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夢見少年物語  作者: イノタックス
6章 冬休みと3学期

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34話 冬休みが終わったら

あっという間に冬休みが終わり、1月も下旬へと差し掛かる。

師走はとっくに過ぎたというのに、先生たちは忙しそう。


「連宮君、どうかしたの?」

「え? どうもしないけど……」


クラスで一番早く来ちゃったから、窓の近くに立って校庭を眺めていたら、教室に入ってきた根原君に質問された。

特に変わったこともないし、どうもしないのだけど。


「最近、結構早く学校に来てるみたいだから、何かあったのかなって」

「ああ、そういうことね」


よく見てるなぁ、根原君。

そういうことなら、心当たりがある。


「落ち着かないんだ」

「……?」


頭の上にはてなマークを浮かべる根原君。

こればっかりは『僕の気持ち』だから、分からなくて当然だけど。


「卒業式、もうそろそろだからさ」

「そろそろ、って……まだ1か月もあるよ?」


不思議そうに僕を見る根原君から窓の外の校庭へと視線を移し、ため息とともに呟く。


「『もう』1か月、なんだよ」


もう、1か月しかないのだ。

──橋崎先輩が卒業する日まで、もう1か月しかないのだ。


「だから落ち着かなくて、早く来ちゃうのかも」

「繋がらないような……」

「ふふっ、おかしいのは僕も分かってるよ」


それでも。

僕は卒業式が始まるまでは、早く来ちゃうだろう。


「『橋崎先輩が通っている学校』に、長くいたいからね」

「……ま、連宮君の負担になってなければいいんだけどさ」


頬を掻いてそう言い、根原君は席に着いた。

心配してくれてるのだから、すごくありがたい。


5分後、窓の外を歩いてくる橋崎先輩を見つけ、少し嬉しくなりながら、僕も席に着いた。


◆◆◆


2月の中旬、卒業式の練習が始まった。

他の学校では1年生が参加しないこともあるらしいけど、僕らの学校では1年生も卒業式に参加する。

在校生として、橋崎先輩たちをしっかりお見送りするんだ。


「連宮、泣いてるのか?」

「頑張って堪えてるよ!」


練習なのに、3年生が入ってくるところで泣きそうになっちゃった。

月夜野君に呆れられたけど、実際泣いてないもん。……少し危なかったけど。


「あと少しで、3年はこの学校からいなくなるんだなぁ」

「月夜野君……それ以上言うとどうなるか、分かってる?」


意地悪な笑顔で言ってきたから、睨み返してみる。


「泣くよ?」

「何かされるのかとビビったじゃねぇか……悪かったよ。大事な先輩でもいるのか?」

「──ひぐっ」

「え!? 今のはセーフだろ!?」


さっきよりも強く涙腺に来る言葉を優しくかけられ、ついに涙腺は決壊した。

周りの人にはバレてないみたいだから、汗を拭くふりをして、ハンカチで涙を隠す。


「……じゅーす」

「え?」

「じゅーす」

「……分かったよ、おごるよ」


やりぃ。

無自覚でも、意地悪言う方がいけないんだもんね。


◆◆◆


放課後、文学部部室で三上さんと小説を書いていると、廊下へと続くドアが勢いよく開かれた。


「え? ……橋崎先輩!」

「久しぶりね、連宮君。三上さんも、久しぶり」

「お久しぶりです、橋崎先輩」


橋崎先輩、部室を見渡して、ほっ、と息を吐いた。

もしかして……


「部長に用事があったんですか?」

「逆よ、逆。安喰君はいない方が好都合だわ」


いない方が……って、喧嘩でもしてるのかな。


「今日は連宮君と三上さんに用があったのよ。……手伝ってほしいことがあるの。卒業式の前の日って空いてる?」

「卒業式の前の日、ですか」


その日はほとんどの部活が休みになる日。文学部も例外ではない。


「部活はないですし、空いてますよ」

「自分も空いてます。でも一体何を?」

「ふっふっふ、それはね──」


ドアの近くに集まった僕と三上さんに、橋崎先輩は『作戦』を伝えてきた。

──すっごくワクワクして、ドキドキする作戦。

その内容は──


「あたしの想いを安喰君に伝えちゃおう! ……って作戦よ」


卒業式まで、あと2週間。

まだ、しんみりするには早かったようだ。

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