53話 就任
翌日、月曜日。
授業を終え、いつも通りに三上さんと南校舎へ向かい、途中で月夜野さん──じゃなかった、美月さんと合流。
文学部部室のある南校舎1階の一番奥に到着し、ドアをスライドさせ──ようとしたのだけど、開かなかった。
鍵がかかっているみたい。部長、まだ来てないのかな。
「おーい、みんなー」
「あ、部長!」
南校舎入り口から、部長の声。
たたっと廊下を駆けて、部室前へ到着する。
「ごめんね、職員室に行ってて遅れちゃったよ。だいぶ待ってたかな?」
「いえ、ちょうど着いたところです。じゃあ部長、鍵を──」
「あ、そのことなんだけど……今日の予定、変更でもいい?」
「へ?」
予定を変更──今日特別何かをする予定はなかったし、大丈夫だけど、一体何をするんだろう。
「顧問──教頭先生の許可は取ってきたから、今日は駅前のファミレスに行こうと思ってね。みんなの賛同が得られれば、だけど」
「自分は大丈夫ですよ。2人は?」
小説はある程度書けているし、遅くなっても特に用事はないし。
「僕も大丈夫です」
「私も大丈夫ですー!」
「決まりだね。それじゃ行こうか。今日はもう学校には戻らないから、忘れ物ないようにね」
目的地以外の情報を与えられないまま、僕らは生徒用玄関へ向かった。
◆◆◆
駅前のファミレスへ到着し、部長がポテトフライと人数分のドリンクバーを注文。
それぞれ好きな飲み物をコップに入れ、テーブルに持ってくる。
ポテトフライを持ってきた店員さんが席を離れた段階で、部長が僕らに話し始める。
「本題へ入る前に、訊いておこうか。なぜここへ来たのか、分かるかい?」
少し楽し気に、勿体ぶる部長。
なぜここへ──駅前のファミレスへ来たのか。
「はい、多分ですけど」
10月、体育祭終わり、文化祭終わりと同時期。
つまり──
「新しい部長を決めるため、ですよね」
「ああ、その通りだ。今日この場で、新しい部長を決めたい」
1年前のこの時期に、この場所で、安喰先輩は部長になったんだ。
『懐かしいな』と呟いているし、三上さんも憶えていたみたい。
「それじゃ、これも訊いておこう。部長になりたい人はいるかい?」
「────」
うーん……なりたくないわけじゃないけど、僕よりも適任な人がいるからなぁ。
考え込んでしまった僕らを見て、部長は再び話し始める。
「ま、そういう反応をすると思ったよ。みんな『我先に』ってタイプじゃないもんね」
「すみません……」
「謝ることはないよ、連宮君。分かってて訊いたことだからね。じゃ、こう訊こうか」
更に楽し気に、部長は僕らに問いかける。
「新たな部長に推薦したい人はいるかい?」
僕らの考えを見通しているような質問。
「僕は三上さんがいいと思います」
「自分は連宮君が適任かと」
「三上さんを推薦したいです!」
3人で同時に、他の人を推薦する。
「って、え、自分?」
僕からの推薦は予想していたみたいだけど、美月さんからの推薦は意外だったらしく、かなり驚いている。
でも、三上さんこそが適任だと思うのだ。
「なんで自分を推薦したの?」
「一番頑張っていたから、かな。部活以外の時間にも『小説の書き方』みたいな本を読んでたし」
「僕もそう思うよ。三上さん、いい小説が書けるようになりたい、って誰よりも多く書いてたもん」
僕らもそれなりの量を書いたけど、三上さんが書いた量にはとても及ばない。
それくらい、頑張っていたのだ。
「ま、多数決で決めることじゃないけどね」
そう断りを入れて、部長は、
「俺も、三上さんに部長になってもらいたい」
三上さんを推薦した。
「……自分に務まるでしょうか」
これまた意外だったようで、驚きつつ、不安を呟く三上さん。
そんな三上さんに、微笑みながら優しく、部長は話しかける。
「連宮君と月夜野さんの言葉通りなんだけどさ、三上さんは誰よりも多く、より読みやすい小説を書こうと努力していたからね。その頑張りを見逃すなんて、できないよ」
「──」
その言葉で、何かが吹っ切れたのか。
三上さんは部長の目を見て、まっすぐな声で答えた。
「分かりました。──部長の座、しっかり務めさせていただきます」
「うん、よろしく頼むよ」
「はい!」
──というわけで。
新たな部長には、三上さんが就任することとなった。
僕も『三上部長』のサポート、頑張ろう!




