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夢見少年物語  作者: イノタックス
14章 それぞれの、秋と冬の

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70話 秘めた想いに気付いたら

文化祭に来てくれた先輩たち、との会話もそこそこに、僕は文化祭を回ることとなった。

──なぜか、優斗君と二人で。


「今年もいろんな出し物が出し物があるねー」

「だな、なんか気になるの、あるか?」

「うーん、どうだろ」


美月さんと真菜は、二人で文化祭を回っている。

三上さんは、部長として先輩たちに現状の報告を行っている。

──ということで、余った二人で回ることにしたのだ。


「おー、お化け屋敷あるじゃねぇか、入る……か……」

「……むぅ」


じー、っと優斗君を睨む。


「……ごめんって」

「ふんっ」


僕がお化け屋敷苦手なの、2年前の文化祭で知ってるくせに。

もう知らない、と言わんばかりに歩くスピードを早める。

──が、追い付かれてしまう。さすが元サッカー部。


「ご、ごめんって……悪かったよ……」

「あ、いや、えっと」


すっごく申し訳なさそうに言ってきた。

さっきのは本気で怒ってるわけじゃなくて、怒ってるふり。

一応、ちゃんとフォローしておこう。


「冗談だよ、怒ってるふり、だよ。……でも、お化け屋敷は行かないよ?」

「あ、ああ、そうだったのか……そうだな、別のところに行くか」


ん、分かってくれたみたい。


「お、鉄道研究同好会の……入ってもいいか?」


今年もあった、鉄道研究同好会の出し物。

わざわざ訊かなくてもいいのにな、と思いつつ、返事はちゃんとしておく。


「もちろん。僕も行くよ」

「そっか」

「うん!」


楽しみなのか、少しだけ早足の優斗君の後についていく。


◆◆◆


「今年も面白かったな、いい角度の写真ばっかだったぜ」

「模型もたくさんあって、面白かった!」

「そうだな。じゃあ次は……」


会話の途中途中に、軽い違和感。

優斗君に、ではない。僕に違和感。今日の僕、何か変。


「どうかしたか?」

「え、ううん、なんでもないよ。……そうだ、体育館で軽音楽部のライブやるみたいだから、見てみない?」

「おお、いいなぁ。行ってみるか」


体育館の方へ歩き出す。



今日だけじゃない、最近の──夏が終わったあたりから、何か変だ。

何かが心につっかえてるような、苦しさ、みたいな感覚。

つらい──まではいかないけど、不安がずっとまとわりついてくる。


「ライブ、高波は出るのか?」


何か変、なんてぼかしてみたけど、原因は分かってる。

夏祭りの、花火を見た帰りに思ったこと。


『好き合う2人に見えたら、それはとても、』


──嬉しいことだな、と。

思ったのはいいのだけど、その言葉の真意が、自分でも分かりかねていた。


「ううん、出ないみたい。もう引退してるから」

「そっか。まあ、そんな時期だもんな」


素敵なことだ、というのなら分かる。静まり返って、清らかささえ感じる程の空間だったから。

でも、『嬉しい』というのは……ダメだ、やっぱりわからない。


こんな感情、生まれて初めてなのだ。

この気持ちの名前は、一体?



体育館では、すでにライブが始まっていた。

ガールズバンドが演奏していたのは、人気ロックバンドの曲。

今年ヒットした曲だからか、かなり盛り上がっていた。


「かっこいいね」

「だな」


大サビだったみたいで、1分ほどでその曲は終わった。

次に流れたのは、一昔前に流行ったラブソング。

『あなたとずっと一緒にいたい』『二人で手を取り合って』──ありふれた歌詞。だからこそ、流行ったのだろうけど。

そうやって歌詞をなぞりながら聴いていると、あるフレーズで、気付いた。


『あなたが好きなんだ』


──ありふれた、ありふれ過ぎた言葉。

でも、その言葉で、僕の中の何かは『弾けた』。


◆◆



ありふれ過ぎてて、でも僕にはわからなかった。

──けど、ようやくわかった。


『好き合う2人に見えたら、それはとても、』


きっと、……ううん、予感じゃなくて、確信。


『嬉しいことだな、と。』


僕はあの日から、この人のことが──



◆◆◆


「今年も大盛況でよかったよ。みんな、お疲れさま。──三上さん、頑張ったね」


前部長からの激励の言葉に、三上さんの目が少し潤んだ。

いつも平気そうだったけど、この1年間、相当大変だったのだろう。


駅前のファミレスでの打ち上げ。

少し広めのテーブルを、先輩3人、後輩の僕たち5人で囲んでいる。

最初は来るのを渋っていた優斗君にも来てもらった。部のメンバーじゃないのに手伝ってもらって、お礼をせずに帰すわけにはいかない──という三上さんの言葉で折れて、来てくれたのだ。


「あのバンドの新譜、よかったよな!」

「ですよね五十嵐さん! あのイントロ、最高っすよね!」


──と盛り上がっているのは、五十嵐先輩と優斗君。今日初めて会ったはずなのだけど、ずっと前から知ってる人同士みたい。

二人ともギターやってるし、よく聴く音楽のジャンルも被ってるみたいだから、いつの間にか仲良くなっていた。


「楽しそうね、五十嵐先輩」

「ですね」

「……ふーん、なるほどね」

「?」


何かに気付いたように、ふふっ、と笑う橋崎先輩。

楽しそうに話す優斗君を見ていただけ、なのだけど……どうかしたのかな。


「連宮君」

「は、はい」


顔を近づけて、小声で訊いてきた。

い、一体何を……



「君、好きな人ができたのね」



──それはとても、嬉しそうな表情で。

なんで分かったのか、とか、なんでそこまで嬉しそうなのか、みたいなのも思ったけど。



「はい、……はい、できました」



今はその言葉だけ、返すことにした。

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