事がなかったら、もしかしたら『好き』って思ってたかもしれないけど。でも、あの出来事がなかったら高波さんとこんなに親しくはならなかった。自分で言っててなんだけど……」
難しいね、と。
そう言って笑う三上さんから、後悔とか、そんなマイナスな感情は出ていなかった。
本心からの言葉らしい。
「ごめんね、変なこと訊いちゃって」
「気にしてないよ。……そろそろ、本題に行こうか」
「う、うん」
本題。
今日ここに集まったのは、あることを話すため。
作戦会議、というか。
「明日の初詣、お参りから10分が経過した時点で、自分が──」
◆
「──って感じだよね。自然と動けるようにしないとだね」
「うん。それにしても三上さん……お兄ちゃんの気持ち、気付いてたんだね」
「分かりやすかったからね。根原君あたりも気付いてたんじゃないかな?」
あり得る。
根原君、お兄ちゃんとよく話してたし。
「……初詣も、だけどさ」
「?」
「卒業まで、もうすぐなんだよね」
「そう、だね」
三上さんの言葉で、再確認。
あと3か月だな、短いな、くらいに思ってたけど、卒業式は3月1日。実際にはあと2か月しかない。
私は去年転校してきたから、まだ2年間経ってない。それでも寂しく感じるのだから、三上さんたちはもっと何か──大きな感情があるのだろう。
「ま、その前に試験とか受験とか色々あるから、まだ感傷に浸ったりはできないんだけどさ」
「あはは、それもそうね。目先のことからクリアしないとね。……あ、もうこんな時間」
「ああ、ホントだ。じゃ、そろそろ出よっか」
店内の壁時計は午前11時を指していた。
大晦日という時期柄、店内に人はあまりいないけど、あまり長居するのも申し訳ないし、そろそろ出よう。
◆
よいお年を、と簡単に挨拶を交わし、曲がり角で別れ、それぞれの家へと向かう。
早く帰らねば。大掃除は既に終わらせたけど、それでもなぜか忙しいのが大晦日。
「……はぁー」
歩きながら、大きく息を吐く。
白く染まったソレを頬で受けながら、マフラーを巻き直し、歩く速度を速めた。
12月は終わり、いよいよ新年へ。
まだまだ大変なことは残ってるけど、まずは明日、元旦を楽しもう。
楽しく感じている今を楽しみつつ、家へと向かった。




