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夢見少年物語  作者: イノタックス
8章 高校2年、始まり

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41話 月夜野美月

午後0時30分、文学部部室。

持ってきたお弁当を食べ終え、原稿用紙に小説を書いていると、部室のドアが3回ノックされた。

『はーい』と返事をして立ち上がると、そこには今朝ぶりに会う、人物の姿。


「根原君?」

「今朝ぶりだね、連宮君。……君だけかい?」


部室に僕しかいないのを不思議に思ったらしく、そう訊いてきた。


「うん、部長は用事があって帰ったし、三上さんは忘れ物があったみたいで、教室に戻ってるよ。──そっちの人は?」


根原君の後ろに、女子生徒が立っていた。

──月夜野君と一緒に歩いてた人だ。文学部に何の用事だろう?


「ああ、この人は──いや、ここからは俺の出番じゃないね。連宮君、少し耳を貸してくれるかい?」

「え、うん……」


僕の近くまで歩いてきて、耳元で小声で根原君は話す。


『この人も、『守っている嘘』を吐いているから、君に会わせたかったんだ』

『なるほどね。うん、僕に任せて』


僕の返答に満足したようで、根原君は『じゃ、俺はこれで』と言って、部室を出ていった。

残された女子生徒は不安そうにしていたけど、それは数秒だけ。すぐに笑顔になり、自己紹介を始めた。


「私、今日からこの学校に転入してきた、月夜野美月といいます! 可能でしたら、文学部を見学していきたいのですが……大丈夫でしょうか?」

「ええ、大丈夫ですよ。転入生だったんですね。──え、『月夜野』?」


聞いたことのある苗字、もしかして。


「兄をご存じなんですね。私、月夜野優斗の双子の妹です」

「あ、そうだったんですね……」


一気に胸のつかえが取れた感覚。なんで不安だったのかは未だに分からないけど。

──ここで、根原君の言葉が本当だったのだと気付く。


この人の目、全く笑っていない。

この状況が楽しくないとか、そういうことじゃなくて──自分のことを隠すために、奥底にある感情を押し殺している感じ。

なんて悲しい。なんて寂しい。根原君がこの人を連れてきた理由が、ちゃんと分かった気がする。


「辛く、ないですか?」

「え、何がですか?」


隠し続けている。──こうなったら一か八か、僕のことを話してみよう。

あまりペラペラ話すことでもないけど、今回は特例だろう。


「月夜野さん、何か──隠していませんか?」

「え、な、何を言って」

「言いたくないことでしたら、言わなくて大丈夫です。でも──あまりにも辛そうに見えたので」

「……兄の言う通りの人、ですね」


月夜野君になんて言われたんだろ、僕。


「兄に教えてもらったんです、この文学部に、面白い人がいるって」

「なんて言われたのか、すごく気になりますね」

「褒めてましたよ、あなたのこと。食べ方が綺麗とか、仕草一つ一つがどの女子よりも可愛いとか」


──まさか月夜野君、僕の内面に気付いてる?

そ、それも今は置いておこう。考え出したらキリがないし。



「それで──私を理解してくれるかもしれない、って」



やっぱり僕と同じで、『守っている嘘』を吐いていたんだ。根原君の洞察力、相変わらず凄いなぁ。

月夜野さん、さすがにそこからは言い渋っているみたいだから、僕から話そう。


「僕は2年3組の、連宮奏太です。──小さいころから、女の子になりたいと思って生きてきました」

「──っ! ほ、本当ですか!?」

「本当ですよ。自分の部屋の奥に、スカートとかワンピースみたいな、可愛い服を隠してたりします。軽蔑しましたか?」

「するわけないです! 男とか女とか、全く関係ないです。自然なことだと思います」


少し不器用に、肯定してくれた。

受け入れてもらえると、やっぱり嬉しい。


「私も性別のことで悩んだりしてますから、連宮さんの気持ち、分かります。……私は──」


両手をぎゅっと握り、月夜野さんが話す。

両目は必死さをまとい、輝いている。


「──半陰陽なんです」

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