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夢見少年物語  作者: イノタックス
8章 高校2年、始まり

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42話 秘密の共有

「半陰陽──」


全く想像していなかった言葉が、月夜野さんの口から発せられた。

半陰陽、それって確か──


「男性と女性、それぞれの身体の特徴を持っている人、ですよね」

「基本的にはそんな感じです。……よくご存知ですね」


自分の性別でずっと悩んでいた時に、ネットでその単語を見つけたのだ。

浅い知識しかないから、詳しくは知らないけど。


「私の場合は、この世に生まれた時がその状態でした」


生まれた時──ってことは、今は違うのかな。


「生後すぐに整形手術を受けたので、私の外見は『女』で間違いありません。ですが──」


『外見は』と月夜野さんは言った。

つまり、内面は──


「内面が、かなり揺れ動く方なんです。感情とかの話ではないですよ?」

「心の性別、ですか」

「はい。女だったり男だったり、中間だったり。……そこが厄介なんです」


心の性別──僕の場合は『女』だけど、それが揺れ動くなんて、相当苦労してきたはず。


「性格もかなり変わるみたいで、自分で言うのもなんですが、小さい頃は結構苦労してました。そういうことを隠そうとした結果、自然と友達が離れていきましたね。だから、兄には感謝しています」

「月夜野君に?」

「ええ。兄が言ってくれたんです、『この学校に入らないか』って」


月夜野君、妹さんのことをよく考えているんだなぁ。


「前の学校では孤立していましたから、兄の言葉には助けられました。──こうして連宮さんとも会えましたし」

「僕なんかでよければ、いつでも話しかけてきてください。文学部も気に入ったら、ぜひ入ってくれると嬉しいです! 部員は3人しかいないので、結構静かなほうですけど」

「では、見学させてもらいます! ……ごめんなさい、作業中にこんなにお喋りしてしまって」


申し訳なさそうに頭を下げる月夜野さん。

人と話し慣れていないのか、少し不器用な雰囲気。


「気にしないでください。自分の内面について話せて、すごく楽しかったですから。それに──月夜野さん、元気になってくれましたし!」

「あ……はい!」


月夜野さんの目は、キラキラと輝いていた。

秘密を共有できる人と出会えて、嬉しかったのだろう。

僕にとっての三上さんたちみたいになれたのなら、よかった。


「じゃあ、執筆に戻りますね。──あ、帰ってきた」

「え?」


ドアが開き、三上さんが部室に入ってきた。


「ごめん、遅くなった。教室前の廊下で高波さんと遭遇して、色々話してて……」


遭遇って。

今日は高波さん、三上さんと会えていなかったから、会えて嬉しくなったのかも。

ハイテンションな高波さんの姿が思い浮かんだ。


「あれ、えっと……」

「は、初めまして! 月夜野美月といいます、文学部の見学に来ました!」

「ああ、そうでしたか。自分は三上愛香といいます。……あれ、でも入学式は明日だから、まだ1年はいないし……2年生ですか?」

「はい、転入してきました!」

「なるほど」


また月夜野さん、すごく緊張して言葉を選んでいる。

ここは──少し手を貸そうかな。


「月夜野さん、三上さんも僕と同じですから、そこまで緊張しなくて大丈夫ですよ」

「つ、連宮君? ……もしかして月夜野さんも、何か内面に──」


気付いてくれたみたいで、三上さんが質問してくれた。


「は、はい。実は──」



「なるほど、半陰陽で、手術を受けているから身体は固定されているけど、中身は揺れ動いている、と。あまり勝手なことは言えませんけど──苦労されているんですね」

「いえ、そんな……否定はしませんけど」


月夜野さんの表情、すっごく明るくなっている。


「月夜野さん、嬉しそうですね」

「もちろんですよ、連宮さん! 今日だけで2人と、秘密を話せたんですから!」

「喜んでもらえたならよかったです。ああ、連宮君と同じ──って説明されましたけど、自分の場合は連宮君とは逆で、心が男なんです。すみません、話してなかったですね」


三上さんも、秘密を話せて嬉しそう。


「あ、今日はいないですけど、文学部の部長は僕らの内面を知らないので、入ることになったら注意してくださいね」

「まさか、差別的なことを言ったり──」

「いえいえ! そういうことではないんですけど、なんか言いづらくて。──いつか言おうとは思っているんですけどね」

「そうなんですね……分かりました!」


伝えなくてもいいことだけど、伝えておきたいこと。

部長に伝えられる日は来るのだろうか。


あ、それと──言っておかなければいけないことがあった。


「同級生なんですから、タメ口で話しましょう?」

「い、いいんでしょうか」

「当たり前です、僕たちはもう『友達』でしょ?」

「──っ! は──う、うん!」


すっごく喜んでくれた。

僕も根原君とタメ口で話せて嬉しかったし、僕以上の年月内面を隠してきた月夜野さんは、もっと嬉しいのかも。


「自分ともタメ口でお願いしますね。……これからよろしくね、月夜野さん!」

「うん! よろしく、三上さん!」


──何とか、本当の月夜野さんを引き出せたかな。

根原君、きっとこれを狙って月夜野さんをここに連れてきたのだろう。

後で根原君にも、報告しておかなければ。


「じゃあ、執筆に入るね。自由に見学していってね──ん?」


部室の外──部室前の廊下で、物音がした。

部長は帰ったし、一体誰が──

そう思い、ドアを開けると、そこには。


「うわっ!? ──よ、よぉ連宮」

「月夜野君?」


ドアが突然開いて驚いている、月夜野君がいた。

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