69話 2日目の再会
「はい、文芸誌です。ありがとうございましたー!」
午前11時。ひたすら、文芸誌を配布する。
2日目も変わらず。
「連宮ー、文芸誌、ここに置いとくぞ」
「ありがと、優斗君!」
昨日ほど忙しくはないけど、それでも部室に来るお客さんの足は途絶えない。
間違いなく、呼び込みに行っている三上さんと美月さん、そして真菜……の3人のおかげだよね。
昨日の文化祭終わりのミーティングで、色々作戦を練った甲斐があった。
◆◆
文化祭1日目終了後、部室にて。
「うーん、チラシを今から作るのは難しいし、何よりお客さんの荷物になるから、これは無理そうだね。あとは……」
明日──文化祭2日目のために行った作戦会議。
でも、どうもうまく進まない。
テーマは『今日と同じくらい、お客さんを呼び込むには』。
文学部の文芸誌を求めてきてくれる人は、ほぼ間違いなく、1日目に来るだろう。早く手に入れたいはずだし。
だから2日目は、確実に客足が遠のく。……という三上さんの予想は、このままいけば間違いなく、当たる。
だから始めた作戦会議なのだけど、あまり納得のいく案が出ない。
「あとは、えっと……なんだろう、もう出尽くした気が」
三上さんも美月さんも、優斗君までもが案を出してくれた。
もちろん、僕もいくつか案を出した。さっきの『チラシを配る』ってのもその一つ。
でも、三上さんの言う通り、問題があった。……む、難しい。
「あ、あの」
「真菜?」
おずおずと、真菜がその口を開く。
「真菜ちゃん、何か案、思いついた?」
「はい、一応……」
「どんなことでもいいから、言ってみてくれると嬉しいよ」
「……! は、はい! えっとですね」
そういえば、まだ発言していなかった。発言『は』していなかった。
ずっと何かを考えているようだったけど、一体何を?
『皆さんが気にならないなら、の話ですが』と前置きをして、真菜が提案する。
「文学部が『部』ではなくなるということを、あえてアピールしてみる……というのはどうでしょうか」
◆
「それを、アピールするの?」
「はい、美月先輩」
提案は、続く。
「文学部が『部』ではなくなる。──つまり、次回の文化祭からは『文学部』の出し物はなくなる、ということを伝えてみるんです」
「……なるほど」
三上さん、納得がいった様子。
「今回の文芸誌に、貴重性、みたいなものをつけてみるってことだね?」
「はい! 興味がなかった人も、そこに惹かれて文学部の出し物に来てくれるのでは、と思ったんです。ただ、人によっては『同情』で来てくれる人もいるでしょうから、そこの問題が……」
「うん、自分は真菜ちゃんの意見、すごくいいと思うよ」
「ほ、ほんとですか!?」
真菜、三上さん──というか『部長』に褒められて、すごく嬉しそう。
「同情で来てくれる人も、文芸誌を受け取ってくれるなら、大事なお客さんだ。そういう人も夢中にさせちゃえるような文芸誌を作ったでしょ? 自分たちは、さ」
「は、はい!」
「うん、その意見を採用しよう。明日までに呼び込みの言葉を考えておくよ。……みんな、明日も一日、頑張ろうね!」
「はい!」
真菜に続き、僕たちも元気に返す。
◆◆
午後1時半、部室にて。
三上さんたちの呼び込みのおかげで、午後1時には文芸誌を予定していた冊数分、配り終えることができた。
2日目の終了時刻は午後3時。それまでまだ時間があるけど、『文芸誌の配布は終了しました』という立て札を部室の外の廊下に置いて、残りの時間はゆっくりすることに。
「休んじゃってて平気なのかな」
「大丈夫だよ、連宮君。運営委員会には報告してきたから」
「ああ、それなら大丈夫だね」
『予定していた冊数配り終えたため、早めに切り上げたい』と運営委員会に言ったところ、承諾してくれたらしい。目標に達していることを評価もしてくれたんだとか。
というか、いつの間に報告を? ……ああ、お昼を買いに行ったとき、三上さんの姿がなかったなーそういえば。
何も言わずに済ませるなんて、さすが文学部部長、頼りになる。
「ごちそうさまでした。さて、片づけを始めようか。今からやったら早すぎるかもだけど……ん?」
廊下からの物音に、三上さんが反応。
物音というか、話し声。……あれ、この声って!
◆
『うーむ、連絡なしで来たのは失敗だったかしら』
『驚かせようと思ってたんですけどね。まさかもう、配布終了してたとは』
『でもまあ、校内にはいるんじゃねえか? 多分だけどよ。連絡してみようぜ』
う、うわー! 来てくれたんだ!
……って、喜んでる場合じゃない。早くドアを開けねば。
僕が椅子から立ち上がるのと同時、三上さんも立ち上がって、僕と一緒に廊下へ続くドアの元へ。
美月さんは……誰が来たのか、真菜に説明してる。
ドアのカギを開け、ガラガラっと勢いよく開けると。
「ありゃ?」
「お、開いた」
「おぉ、ひさしぶりだな!」
廊下に立っていたのは、懐かしの人たち。
「「おひさしぶりです、橋崎先輩、安喰先輩、五十嵐さん!」」
「ええ、ひさしぶりね、連宮君、三上さん」
「しばらくぶりだね、元気そうで何よりだよ」
「君たちの顔が見たくなってね、俺も来ちゃったぜ!」
昔と変わらない笑顔の、すっごく素敵な先輩たちが、そこにいた。




